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【第4部】浩輔編
30.警告(前編)
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舞衣は自分を好きで抱かれている。
しかし自分はどうだろう?
舞衣を好きかと言われると、頷くのは憚られる。
(やりたいだけ……)
ただそれだけではない気はしている。
(わからん……)
ミサやマユカの時だって、好きという感情もないのに関係は持っていた。
そして、自分は好きでなくても出来る、ということはよくわかった。
(舞衣のことは嫌いじゃない。寧ろ好きだけど……好きの種類がわからない)
舞衣に会うと胸が高鳴る。
でもそれは恋愛感情なのかはわからない。
(舞衣に会いたいとは思う……。可愛いとも思うし、このまま一緒にいたいとも思う。けどこれは『好き』なのか……)
小学生の時からずっと想っていた感情と同じなのだろうか。そもそもどんな気持ちだったか覚えていない。
(……まあ、いいか。セックスする仲だし)
お互いの部屋を訪ね、ずるずると関係を持ち続けた。
舞衣が嫌がるそぶりを見せないのをいいことに、欲望のままに彼女をものにしている。ミサの時となんら変わらない状態の自分がいた。
もうすぐ舞衣は大学を卒業する。
いつものように、舞衣の部屋を訪れ、彼女が食事の用意をしてくれている時、インターホンが鳴った。
「三原君、お願いできるかな。セールスだったら断って」
いつかのように、浩輔は代理でドアホンの受話器を取った。
「はい」
『あの……坂本です。舞衣さんは』
「今、手が離せないそうですが。ご用件は」
『いえ、また出直しますので』
モニターに映った男は、そのまま踵を返した。
「誰だった?」
「なんか部屋間違いみたい」
「そう。不動産屋さんかと思った」
「?」
「この部屋、今月までだから次の入居希望者が見学に来るかもって前に言われたことがあって」
単身アパートでは、ある話らしい。
「でも、不動産屋がアポナシでは来ないだろ」
「それもそうだよね」
「うん。あ、舞衣、ちょっと出てくる。すぐ戻るから。戻って手伝うから」
「……? わかった。あともうちょっとかかるから、大丈夫だよ」
悪いな、と浩輔は舞衣の部屋を出た。
(近くにまだいるよな)
三月でも夕方六時はまだ暗い。
目を凝らして人影を探す。
先程訪ねてきた「坂本」を追いかけて浩輔は外に出たのだ。
(いた……あれだな)
浩輔は、一人ぼんやり歩いている男を見て、小走りに駆け寄った。
「ちょっと、坂本さん」
背後から声をかける。
彼は振り返った。警戒するように浩輔を見た。
背の高い浩輔より視線は下だ。おそらく親しい祐策よりも低い目線だった。
「何か……」
その声音に、浩輔は彼があまり強い人間でないことを悟る。
「さっき舞衣を訪ねてきたよね」
舞衣という名前に、彼は反応した。
浩輔はにこにこと人のいい顔を見せたが、暗がりでは不要だったようだ。
坂本という彼は、警戒した表情は崩さなかった。
「何か用ですか」
その言葉に、浩輔は目を細めた。
「それはこっちの台詞なんだけど。フッた女に何の用だ?」
元彼の分際で、のこのこと訪ねてくるなんて、という言葉は飲み込んだ。
「いえ、特に」
「何も用はねえのにわざわざ夜に訪ねてなんてこねえだろ」
(こいつだな、舞衣にトラウマ植え付けたやつは)
舞衣の身体を幼児体型だと罵ったり、自分が悪いのに舞衣に全責任をなすりつけたクズの男だとすぐわかった。
「舞衣になんか話あんのか」
「別に……」
「じゃあなんで来たんだよ。あ?」
「通りがかったから……」
通りがかったからって二度も来るのか、と彼を見下ろした。
「舞衣に未練でもあんのか」
鼻で笑うと、
「てかあんた舞衣のなんなんだよ」
と言われ、顔を顰めた。
「慣れ慣れしく舞衣の名前呼ぶな。こっちは舞衣とは長いつきあいなんだよ」
勝ち誇ったように言い放つと、
「もしかして……あんたが小学生時代からの……」
と坂本は言った。
どうやら舞衣が、自分のことを元彼に話していたようで、そのことに驚いた。どんなふうに話していたのか気になるが、この分だと悪いようには言っていないだろう。
「舞衣が何話してたか知らねえけどさ」
浩輔は一息ついて睨む。
「もうすぐ卒業して二度と会うことないだろ。舞衣とヨリ戻してえとか言う話なら、絶対に却下だからな。だいたい……おまえだろ、舞衣にトラウマ植え付けた童貞野郎は」
童貞、という言葉に坂本は口を歪め、負けじと睨み返してきた。
(なんだこいつ、図星射されてキレてんのかよ)
一歩前に詰め、相手を見下ろした。
浩輔は背が高いほうだから、相手を怯ませるのはわりと簡単な方法だ。
一歩後ずさった坂本は、何か言いたそうだ。
否や浩輔は、右手で相手の股間をぎゅっと握った。
「なっ……何すっ……!」
坂本が声を裏返らせた。
「こんな粗末なモンで舞衣を泣かせたんだな。おっと『泣かせた』の意味はわかってるよな? よがらせるんじゃなくて、嫌な思いさせたってことだからな」
ぐにぐにと股間を掴む指を動かした。
「……っ、やめろ……よ……」
「お、ちょっと反応してる」
むくむく、と相手のものが蠢くのがわかった。
(キモいな……、俺のもこんなふうになるんだけど……)
「マジかよ、男に握られてこれかよ。よーし、もっと握ってやろうか」
浩輔はにやりと笑うと、膨らみ始めたそれをさらに包む。
ちっせーな、と呟き、強く揉んだ。
「舞衣のことを幼児体型だって罵ったらしいな? 俺にはいい身体だけどな」
「うっ……くそっ……」
坂本は浩輔の手首を掴んだ。
「やめろって……マジで……」
そう言われ、浩輔はぴたりと動きを止めて手を離した。
「じゃあ、あとは自分でシコれ」
「くそっ……」
「別にさ、このご時世どんな組み合わせでもいいだろうけど。悪いけど俺は女を悦ばせるほうが好きなんでね。……舞衣の身体とかさ」
「ヤったのかよ」
「さあ、どうだかな。おまえには関係ねえだろ」
ニヤニヤと相手の顔を見下すように見た。
「おまえさ、まだ童貞? だろうな。だったら教えてやるわ。挿入する前に、しっかり前戯しろよな。相手を愛撫して、指でイカせるくらいしろよ。フェラだけさせて、クンニしねえタイプだろうな。舞衣にフェラはさせたんだろ。自分はしねえくせに。そりゃ入るもん入らねえわ。それに、そんなお粗末なモンのくせに入らねえはずねえだろ。ま、そのおかげで、おまえが舞衣の最初の男にならなくてすんだわけだけど」
相手はぎりぎりと歯がみしながらも、言い返すことはしなかった。
ぐいっと顔を近づけると、
「二度と舞衣の前に現れんな。次その面見せたら、てめえ叩き潰す。何を叩き潰すかはよく考えろ」
どんっと肩を押すと、坂本はよろめいた。
尻餅をついて、股間を押さえている彼を冷たく見下ろし、踵を返した。
「あーあ、男のもん握っちまったな」
布越しとはいえ、不快だった。
(さっさと戻って洗面所借りよ)
しかし自分はどうだろう?
舞衣を好きかと言われると、頷くのは憚られる。
(やりたいだけ……)
ただそれだけではない気はしている。
(わからん……)
ミサやマユカの時だって、好きという感情もないのに関係は持っていた。
そして、自分は好きでなくても出来る、ということはよくわかった。
(舞衣のことは嫌いじゃない。寧ろ好きだけど……好きの種類がわからない)
舞衣に会うと胸が高鳴る。
でもそれは恋愛感情なのかはわからない。
(舞衣に会いたいとは思う……。可愛いとも思うし、このまま一緒にいたいとも思う。けどこれは『好き』なのか……)
小学生の時からずっと想っていた感情と同じなのだろうか。そもそもどんな気持ちだったか覚えていない。
(……まあ、いいか。セックスする仲だし)
お互いの部屋を訪ね、ずるずると関係を持ち続けた。
舞衣が嫌がるそぶりを見せないのをいいことに、欲望のままに彼女をものにしている。ミサの時となんら変わらない状態の自分がいた。
もうすぐ舞衣は大学を卒業する。
いつものように、舞衣の部屋を訪れ、彼女が食事の用意をしてくれている時、インターホンが鳴った。
「三原君、お願いできるかな。セールスだったら断って」
いつかのように、浩輔は代理でドアホンの受話器を取った。
「はい」
『あの……坂本です。舞衣さんは』
「今、手が離せないそうですが。ご用件は」
『いえ、また出直しますので』
モニターに映った男は、そのまま踵を返した。
「誰だった?」
「なんか部屋間違いみたい」
「そう。不動産屋さんかと思った」
「?」
「この部屋、今月までだから次の入居希望者が見学に来るかもって前に言われたことがあって」
単身アパートでは、ある話らしい。
「でも、不動産屋がアポナシでは来ないだろ」
「それもそうだよね」
「うん。あ、舞衣、ちょっと出てくる。すぐ戻るから。戻って手伝うから」
「……? わかった。あともうちょっとかかるから、大丈夫だよ」
悪いな、と浩輔は舞衣の部屋を出た。
(近くにまだいるよな)
三月でも夕方六時はまだ暗い。
目を凝らして人影を探す。
先程訪ねてきた「坂本」を追いかけて浩輔は外に出たのだ。
(いた……あれだな)
浩輔は、一人ぼんやり歩いている男を見て、小走りに駆け寄った。
「ちょっと、坂本さん」
背後から声をかける。
彼は振り返った。警戒するように浩輔を見た。
背の高い浩輔より視線は下だ。おそらく親しい祐策よりも低い目線だった。
「何か……」
その声音に、浩輔は彼があまり強い人間でないことを悟る。
「さっき舞衣を訪ねてきたよね」
舞衣という名前に、彼は反応した。
浩輔はにこにこと人のいい顔を見せたが、暗がりでは不要だったようだ。
坂本という彼は、警戒した表情は崩さなかった。
「何か用ですか」
その言葉に、浩輔は目を細めた。
「それはこっちの台詞なんだけど。フッた女に何の用だ?」
元彼の分際で、のこのこと訪ねてくるなんて、という言葉は飲み込んだ。
「いえ、特に」
「何も用はねえのにわざわざ夜に訪ねてなんてこねえだろ」
(こいつだな、舞衣にトラウマ植え付けたやつは)
舞衣の身体を幼児体型だと罵ったり、自分が悪いのに舞衣に全責任をなすりつけたクズの男だとすぐわかった。
「舞衣になんか話あんのか」
「別に……」
「じゃあなんで来たんだよ。あ?」
「通りがかったから……」
通りがかったからって二度も来るのか、と彼を見下ろした。
「舞衣に未練でもあんのか」
鼻で笑うと、
「てかあんた舞衣のなんなんだよ」
と言われ、顔を顰めた。
「慣れ慣れしく舞衣の名前呼ぶな。こっちは舞衣とは長いつきあいなんだよ」
勝ち誇ったように言い放つと、
「もしかして……あんたが小学生時代からの……」
と坂本は言った。
どうやら舞衣が、自分のことを元彼に話していたようで、そのことに驚いた。どんなふうに話していたのか気になるが、この分だと悪いようには言っていないだろう。
「舞衣が何話してたか知らねえけどさ」
浩輔は一息ついて睨む。
「もうすぐ卒業して二度と会うことないだろ。舞衣とヨリ戻してえとか言う話なら、絶対に却下だからな。だいたい……おまえだろ、舞衣にトラウマ植え付けた童貞野郎は」
童貞、という言葉に坂本は口を歪め、負けじと睨み返してきた。
(なんだこいつ、図星射されてキレてんのかよ)
一歩前に詰め、相手を見下ろした。
浩輔は背が高いほうだから、相手を怯ませるのはわりと簡単な方法だ。
一歩後ずさった坂本は、何か言いたそうだ。
否や浩輔は、右手で相手の股間をぎゅっと握った。
「なっ……何すっ……!」
坂本が声を裏返らせた。
「こんな粗末なモンで舞衣を泣かせたんだな。おっと『泣かせた』の意味はわかってるよな? よがらせるんじゃなくて、嫌な思いさせたってことだからな」
ぐにぐにと股間を掴む指を動かした。
「……っ、やめろ……よ……」
「お、ちょっと反応してる」
むくむく、と相手のものが蠢くのがわかった。
(キモいな……、俺のもこんなふうになるんだけど……)
「マジかよ、男に握られてこれかよ。よーし、もっと握ってやろうか」
浩輔はにやりと笑うと、膨らみ始めたそれをさらに包む。
ちっせーな、と呟き、強く揉んだ。
「舞衣のことを幼児体型だって罵ったらしいな? 俺にはいい身体だけどな」
「うっ……くそっ……」
坂本は浩輔の手首を掴んだ。
「やめろって……マジで……」
そう言われ、浩輔はぴたりと動きを止めて手を離した。
「じゃあ、あとは自分でシコれ」
「くそっ……」
「別にさ、このご時世どんな組み合わせでもいいだろうけど。悪いけど俺は女を悦ばせるほうが好きなんでね。……舞衣の身体とかさ」
「ヤったのかよ」
「さあ、どうだかな。おまえには関係ねえだろ」
ニヤニヤと相手の顔を見下すように見た。
「おまえさ、まだ童貞? だろうな。だったら教えてやるわ。挿入する前に、しっかり前戯しろよな。相手を愛撫して、指でイカせるくらいしろよ。フェラだけさせて、クンニしねえタイプだろうな。舞衣にフェラはさせたんだろ。自分はしねえくせに。そりゃ入るもん入らねえわ。それに、そんなお粗末なモンのくせに入らねえはずねえだろ。ま、そのおかげで、おまえが舞衣の最初の男にならなくてすんだわけだけど」
相手はぎりぎりと歯がみしながらも、言い返すことはしなかった。
ぐいっと顔を近づけると、
「二度と舞衣の前に現れんな。次その面見せたら、てめえ叩き潰す。何を叩き潰すかはよく考えろ」
どんっと肩を押すと、坂本はよろめいた。
尻餅をついて、股間を押さえている彼を冷たく見下ろし、踵を返した。
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