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おまけ あの時のジュード視点(※本編微ネタバレ有)
10〜11話のこと※微R18
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これは、十年もろくな感覚を得られなかった反動に過ぎない。解呪の力を持っていたのが、たまたまリヒトだっただけで、こいつに対して特別な感情はない。
そう、結論付けていた。
なのに、俺が兄から呪いを受け、殺されかけたことを知ったリヒトは、今まで見たことがないくらい本気で憤っていた。
「どうして……お前が、そんな目に遭わなくちゃいけないんだよ……!」
まるで、自分のことのように打ち震えていた。
――どうして、お前は、また。
俺のことでこんなに感情を乱して、意志の強そうな大きな目に涙をにじませて、まっすぐにこちらを見上げてくる。
その姿が、俺の感情すら揺さぶりそうになって――努めて、なんでもないような顔をした。
◇◇◇
その日の夜中、眠っていると、リヒトがこっそり腕の中から抜け出していくのがわかった。少し待っても帰ってこない。
――まさか、エマの所に行ったんじゃないだろうな。
あれだけ俺に対してよくわからん感情をぶつけてきて、一体どういうつもりだ?
探しに行ってみると、二人してキッチンで水を飲みながら話をしていた。
「おい。こんな夜中に、二人でなにをしてるんだ」
「いや普通に話だけど」
リヒトとエマの声が重なる。本当に話だけか怪しいものだ。
リヒトを部屋に連れ戻して、ベッドに放り投げる。
「うっわ!? なにすんだよ!」
「エマに手を出すなと言ったよな」
「出してないよ! てか、お前には関係ないだろ! 彼氏じゃないんだし!」
「お前のような粗忽者にエマはやれない」
「お父さんかよ! 引っ込んでてくれ!」
――お前から、俺の内に踏み込んで来たくせに。なんだその言い草は。
また後ろから抱え込んで、大人しくさせて、耳元でささやく。
「お前は、俺で満足しておけ」
それで問題ないだろ。
驚いて一通り騒いだ後、リヒトは静かになった。
そして、突然、声をかけてくる。
「なあ、ジュード。起きてる?」
「……なんだ?」
「ほら、さっきさ、お前言ったじゃん。その……俺で満足しておけって」
「言ったな」
「その……試してみてよ」
「なにを?」
「だ、だから……! オレが! お前で! 満足できるかどうか……!」
――こいつは何を言ってるんだ?
自分から指示しておいて何だが、軽く混乱した。そんなに体を持て余してるのか?
つまり、この――俺より小さくてうるさくて全身全霊で掻き乱してくるお前を、二度とよそ見できないようにしたいって欲求をぶつけていいってことか?
方法なんて他にもあっただろうが、もう、本能的に一つを選んで尋ねていた。
「お前、男に抱かれたことあるのか?」
「はっ!? ないよ! えっ、なに!?」
「なら、まずは教え込むところからだな」
触るだけだ。外と、中から。簡単に快楽を得られる体になるように。
さっきまであんなに反抗的な態度を取っていたのに、無意識に力を抑えているのか、リヒトの抵抗はまるで意味のないものだった。それだけでもおかしいのに、抗議をしながらこちらへ体を預け始めたことに口の端を上げずにはいられなかった。
これなら簡単に落とせる。こいつは快楽に弱すぎる。
身体つきはどうしたって男なのに、俺の腕の中で喘いで、限界が近付くとぐずる子どものように首を横に振って――最後には、ひときわ高く鳴いて吐精する。
目の前でそれをやられると、さすがに腹の奥がうずいた。
ぐったりしているものだから、肩をつかんで仰向けにしてやると、リヒトはとろけるような表情でぽうっと惚けていた。
「はっ……なんて顔してやがる」
こいつに対して、特別な感情なんて持ち合わせていないと――自分に言い聞かせるのは、もう無理そうだ。
「どうするんだ? お前のこと、そういう目で見ないようにしてやってたのに」
そう、結論付けていた。
なのに、俺が兄から呪いを受け、殺されかけたことを知ったリヒトは、今まで見たことがないくらい本気で憤っていた。
「どうして……お前が、そんな目に遭わなくちゃいけないんだよ……!」
まるで、自分のことのように打ち震えていた。
――どうして、お前は、また。
俺のことでこんなに感情を乱して、意志の強そうな大きな目に涙をにじませて、まっすぐにこちらを見上げてくる。
その姿が、俺の感情すら揺さぶりそうになって――努めて、なんでもないような顔をした。
◇◇◇
その日の夜中、眠っていると、リヒトがこっそり腕の中から抜け出していくのがわかった。少し待っても帰ってこない。
――まさか、エマの所に行ったんじゃないだろうな。
あれだけ俺に対してよくわからん感情をぶつけてきて、一体どういうつもりだ?
探しに行ってみると、二人してキッチンで水を飲みながら話をしていた。
「おい。こんな夜中に、二人でなにをしてるんだ」
「いや普通に話だけど」
リヒトとエマの声が重なる。本当に話だけか怪しいものだ。
リヒトを部屋に連れ戻して、ベッドに放り投げる。
「うっわ!? なにすんだよ!」
「エマに手を出すなと言ったよな」
「出してないよ! てか、お前には関係ないだろ! 彼氏じゃないんだし!」
「お前のような粗忽者にエマはやれない」
「お父さんかよ! 引っ込んでてくれ!」
――お前から、俺の内に踏み込んで来たくせに。なんだその言い草は。
また後ろから抱え込んで、大人しくさせて、耳元でささやく。
「お前は、俺で満足しておけ」
それで問題ないだろ。
驚いて一通り騒いだ後、リヒトは静かになった。
そして、突然、声をかけてくる。
「なあ、ジュード。起きてる?」
「……なんだ?」
「ほら、さっきさ、お前言ったじゃん。その……俺で満足しておけって」
「言ったな」
「その……試してみてよ」
「なにを?」
「だ、だから……! オレが! お前で! 満足できるかどうか……!」
――こいつは何を言ってるんだ?
自分から指示しておいて何だが、軽く混乱した。そんなに体を持て余してるのか?
つまり、この――俺より小さくてうるさくて全身全霊で掻き乱してくるお前を、二度とよそ見できないようにしたいって欲求をぶつけていいってことか?
方法なんて他にもあっただろうが、もう、本能的に一つを選んで尋ねていた。
「お前、男に抱かれたことあるのか?」
「はっ!? ないよ! えっ、なに!?」
「なら、まずは教え込むところからだな」
触るだけだ。外と、中から。簡単に快楽を得られる体になるように。
さっきまであんなに反抗的な態度を取っていたのに、無意識に力を抑えているのか、リヒトの抵抗はまるで意味のないものだった。それだけでもおかしいのに、抗議をしながらこちらへ体を預け始めたことに口の端を上げずにはいられなかった。
これなら簡単に落とせる。こいつは快楽に弱すぎる。
身体つきはどうしたって男なのに、俺の腕の中で喘いで、限界が近付くとぐずる子どものように首を横に振って――最後には、ひときわ高く鳴いて吐精する。
目の前でそれをやられると、さすがに腹の奥がうずいた。
ぐったりしているものだから、肩をつかんで仰向けにしてやると、リヒトはとろけるような表情でぽうっと惚けていた。
「はっ……なんて顔してやがる」
こいつに対して、特別な感情なんて持ち合わせていないと――自分に言い聞かせるのは、もう無理そうだ。
「どうするんだ? お前のこと、そういう目で見ないようにしてやってたのに」
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