生活魔法は万能です

浜柔

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588 合流

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 タイラクがルキアスと合流したのは夕方も近く、普段なら引き上げる頃合いであった。
 この時にはルキアスは勿論、フヨヨンでも疲労を感じていた。ここまで袋小路に迷い込まないよう気を付けつつ直線の長い回廊を選び、魔物が間違っても上の階層に向かわないように上り階段を避けての足止めを続けていたのだ。
 長い直線を選ぶのは魔物の魔法の範囲外から目視して攻撃するため。曲がり角を挟まなければならない場合は見込みでメイナーダの魔法やフヨヨンの魔道具で攻撃することになる。

「遅いよ!」
「無茶言うな。道も判らない所を遠回りして来たんだ」
「とにかく早急に作戦を立てるよ」

 フヨヨンは疲弊した様子のザネクとシャルウィの様子に、小言を続けるのを控えた。

「案はあるのか?」
「タイラクが突っ込むところは決まってるよ」
「それ、作戦じゃねぇから」
「だけどタイラクが突っ込まなけりゃ始まらないさ」
「お前らの魔法でどうにでもなるんじゃないか?」
「いやぁ、それがヤツの魔法はかなり堅くて破るのが難しそうでね」
「来たわよ」

 魔物が石の槍を突き破ってまた現れた。

「おっと、ルキアス君、また頼まれてくれたまえよ」

 ルキアスは無言で頷いて引き金を引く。何度も繰り返したから魔物が石の槍の壁を突き破る予兆が判るようになっていて、予兆が現れた段階で構えていた。
 着弾の散布界も何度も繰り返したことで徐々に狭まっている。だがこれに伴うように魔物の放つ石の槍も徐々に正面を厚くする。
 銃弾が一発毎に幾本もの石の槍をへし折ろうとも、その破壊速度を超えて石の槍が出現するのだ。
 今回も完全に防がれた。

「さあまた逃げるよ」

 魔物の魔法の範囲外への退避は魔物が出て来てからでは遅いので逐一行わなければならない。
 その途中でタイラクが尋ねる。

「さっきのでヤツの魔法を破るのが難しそうなのは判った。だがそれは俺が突っ込んだところで一緒だぜ?」
「何もタイラクに石の槍を切り開きながら突っ込めとは言わないさ」
「足止めを考えているわ。あの魔物は寒さで動きが鈍るみたいだから氷らせてみましょう」
「え? いつそれが判ったんですか?」
「わたしが足止めした時にちょっとね」

 メイナーダが足止めの魔法を放つ時は曲がり角の向こうに魔物が居る時だからルキアスからは見えていなかった。
 またこの時の足止めはむしろ魔物が他へと行かないための誘導に近く、慌ただしかった。だから見えないものに気付くのは難しかっただろう。

「そんな訳で、シャルウィちゃんに手伝って貰いましょう」
「あたしぃ!?」

 シャルウィは自分を指差して目を丸くした。
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