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第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する

第39話 マルクの使い魔

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「おや? もう第三層へ降りる階段へ着いてしまいましたね。マルク様はまだ使い魔を戦わせていませんが、普通は第四層に現れるゴブリンが使い魔でしたし、構いませんよね?」
「はっはっは……そ、そう、だな。だが、俺様は寛大だからな。他の者に合わせて、この第二層でも構わんぞ?」

 なんだろう。普段のマルクなら、先へ先へと進みそうなのに。
 使い魔の調子が悪いのかしら?

「……って、あれ? マルク、貴方の使い魔は?」
「……あ、あぁ。一時的に家へ戻しているだけだ」
「そうなの? でも、召喚魔法の授業なんだから、使い魔は呼んでおいた方が良いんじゃないの?」
「いや、それをお前が言うのか?」
「何で? 私が何か変な事をしたかしら? 私は胸が引き裂かれる思いで、シロを戦いの場に出して、見守ったわよ?」
「…………いや、何でもない。そうだな。見守ったな」

 何故かマルクが怪訝な表情を浮かべて私を見て来る。
 私、何か変な事を言ったかしら?

「えーっと、残念ながら今日は前回みたいに丸一日をこのダンジョン探索に使える訳ではなくて、時間が限られています。このクラスはSクラスですし、第三層も余裕でしょう。一先ず先へ進みましょうか」

 どうやらあまり時間がないらしく、皆で第三層へ。
 そこには第二層では見なかった、大きなカエルみたいな魔物が居た。

「ビッグトードですね。では、マルク様……どうぞ」
「う、うむ。よかろう。この俺様が捕まえたゴブリンの力を見せてやろうではないか……サモン、ゴブリン!」

 サモン、ゴブリン……って、マルクは使い魔に名前を付けていないのかしら?
 まぁ個人の自由だけど、名前くらい付けてあげれば良いのに。
 とはいえ、召喚魔法でゴブリンが現れ、

「さぁ行け! あのカエルを倒すのだっ!」

 ビシッとマルクがビッグトードを指差す。
 すると、ゴブリンがボリボリと頭を掻きながらカエルに向かって歩いて行き……そのまま素通りしてどこかへ行ってしまった。

「マルク。使い魔がどっかに行っちゃったわよ?」
「あの……マルク様。使い魔はちゃんとお世話していましたか? 契約を成功させても、信頼が低ければ言う事を聞かないですし、酷ければ、最悪契約自体が破棄されて、襲い掛かってきますよ?」
「いや、その……俺様は貴族だからな。少々忙しくてな」

 若干バツが悪そうな感じのマルクと、スルーされて戸惑うビッグトード。
 何となくカエルがキョトンとしているような気もする。

「えーっと、マルク様の召喚魔法の評価は……」
「ファイアー・ボールッ! ……からの、コントラクト! よしっ! 今から、このカエルが俺様の使い魔だ。おっ……丁度良い所に、魔物がいるぞっ! 行けっ、カエルっ!」

 マルクがこんがりと焦げたカエルと契約魔法を結び、すぐさま近くにいたイモムシみたいな魔物に突撃させた。

「……あの、マルク様?」
「見よ! 俺様の使い魔がイモムシの魔物を倒したぞ! これで問題無いであろう?」
「マルク様。これは、どちらかというと、使い魔を使役する事に重点を置いております。ですので、ポイントは魔物を倒す事よりも、指示通りに使い魔を動かす事が出来るかどうか……」
「先程、俺様のカエルが指示に従い、魔物を倒したではないか。問題無かろう」
「ですから……」
「問題無いよな?」
「……はい」

 いいの!? これが貴族のやり方なの!?
 このままだと、もっと難しい課題に当たった時、マルクが苦労するだけだと思うんだけど。
 そんな中、奥から新たに現れた魔物をリュカの使い魔であるドラゴが一掃し、一先ず今日は引き返すとなった。
 マルク……知らないわよ?
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