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589 討伐
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「あたしが何をするの!?」
「シャルウィちゃんは『水魔法』が得意でしょ? だから魔物にできるだけ沢山の水を掛けてちょうだい。後はわたしがやるから」
「ええー?」
自身が『水魔法』をぶつけても魔物には何の痛痒も与えられそうにないので疑問を拭えないシャルウィである。
「具体的な手順はこうよ」
メイナーダは説明する。直線の区間でルキアスの銃撃で足止めした後、魔物が自身の石の槍を破って出て来たところにシャルウィの『水魔法』で水を浴びせ、メイナーダの『火魔法』で水を氷らせる。これで魔物が動きを止めている間にタイラクが突っ込んで斬る。
「なるほど……。でもあたしの魔法はそんなに飛ばないんだけど……」
「そこは近付いて魔法を撃ってくれたまえよ」
「ええ!? もし攻撃されたらどうしたら!?」
「その時はボクがシャルウィ君を避難させるから大船に乗ったつもりで居てくれたまえよ」
「船って乗ったことないけど……」
シャルウィはまだ不安そうにしながらも、役割を受け入れた。
そして幾度かの時間稼ぎの後で実行に適した地点にやって来た。
「次行くよ!」
フヨヨンの合図で一同が動く準備を整える。
魔物が石の槍を破ったところでルキアスが射撃する。
魔物が石の槍で自らの視界をも塞いだのを見計らってフヨヨンがシャルウィを抱き上げて前に出る。
「きゃあっ!」
自分の足で走るつもりだったシャルウィが小さく悲鳴を上げた。
「騒ぐと舌を噛むよ。それより着いたら直ぐに魔法を撃てるように準備してくれたまえよ」
「は、はひっ!」
シャルウィは噛んだ。
フヨヨンの後にはメイナーダとタイラクも続き、攻撃予定位置にて立ち止まる。
この時には既に魔物が石の槍の壁を突き破る予兆が現れていた。
「シャルウィ君、魔法だ!」
「『水魔法』!」
フヨヨン合図でシャルウィは大量の水を発するだけの魔法を放った。
メイナーダもまたシャルウィの魔法の着弾直後に自らの魔法が着弾するよう『火魔法』のアレンジ魔法を放つ。
「『冷凍』」
シャルウィの魔法の着弾はちょうど魔物が頭だけを石の槍の壁から突き出した時だった。魔物にとって予想外の魔法だったからか、全くダメージが無かったからか、魔物は魔法での防御を選択しなかった。
直後にメイナーダの魔法も着弾し、防御を怠った魔物は氷に閉ざされる。
この時にはタイラクは既に魔物の横、首を狙える位置へと進出していた。
「貰った!」
タイラクがジャンプ一発剣を振りかぶる。
だがそのタイラクを魔物の目が追った。氷を砕いてその口が開く。魔法を放つ兆しだ。
「やべ! くそっ!」
タイラクは一瞬動揺するが、直後に襲って来る石の槍を全て斬り払うべく集中力を高める。
ゴン、ゴン、ゴン、ゴン、ゴン……、ゴン。
ところが魔物の頭は魔法を放つどころか、鈍い衝突音と共に仰け反った。
原因は飛んで来た銃弾だ。
「なかなかやるじゃねぇか! なあ、ルキアス!」
タイラクは剣を振り下ろし、魔物の首を一刀の下に落とした。
「シャルウィちゃんは『水魔法』が得意でしょ? だから魔物にできるだけ沢山の水を掛けてちょうだい。後はわたしがやるから」
「ええー?」
自身が『水魔法』をぶつけても魔物には何の痛痒も与えられそうにないので疑問を拭えないシャルウィである。
「具体的な手順はこうよ」
メイナーダは説明する。直線の区間でルキアスの銃撃で足止めした後、魔物が自身の石の槍を破って出て来たところにシャルウィの『水魔法』で水を浴びせ、メイナーダの『火魔法』で水を氷らせる。これで魔物が動きを止めている間にタイラクが突っ込んで斬る。
「なるほど……。でもあたしの魔法はそんなに飛ばないんだけど……」
「そこは近付いて魔法を撃ってくれたまえよ」
「ええ!? もし攻撃されたらどうしたら!?」
「その時はボクがシャルウィ君を避難させるから大船に乗ったつもりで居てくれたまえよ」
「船って乗ったことないけど……」
シャルウィはまだ不安そうにしながらも、役割を受け入れた。
そして幾度かの時間稼ぎの後で実行に適した地点にやって来た。
「次行くよ!」
フヨヨンの合図で一同が動く準備を整える。
魔物が石の槍を破ったところでルキアスが射撃する。
魔物が石の槍で自らの視界をも塞いだのを見計らってフヨヨンがシャルウィを抱き上げて前に出る。
「きゃあっ!」
自分の足で走るつもりだったシャルウィが小さく悲鳴を上げた。
「騒ぐと舌を噛むよ。それより着いたら直ぐに魔法を撃てるように準備してくれたまえよ」
「は、はひっ!」
シャルウィは噛んだ。
フヨヨンの後にはメイナーダとタイラクも続き、攻撃予定位置にて立ち止まる。
この時には既に魔物が石の槍の壁を突き破る予兆が現れていた。
「シャルウィ君、魔法だ!」
「『水魔法』!」
フヨヨン合図でシャルウィは大量の水を発するだけの魔法を放った。
メイナーダもまたシャルウィの魔法の着弾直後に自らの魔法が着弾するよう『火魔法』のアレンジ魔法を放つ。
「『冷凍』」
シャルウィの魔法の着弾はちょうど魔物が頭だけを石の槍の壁から突き出した時だった。魔物にとって予想外の魔法だったからか、全くダメージが無かったからか、魔物は魔法での防御を選択しなかった。
直後にメイナーダの魔法も着弾し、防御を怠った魔物は氷に閉ざされる。
この時にはタイラクは既に魔物の横、首を狙える位置へと進出していた。
「貰った!」
タイラクがジャンプ一発剣を振りかぶる。
だがそのタイラクを魔物の目が追った。氷を砕いてその口が開く。魔法を放つ兆しだ。
「やべ! くそっ!」
タイラクは一瞬動揺するが、直後に襲って来る石の槍を全て斬り払うべく集中力を高める。
ゴン、ゴン、ゴン、ゴン、ゴン……、ゴン。
ところが魔物の頭は魔法を放つどころか、鈍い衝突音と共に仰け反った。
原因は飛んで来た銃弾だ。
「なかなかやるじゃねぇか! なあ、ルキアス!」
タイラクは剣を振り下ろし、魔物の首を一刀の下に落とした。
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