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30.侍女side
しおりを挟むアリエノールお嬢様。
ラヌルフ公爵家の総領姫。
王家の血を引く正真正銘の姫君でいらっしゃいます。
そんなアリエノール様はいついかなる時でも令嬢の仮面を外した事がございません。
どこまでも貴族であろうとするアリエノール様は気高く、美しい方でいらっしゃいます。あのバカ王太子との婚約が無くなって本当によかった。アリエノール様に相応しくない男でございましたから。これは私個人の感想ではなく、大多数の人達が心から思っている事だと思います。
漸く王太子から、王家から自由に慣れたアリエノール様ではございましたが、そうそうに婚約者選びに邁進されるお姿を黙って見ていることしかできない私は自分自身にもどがしさを感じておりました。
公爵家にメリットのある結婚相手を選抜していくアリエノール様。
頼もしさを感じてはいますが、アリエノール様自身の幸せはそこにあるのでしょうか。自分自身を公爵家の駒の一つと無意識に考えていらっしゃるのではないかと心配です。貴族の結婚は基本「政略」です。それでも私はアリエノール様には幸せな結婚をして欲しいのです。それが私の勝手な願いだとしても。ですから、ギレム公爵閣下がアリエノール様に求婚しに来られた時は驚きましたが、私はこの方こそ、アリエノール様に相応しい男性だと確信いたしました。全てにおいてバカ王太子より遥かに上の男性。そして、本当の意味でアリエノール様を守れる男でございます。
ギレム公爵閣下はとても魅力的です。どこか冷たい印象もありましたが、なによりもアリエノール様を見つめる眼差し。あれは恋する女性を見つめる男性の瞳です。バカ王太子には全くなかったもの。あの方にならアリエノール様を託せます。
アリエノール様は、異例の速さでギレム公爵閣下と婚約されました。
結婚ができる十六歳になると直ぐに結婚式を挙げられたのです。
その後の結婚生活はこちらが赤面しそうなほどのアツアツっぷりで胸やけがするぐらい甘い空気がそこかしこに溢れておりました。ただしそれはギレム公爵閣下のみからでしたが……。アリエノール様はそんなギレム公爵閣下に困惑していました。
「結婚すると人柄が代わる人がいるとは聞いた事がありますけれど……彼もそのタイプだったのかしら……?」
なんてこと仰るアリエノール様がなんとも可愛らしゅうございました。
ギレム公爵閣下はアリエノール様をそれは大切にしていらっしゃいました。
ただ、アリエノール様がこの結婚が政略結婚ではないと気付くのには、少しだけ時間が必要だったのでございます。
ギレム公爵閣下はただ一途にアリエノール様の事を大切にしていました。
当然といいますか、結婚の翌年には元気な御子が誕生された事はいうまでもありません。
本当に、あのバカ王太子という悪縁が切れてようございました。
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