【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子

文字の大きさ
15 / 70

家族のような何か 

しおりを挟む
 
 恐らく、ヴィランは「スタンリー公爵家自分の家族」と思っていたんでしょうね。
 本人に確かめた事はないけれど、きっと間違いないでしょう。

 本当の家族以上に近い存在ではあったから……あながちヴィランの「思い違い」という訳でもなかったのです。何しろ、結婚すれば本物の家族になるのですから。それまでは飽く迄も「ヴィランは」でしかありませんでした。結婚して本当の家族になるまでは「疑似家族」に過ぎません。

 教育に関してもです。

 ヴィランに最低限の教育しか施さなかったのは何もヤルコポル伯爵家の体面を気遣っての事ではありません。本人の気質の問題でした。スタンリー公爵家としても婿になるヴィランには、私のをして欲しいという狙いがありました。
 最初の頃はヴィランも素直に机に向かっていたのです。
 ただ、どう教えても頭に入らない様子でした。

「ヤル気が欠けているせいです」

 担当していた教育係の言葉は正しかった。
 勉強よりも遊びを優先させるヴィランに失望を覚えるのに時間は掛かりませんでした。これには両親も首を捻るしかありません。
 両親もお兄様達も優秀な方々なのです。何故、三男のヴィランだけが出来が悪いのか……と。

 ですが、物は考えよう。優秀過ぎる婿よりも「スタンリー公爵家の運営の邪魔をしない婿」の方が全体的にメリットがあると判断したのです。

 とどのつまり、ヴィラン本人に価値はなくとも彼の実家である伯爵家とその家族には多大な価値があると公爵家が判断した故に婚約が継続し続けたといっても過言ではありません。


 法務大臣の父君、王妃殿下の腹心と名高い女官長の母君、王太子殿下の側近の双子の兄君、将来有望な弟君。
 ヴィランを除いた優秀な家族のお陰で、彼は、スタンリー公爵家で何一つ気に病む事なく自由気ままに日常を送れていたのです。
 将来有望な家族の存在に守られて生きているというのに、それを彼は理解できなかった事が非情に残念でなりません。

 結果として実の御両親と御兄弟が積み上げてきた実績と信頼と信用、その全てを犠牲にしたのです。


 愛人候補を公爵家に連れ込もうとしたのは結果論に過ぎませんが、伯爵家が何れ近いうちに排除されていた事は間違いないでしょう。
 彼らは敵が多過ぎた。
 伯爵一家を妬む者達は数多くいました。
 彼らが今まで何事もなく過ごせていたのは王家とスタンリー公爵の庇護の元にあったからです。もっと言うなら、おじい様である先代公爵。宰相閣下が目を光らせていたからとも言えます。
 だからこそ、あれだけの事を仕出かしておきながら命だけは助かったのです。
 今まで忠義を尽くして国家と王家に仕えていた情けで「死罪」は免れた。もっとも伯爵夫妻にとっては死んだ方が遥かにマシかもしれませんね。
 特に伯爵夫人は一生病棟から出られません。
 彼女もそのことを理解しているはずです。

 王妃殿下の腹心という立場は「王家の秘密を知り過ぎている」という事です。

 伯爵夫人は大変頭の良い方。「夫を立てる事が出来る賢い女性」です。そしてとても用心深い方とも言えます。自分に何かあった場合の事もあらかじめ予想を立てていた事でしょう。惜しむべきは三男の教育を怠った事。王家は伯爵夫人が生きている間はその家族を生かし続けてくれるでしょう。

 ですから、伯爵夫人。
 長生きしてください。
 狂ったフリをしながら……。
しおりを挟む
感想 158

あなたにおすすめの小説

押し付けられた仕事は致しません。

章槻雅希
ファンタジー
婚約者に自分の仕事を押し付けて遊びまくる王太子。王太子の婚約破棄茶番によって新たな婚約者となった大公令嬢はそれをきっぱり拒否する。『わたくしの仕事ではありませんので、お断りいたします』と。 書きたいことを書いたら、まとまりのない文章になってしまいました。勿体ない精神で投稿します。 『小説家になろう』『Pixiv』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

婚約者が私の妹と結婚したいと言い出したら、両親が快く応じた話

しがついつか
恋愛
「リーゼ、僕たちの婚約を解消しよう。僕はリーゼではなく、アルマを愛しているんだ」 「お姉様、ごめんなさい。でも私――私達は愛し合っているの」 父親達が友人であったため婚約を結んだリーゼ・マイヤーとダニエル・ミュラー。 ある日ダニエルに呼び出されたリーゼは、彼の口から婚約の解消と、彼女の妹のアルマと婚約を結び直すことを告げられた。 婚約者の交代は双方の両親から既に了承を得ているという。 両親も妹の味方なのだと暗い気持ちになったリーゼだったが…。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます

碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」 そんな夫と 「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」 そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。 嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は

だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。 私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。 そのまま卒業と思いきや…? 「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑) 全10話+エピローグとなります。

処理中です...