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おまけ あの時のジュード視点(※本編微ネタバレ有)
4〜6話のこと
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城で出ていた料理を真似て作ってみたが、やっぱりエマの味付けの方が食べやすい気がする。まあ、リヒトはなんでもいいのか目を輝かせて口に運んでいた。もしかしたら雑草を食わせても大丈夫かもしれない。
その後、滞在していた宿に荷物を取りに行くとかで付いて行ったら、目的地のすぐ前でリヒトが踵を返した。
――ああ、あそこのやつらに捨てられでもしたのか。
ダンジョンで一人きりで倒れていたのは、仲間に裏切られたとか、大体そんな理由だろう。
追ってきた相手は、リヒトを連れて行こうとしている。本人も、観念したのか、下手な作り笑いで「大丈夫だよ」だなんて言ってこちらを見上げる。たぶん、お前、今から口封じで殺されるけどな。
ゆっくり手を離すと、リヒトは、一瞬情けない顔をしてから俺に背を向けた。こいつ、ダンジョンの時は助けてくれってうるさかったくせに、俺まで因縁付けられるのを危惧してるのか?
――馬鹿みたいにお人好しだな。あいつとも関係なさそうだし……。
一応役に立つし、助けてやってもいい。
ここで騒ぎを起こすより、泳がせて証拠をつかんだ方がいいか。ついでに、そこにいる記者を使ってバラまかせよう。
後をつけて行くと、思った通り、リヒトが口封じされそうになっていた。
あんなに強がっていたのに、近づくと、急に震えたか細い声を漏らす。
「ジュード……助けて……っ」
――いつも、このくらい可愛げがあるといいんだけどな。
そんなことを言ったら威嚇されそうだったから、俺は黙って解呪のために手首をつかんだ。
魔法さえ使えれば、有名パーティーだかなんだか知らないが特に苦戦はしなかった。
倒したやつらとリヒトが静かになったら、今度は新聞記者がうるさくなる。
「こっ、これはスクープだ……! 注目パーティーの殺人未遂! リーダーは公爵令息! それを、颯爽と現れて撃退した――」
やめろ、俺の存在を世間にほのめかすな。あいつの耳に届くだろ。
釘を差してから、地面に落ちていた認識票を拾い上げる。リヒトのものだった。
「これ――お前のだろ」
「あ……ありがとう」
しおらしい。宿屋までの道を引き返している間も、ずっとしおらしかった。これはこれで気味が悪い。
しかも、ぼけっとして人にぶつかりそうだったから仕方なく繋いでいた手を、突然ぎゅっと握りしめられた。
――なんなんだ、こいつは……。やっぱり、少しは騒がしくないと、調子が狂うな。
◇◇◇
リヒトを前に抱えるようにして、二人で浴槽に入る。とてつもなく狭いが、こいつがいると水じゃなくて湯に浸かっている実感がわく。
あと、これは実験だ。手で触れているだけでも全身の感覚が戻るが、特に直接触れた場所――今なら体の前面が、こいつの体の感触を生々しく脳に伝えてくる。
解呪が触れている間だけというのは不可解だし、使い勝手も悪いが――まあ、面白いな。こいつの反応も合わせて。
リヒトの体に手を回す。浅めに割れた腹筋の溝、なんとなく指を差し込みたくなるへその穴、そしてもっと下へ――。
遊んでいたら、リヒトが体を跳ねさせ勢いよく振り返る。
「やめろって! どこ触ってんだよ!」
「脚の付け根」
「そんなことはわかってるんだよ!」
リヒトが膝を抱えて丸くなる。
――こいつ、ちょっと勃ってたな。軽く触っただけで? 変態か?
まあ、もう触らせてくれそうにない。
「早く上がってこいよ」
ひと声かけて、先に浴室を出る。
うん、まあ……はじめは解呪だけが目的だったが、玩具としてもアリだな。
こいつが捨てられたことも、俺が拾ってきたことも、今日奪い返してきたことも――全部、正解だったのかもしれない。
その後、滞在していた宿に荷物を取りに行くとかで付いて行ったら、目的地のすぐ前でリヒトが踵を返した。
――ああ、あそこのやつらに捨てられでもしたのか。
ダンジョンで一人きりで倒れていたのは、仲間に裏切られたとか、大体そんな理由だろう。
追ってきた相手は、リヒトを連れて行こうとしている。本人も、観念したのか、下手な作り笑いで「大丈夫だよ」だなんて言ってこちらを見上げる。たぶん、お前、今から口封じで殺されるけどな。
ゆっくり手を離すと、リヒトは、一瞬情けない顔をしてから俺に背を向けた。こいつ、ダンジョンの時は助けてくれってうるさかったくせに、俺まで因縁付けられるのを危惧してるのか?
――馬鹿みたいにお人好しだな。あいつとも関係なさそうだし……。
一応役に立つし、助けてやってもいい。
ここで騒ぎを起こすより、泳がせて証拠をつかんだ方がいいか。ついでに、そこにいる記者を使ってバラまかせよう。
後をつけて行くと、思った通り、リヒトが口封じされそうになっていた。
あんなに強がっていたのに、近づくと、急に震えたか細い声を漏らす。
「ジュード……助けて……っ」
――いつも、このくらい可愛げがあるといいんだけどな。
そんなことを言ったら威嚇されそうだったから、俺は黙って解呪のために手首をつかんだ。
魔法さえ使えれば、有名パーティーだかなんだか知らないが特に苦戦はしなかった。
倒したやつらとリヒトが静かになったら、今度は新聞記者がうるさくなる。
「こっ、これはスクープだ……! 注目パーティーの殺人未遂! リーダーは公爵令息! それを、颯爽と現れて撃退した――」
やめろ、俺の存在を世間にほのめかすな。あいつの耳に届くだろ。
釘を差してから、地面に落ちていた認識票を拾い上げる。リヒトのものだった。
「これ――お前のだろ」
「あ……ありがとう」
しおらしい。宿屋までの道を引き返している間も、ずっとしおらしかった。これはこれで気味が悪い。
しかも、ぼけっとして人にぶつかりそうだったから仕方なく繋いでいた手を、突然ぎゅっと握りしめられた。
――なんなんだ、こいつは……。やっぱり、少しは騒がしくないと、調子が狂うな。
◇◇◇
リヒトを前に抱えるようにして、二人で浴槽に入る。とてつもなく狭いが、こいつがいると水じゃなくて湯に浸かっている実感がわく。
あと、これは実験だ。手で触れているだけでも全身の感覚が戻るが、特に直接触れた場所――今なら体の前面が、こいつの体の感触を生々しく脳に伝えてくる。
解呪が触れている間だけというのは不可解だし、使い勝手も悪いが――まあ、面白いな。こいつの反応も合わせて。
リヒトの体に手を回す。浅めに割れた腹筋の溝、なんとなく指を差し込みたくなるへその穴、そしてもっと下へ――。
遊んでいたら、リヒトが体を跳ねさせ勢いよく振り返る。
「やめろって! どこ触ってんだよ!」
「脚の付け根」
「そんなことはわかってるんだよ!」
リヒトが膝を抱えて丸くなる。
――こいつ、ちょっと勃ってたな。軽く触っただけで? 変態か?
まあ、もう触らせてくれそうにない。
「早く上がってこいよ」
ひと声かけて、先に浴室を出る。
うん、まあ……はじめは解呪だけが目的だったが、玩具としてもアリだな。
こいつが捨てられたことも、俺が拾ってきたことも、今日奪い返してきたことも――全部、正解だったのかもしれない。
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