生活魔法は万能です

浜柔

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587 石の槍

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 石の槍の間隙を狙った弾丸は石の槍を粉砕した。

(照準、ずれた!)

 その上発射の振動を抑えられる体勢ではなかったために弾丸の行方がぶれにぶれる。幸いだったのは『傘』が目論見通りに機能したことだ。発射の度に銃床が音を立てて『傘』を打つが、『傘』を砕くような強さは無いので安心して引き金を引き続けられる。
 途中で魔物の咆吼が轟いたものの、土煙には特に変化が見られなかったので射撃を続ける。
 弾倉一つ分を撃ち終えた時には回廊は厚く土煙に覆われていた。

「ルキアス君はまだまだ精進したまえよ」

 けして上手く運んだとは言えないこの状況に、ルキアスは返す言葉も無い。
 だが反省は後だ。石の槍が出現するのに備え、逃げる準備をしてから土煙が収るのを待つ。
 変化が無いまま土煙は収った。

「……上手く行ったようだね」

 石の槍は減るどころか増えていた。魔物が重ねて魔法を放ったらしい。

「そしてこれで彼が魔法を撃とうと思えば続けて撃てることと、一〇〇弾が彼にとって脅威になることが判明したね」
「魔物にどれだけ傷を与えられたかは見えなかったから判りませんけど、一発毎に石の槍を何本も砕くのは凄かったですね!」

 ルキアスは一〇〇弾を不格好ながら連射できたことと標準弾では到底得られない威力への気持ちの高ぶりが声音に混じっていた。
 だがフヨヨンは極めて冷静だ。

「そうだね。取り敢えずまた少し離れるよ」

 フヨヨンから促がされ、一同駆け足で魔物から遠ざかるように移動する。

「ところでどうして離れたんです?」
「きっと銃弾は魔物に届いてないからだよ。直ぐに出て来るからまた撃ってくれたまえよ。時間稼ぎさ」

 ルキアスは魔物が閉じ籠もるものと予想したが、フヨヨンは再び襲って来ると予想した。
 フヨヨンが次の弾倉をルキアスに手渡す。予めかなりの数を用意していたらしい。
 ルキアスは弾倉を入れ替え、半信半疑ながら銃を構えた。
 すると殆ど間を置かずに轟く破砕音を背景にして魔物が石の槍の森から頭を覗かせた。
 ルキアスは引き金を引く。
 直後に魔物が咆吼を上げ、再び回廊を石の槍で覆った。
 ルキアスが弾丸を撃ち終えたところでフヨヨンはまた言う。

「また少し離れるよ」

 同じ手順はタイラクが合流するまで繰り返される。
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