上 下
59 / 72
3章

◆3章のあらすじ(約1000字バージョン)

しおりを挟む
 主人公・紗季音は、とある事情(※くわしくは1章にて)から、あやかし(興常おきつねという名の妖狐とリンという名の燐火)といっしょに暮らすことになった女子大学生。

 料理研究部で料理を練習しながら、大学図書館の学生アルバイトも頑張る紗季音。
 そんな紗季音のもとに、友達のめぐみ朋枝ともえそしてその友人からの相談が次々と舞いこんでくる。

 大なり小なり心配ごとをかかえている友人たち。
 紗季音自身も興常から「そなたは自分があやかしであることを忘れてしまったタヌキのあやかしなのだ」とカン違いされたままの状況をなんとかせねばと画策している最中。

 しかし自分のことはさておき、悩みを打ちあけてくれた友達に、親身になって打開策をみつけていく紗季音。
 興常も力になってくれ、紗季音の友人たちの問題は無事解決していく。

 とても頼りになる興常だが、彼が紗季音にあれこれ力を貸してくれるのは――。
 興常が紗季音のことを「過去の記憶を失ってしまった自分の恋人」だと思いこんでいるから。

 紗季音が自分はただの人間だと訴えても、興常は信じていない。
 あやかしの興常は、何百年間も、一途に恋人を想い続けている。

 紗季音は、興常の恋人であるタヌキのあやかしが今も生きているならば、現在どこにいるのか探し、興常と再会させてあげたいと思いはじめる。
 その方法でも、自分がタヌキのあやかしでないことを証明できると気づく紗季音。

 冬。紗季音は興常と都内で開催される『ボロいち』に行くことになる。
 世田谷ボロ市――東京都の無形民俗文化財――440年以上もの歴史を持ついち
 骨董品や食料品などをあつかう露店が、世田谷代官屋敷の周辺に何百と立ち並ぶ。

 興常は過去にもボロ市に来たことがあるそうだ。そしてそのときはまだボロ市という名称の市ではなかったという。

(それって西暦だと何年ぐらいのこと?)

 紗季音はボロ市に行けば、興常の恋人のあやかしに関する何らかの手がかりがつかめるかも、と思っている。
 一方、興常は、かつて訪れたボロ市に行き、紗季音の過去の記憶がもどったらいいと考えているようだ。

 結局大きな手がかりはつかめなかったものの、楽しい時間をすごす紗季音と興常。
 紗季音の記憶がもどらないままでも、「そなたとともにいられるならばそれでいい」と告げる興常。
 このままじゃだめだと思う紗季音。
 彼女は、興常の恋人に関するあらたな手がかりをつかみたいと願うのだった。
しおりを挟む

処理中です...