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王都奇襲
しおりを挟む朝、目が覚めると何やら屋敷が随分騒がしかった。
「これは一体何の騒ぎなの?」
「お嬢様! 大変でございます!」
「どうしたというの?」
「そ、それが……王都が何者かに奇襲されているんです!」
「何ですって!?」
王都を攻めるなど一体誰が?
ここ百年ほどは平和が続いているというのに。
我が国を攻める理由は他国にもないはず……。
「なんでも恐ろしい化け物が暴れまわっていると専らの噂です」
ドォォォォン!
遠くから爆発した音が聞こえてきた。
窓から外を見ると市街地から煙が立っているのが見えた。
ドオオオォォォォン!
爆発音が近づいているのはきっと気のせいではない。
屋敷中の者が外を警戒している。
護衛もありったけの武器を手にしている。
ここまでくれば、噂が本当だと思うしかない。
そして未曾有の危機だということも。
「ヘスティア! 今すぐ王都を脱出するぞ!」
「お父様……」
「王都は落ちる! 既に馬車の用意は出来ている! 急げ!」
これほどまでに焦った顔のお父様は初めて見ました。状況は私が思っている以上に悪いのかも……。
馬車には既にお母様が乗っていました。
「王都で暴れているのはヴィランだ」
「……はっ?」
「ヴィランは研究施設に居た者達を殺して施設を破壊した。その後、王都で殺戮を繰り返している」
「な、なん……ですって?」
「情報では薬の副作用が原因でヴィランは強靭な肉体を手にしたらしい」
なるほど。
だからですか。
だから、これほど質素な馬車でありながら厳重に警備されながら移動しているという訳ですか。
「ヴィランの目的は私でしょうか?」
「ヘスティアというよりも私達、スタンリー公爵家といった方が正しい。それとも、自分を味方しなかった王都の者達といった処か。どちらにせよ、厄介な事になった」
「はい……」
ドオオオォォォォン!!
「死ね! ヘスティア!」
狂気に満ちたヴィランの声と共に全てがブラックアウトしたのです。
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