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元婚約者side
しおりを挟むなんだ?
何が起こったんだ?
裁判が終わるといつの間にか変な施設に連れて来られた。病院のような場所だった。壁も何もかもが真っ白だ。窓はあるが人が通れるほどの大きさではないし……何故か鉄格子だ。
訳も分からないまま医者や看護師らしき人達から手渡される薬を飲まされた。その瞬間に激痛が襲ってきた。
目が覚めたらベッドの上だ。
「凄いよ、君! アレを飲んで生還するなんて!」
白衣の医者は喜んでいた。
耳元であれこれ喋っていたがよく分からない。分かった事は、ここが病院ではなく研究施設である事と飲まされた薬がヤバい新薬だと言う事だった。
「生還率が5%もないっていうのに……奇跡だよ!」
その日から毎日のように血液を抜かれた。
体が起き上がれるようになると再び薬を飲まされた。前とは別の薬だと言う。吐き気が一気にきた。胃の中の物を全部出しても吐き気が止まらない。
苦しい……。
辛い。
何で?
どうしてこうなったんだ?
父も母も、僕が悪いって言う。
兄達もだ!
生意気な弟なんかは「兄さんのせいで僕達まで飛んだとばっちりだよ」と蔑んだ目で言ってきた。
なんでだよ?
僕が何したって言うんだ?
公爵家を乗っ取ろうとしたなんてデマだ!
なのに誰も信じてくれない。
裁判所で無実を訴えようとしたのに何故か体が動かなくて声も出なかった。後で分かった事だけど一番上の兄が僕に薬を盛っていた。
どうしてだよ?
兄は僕の味方じゃなかった。
僕は弟だぞ?
兄なら弟を守る存在だ!
なのに何でその逆をするんだよ!
これは裏切りだ!
スタンリー公爵家だって酷い!
今までずっと一緒だったのに!
「将来は家族だから」って笑っていたじゃないか!
公爵夫妻だって「子供がもう一人増えたようだ」って言ってくれていたじゃないか!
両親も兄弟も忙しくて僕の誕生日を忘れているって言ったら「それはいけない」って! 「生まれたきたことを祝うのは当然の事だよ」って! 僕の誕生日パーティーを開いてくれて、誕生日プレゼントをいっぱいくれたじゃないか!
「おおっ! 凄い! 凄いぞ!」
気付いたら数人の白衣の男が僕の周りに集まって来ていた。
「奇跡だ!」
「これだけ投与しても死なないなんて!」
「運が良いなんてものじゃないぞ!」
「このNo.666は最高だ!」
「これは長持ちするぞ!」
ふ、ふざけるな!
ブチブチッ!
「おい! No.666が動いたぞ!」
「バカな!」
「鎮静剤を打て! 急げ!」
僕がこんな目にあっているのは全部あいつ等のせいだ。
あいつ等が僕をこんな目にあわせたんだ。
ドカッ!!
「ぐはっ!!!」
白衣の男を殴ったら吹っ飛んだ。
ちょっとムカついたから殴っただけなのに。
「こ……これは」
「肉体が強化している……だと?」
「そんな薬をNo.666に投与していないぞ!?」
「だが現に常人では有り得ない怪力だ!」
「まさか薬の副作用か!?」
男達の話では僕は「特別な力」を得たようだ。
この力なら。
「く、来るな!」
「「「「ぎゃあ!!!」」」」
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