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1667.行き倒れ
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比加礼太はその後、ベースの町にかなり接近したこともあったのだが、気付かぬまま今は遠ざかる方向に歩いている。
ただもう限界だ。水場が見付けられないまま彷徨っている。
「う……」
足が縺れて転倒した。
既に心が挫けていた彼はもう起き上がれない。
しかし運はまだ彼を見放してはいなかった。
「あ、あの、生きてますか?」
聞き慣れた言葉だった。
驚いた礼太は飛び起きようとして失敗した。
頭だけ上げて落とすような恰好になった彼は痛みを堪えて視線を上げる。
すると見慣れた雰囲気の顔の男が心配そうに屈み込んでいる。
「あ、あんたは……」
「あ! あなたも日本人なんですね!?」
男は一転嬉しそうにする。
「も?」
「ぼくも日本人なんですよ。この世界で日本人はぼくだけだと思っていたから嬉しいなぁ」
「あんたはここに来て長いのか?」
「いえ、まだ1ヶ月ちょっとくらいです。だからここの言葉も判らなくて誰とも話せなくて……」
男は寂しそうな顔をした。
しかし直ぐにまた嬉しそうにし、また直ぐに「しまった」と顔に出す。
「話してる場合じゃないですね。行き倒れられてるんですから、早く町に行かないと」
男は動けない礼太を必死に負ぶって歩き出した。
ただもう限界だ。水場が見付けられないまま彷徨っている。
「う……」
足が縺れて転倒した。
既に心が挫けていた彼はもう起き上がれない。
しかし運はまだ彼を見放してはいなかった。
「あ、あの、生きてますか?」
聞き慣れた言葉だった。
驚いた礼太は飛び起きようとして失敗した。
頭だけ上げて落とすような恰好になった彼は痛みを堪えて視線を上げる。
すると見慣れた雰囲気の顔の男が心配そうに屈み込んでいる。
「あ、あんたは……」
「あ! あなたも日本人なんですね!?」
男は一転嬉しそうにする。
「も?」
「ぼくも日本人なんですよ。この世界で日本人はぼくだけだと思っていたから嬉しいなぁ」
「あんたはここに来て長いのか?」
「いえ、まだ1ヶ月ちょっとくらいです。だからここの言葉も判らなくて誰とも話せなくて……」
男は寂しそうな顔をした。
しかし直ぐにまた嬉しそうにし、また直ぐに「しまった」と顔に出す。
「話してる場合じゃないですね。行き倒れられてるんですから、早く町に行かないと」
男は動けない礼太を必死に負ぶって歩き出した。
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