追放されたオレを拾ったやつが超カンジ悪い!

甘糖めぐる

文字の大きさ
上 下
27 / 32
おまけ あの時のジュード視点(※本編微ネタバレ有)

7〜9話のこと

しおりを挟む
 薬草採取に連れてきたら、リヒトがスライムの群れに飲み込まれた。どん臭すぎる。

 助け出したはいいものの、ぬるぬるのどろどろだし、耳にも入ったとか喚いている。指で掻き出してやろうとしたら、目をぎゅっとつむって、口を固く結んで……

 ――声、我慢してんのか、こいつ。

 そんなにくすぐったいか?
 今さら付けるべき格好もないだろうに、いじらしいやつだ。

 もう指じゃ駄目だから、仕方なく口で吸い出してやる。一度目は耐えたが、二度目はリヒトの口から高い声が漏れてきた。

「んっ……う……」

 ――は……? 笑うとかじゃなくて、か。

 目の前で甘ったるい声を出しやがって。顔を赤らめるな。相手次第じゃ襲われてるぞ。

 リヒトを図書館にやっている間、買い出しに付いてきたエマにあいつの醜態を話してみる。(あわよくば幻滅してほしい)

「そういや、リヒトがスライムに埋もれた時、耳にも入ったとか言ってたんだけどな」
「えっ? うわぁ……」
「吸い出してやったら、あいつ、女みたいに高い声出して――」
「はぁ……!? す……吸い出した? 口で? ジュードが?」
「一番、手っ取り早かったからな」

 エマは、しばらくぽかんとしたままこちらを見上げたあと、おかしそうに肩を揺らす。

「それは、いや、その顔でやられたら理性死ぬでしょ」
「はは、大げさだな」
「ふふっ……ジュードが他人のこと話すの、珍しいね。――あ、被害者が」

 そうつぶやいて、エマは道の向こうからくるリヒトに小さく手を振った。

 ――そんなに珍しいか? まあ、そもそも他人と関わらないしな。

 たしかに、今日はじめて知ったくらいだ。自分の唇が、他人の耳たぶに触れた時の感触だとか。

 ……癖になるもんだな。
 夜、ベッドでリヒトを後ろから抱え込んで、あごを固定して、唇で耳たぶを食む。やわらかくて、なめらかで、少しだけひんやりしている。リヒトはわずかに身をよじっていたが、抵抗しているのではなく、動きを抑えられないといった様子だった。

 喉の奥から、かすれた甘い声が漏れている。
 こんなふうに身を差し出されて、なにも感じないわけではなかった。

「……お前、本当に抵抗しないよな。良いのか、これが」

 解放して尋ねてみると、リヒトが大声をあげてこちらを振り向く。

「は――はあ!? なに言ってんの!?」

 次第にしどろもどろになる。

「こっ、これはぁ! 仕方なく! お前に借りがあるから!」
「その割には、最近甘ったるい声を出すよな」
「っ~~!? それはぁ! 他にそういう相手がいないから! お前だって仕方なくオレを触ってんだろうが! 同じだよ! ちょっと顔が良いからって自惚れんな!」

 本気で言っているのだろうか。まあ、こいつはエマが好きだと言っていたし、やり場のない欲求を募らせているのかもしれない。

 もしも、万が一、いや万に一つもあり得ないが、エマ自身がリヒトを選ぶようなことがあった時のために一線は超えないでいてやろう。

 だなんて考えていたら、こいつはエマと祭りに行くし、俺とエマが恋人同士ではないと知って嬉しそうだし……なんというか、ムカつくな。

 そんな中、リヒトが俺の出自に関係する質問をしてきた。

「リヒト。お前は、これを聞いても、俺を裏切らないと誓うか?」

 この情報を知ったら、こいつが俺から離れて行くんじゃないかと思った。安全性だけの問題ではなかった。

 ――いや、なんで、俺はこいつにこだわってるんだ……。

 本当に、“エマをリヒトにやるわけにはいかない”のか?

 本当は、“リヒトを、他の誰かに渡したくない”んじゃないのか?

 ……いや、全く、馬鹿馬鹿しい。

 その可能性については、少しも考えたくなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

ふしだらな母親の娘は、私なのでしょうか?【第5回ツギクル小説大賞 AIタイトル賞】

イチモンジ・ルル
恋愛
奪われ続けた少女に届いた未知の熱が、すべてを変える―― 「ふしだら」と汚名を着せられた母。 その罪を背負わされ、虐げられてきた少女ノンナ。幼い頃から政略結婚に縛られ、美貌も才能も奪われ、父の愛すら失った彼女。だが、ある日奪われた魔法の力を取り戻し、信じられる仲間と共に立ち上がる。 歪められた世界で、隠された真実を暴き、奪われた人生を新たな未来に変えていく。 ――これは、過去の呪縛に立ち向かい、愛と希望を掴み、自らの手で未来を切り開く少女の戦いと成長の物語―― 旧タイトル ふしだらと言われた母親の娘は、実は私ではありません 他サイトにも投稿。 2025/2/28 第5回ツギクル小説大賞 AIタイトル賞をいただきました

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

異世界転移したと思ったら、実は乙女ゲームの住人でした

冬野月子
恋愛
自分によく似た攻略対象がいるからと、親友に勧められて始めた乙女ゲームの世界に転移してしまった雫。 けれど実は、自分はそのゲームの世界の住人で攻略対象の妹「ロゼ」だったことを思い出した。 その世界でロゼは他の攻略対象、そしてヒロインと出会うが、そのヒロインは……。 ※小説家になろうにも投稿しています

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

30歳まで独身だったので男と結婚することになった

あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。 キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定

処理中です...