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苦しいけど好き

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身動ごうとするも動けず。
後ろから抱き締められながら眠っていた。
お互い裸で、ピッタリとくっついている。
抱き締めている人はまだ眠ってる。
寝息と共にくっついている背中から体温と鼓動が伝わる。
鼓動って相手の音に合わせようとする、俺と先輩の鼓動が一つに重なる。
こんなに幸せで良いんだろうか。

「暖かい」

先輩の腕の重みが心地良い。
先輩の寝息が首筋にかかりくすぐったい。
好きな人の息遣いはこんなにも愛おしいなんて知らなかった。
先輩を起こさないよう抜け出…せない。
どうしよう。
まず先輩の腕を…腕を。
重い。
人の腕ってこんなに重いの?
態勢が悪いのか力が入らず持ち上げられない。
腕を離そうとすると、先輩の腕に力が入る。
うぇーん
シャワー浴びたいのに。
身動ぐと何かがトロっとした。
うん、シャワー浴びたい。
どうにか先輩から抜け出さないと。

「ひゃっ」

首筋に痛みが走った。

「先輩起きたの?」

甘噛み程度だが油断しすぎて驚いた。

「先輩?」

寝ぼけて噛まれたのかな?

「………」

寝ちゃったのかな?

「先輩?」

「叡」

いつもより少し低い声で告げる。

「えっ?」

「叡」

先程とは違い、消え入りそうな声。
そんな声出さないで。
泣いてないよね?

「あきら先輩?」

噛まれた場所に軽く唇が落とされる。

「ん」

「あのね、シャワーを」

「…わかった」

腕が外され解放された。
重みが消えて自由と共に少しの寂しさに気づかない振りで起き上がる。

「一人で行けんのか?」

俺の腰を捕らえ、腰骨にキスが贈られる。

「大丈夫、先輩が離してくれたら」

名残惜しそうに手が離れていった。

「すぐ戻ります」

振り返り先輩の頬にキスをする。
床に足をつき立ち上がろうとすると床に座り込んでいた。
なにが起きたの?
足に力が入らない。

「あーあ、それでも一人で行けんの?」

ベッドに横になりながら頬杖ついてニヤけてる男がいる。
ムッと睨む。

「連れてってやろうか?」

この男は次第に性格が悪くなっている。
確実に。

「ん゛ー、連れてって」

先輩も起き上がりベッドから出てくる、当然裸で。
目のやり場に困り顔を背けた。
膝裏に腕が差し込まれ、俺も先輩に体を預け首に腕を回す。

「そんなに怒んなよ」

持ち上げられ二人でお風呂場に向かった。
浴室で降ろされ二人でシャワーを浴びた。
一人で立つのは不安があり向き合う形で先輩の肩に掴まった。
更に俺の足の間に先輩の片足が入り、支えられ背中からシャワーが当てられる。
腕を回されお尻を鷲掴みにされる。
睨んで抗議するも

「中、出すだけだろっ」

真剣な顔で言われるとそうなんだろうけど。
そういったことの後始末ってなんか…。
恥ずかしすぎて顔みれないし、俺の顔も見て欲しくない。
先輩の視線から逃げるように先輩の肩に頭を預ける。
クチュクチュと音が響く。
あーもう、ほんとヤダ。
これからは一人で後始末出きるようにならないと恥ずかし過ぎる。
それになんだか…違う違う。
これは洗われているだけ。
変な意味はない、落ち着け自分。
暫くして先輩の手が離れていった。
危なかった。
前なんて触られて無いのに立っちゃうかと思った。
安心して先輩から離れようとした。

「やぁぁん」

シャワーが直接お尻に当てられた。
シャワーの刺激は激しく、膝から力が抜けた。
先輩は動揺することなく俺を支えてくれた。

「ちゃんと、掴まってろ」

「んっ」

先輩に確り掴まった。
さっき迄はイタズラされているのではと疑っていた事を反省した。
それからは大人しく先輩に従い浴室を出た。
先輩の着替えを借りてリビングで寛いだ。
その間先輩がご飯を作ってくれている。
俺昨日夕食食べてなかった。
お腹空いた。
凄く良い香りがしてくる。
お腹空いてるのに目蓋が重くなる。

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