生活魔法は万能です

浜柔

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571 往復

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 探索は順調に進み、三階層を更新する第二六階層に達した。
 ここまでの探索は危なげなく、また地図の無い道を進む間は他の探索者と会うことも無かった。それもその筈、深層レベルの探索者は恐らくタイラク達だけなのだ。
 深層組ともなれば殆どが三十路や四十路。そんないつ能力の崖が来てもおかしくない歳になっては未知よりも見返りを求め勝ちになる。冒険するとしても旨味の少ないダンジョン浅層の探索は他人任せにして、見返りの大きい中層以降を冒険する。
 そのためここクリューのダンジョンには第五〇階層以降の情報が出回るようになった頃にぱらぱらとやって来ることだろう。前線が浅層の間は様子見だ。

「少し早いが、今日はここまでにするか」

 第二六階層に降り立ったところでタイラクは言った。

「ベクロテより魔物が強いったって、下に行くほど差が無くなって行くようだからな。このまま全員で行くこともない。明日からは二手に分かれようぜ」

 タイラクの見立てでは第八〇階層にもなれば魔物の強さがベクロテのダンジョンと大差無くなる。

「別にこのままでもいいと思うわよ?」
「お前は楽をしたいだけだろ」
「あらあらどうして判ったのかしら?」
「……どうして判らないと思った?」
「あらあら」

 メイナーダは笑って誤魔化した。
 そんなこんなで半ばタイラクが押し切る形でチーム分けすることになり、タイラク、ザネク、シャルウィのチームと、メイナーダとルキアスのチームで分かれた。こう分かれるのは分けると決まった時点で決まっていたようなものだ。
 話が纏まったところで地上へと向かう。往路で話した通りにルキアスの『傘』に乗ってだ。

「やっぱり楽ちんね」
「こう楽だと緊張感無くなるな」
「楽なのはいいけど、早過ぎない!?」
「怖ければ目を瞑ってりゃいいさ」

 天井寄りを飛ぶだけで魔物からの攻撃を受けないため、純粋に『傘』の速度での移動になる。その速さはルキアスの熟練を反映して小走りだった往路の数倍。時に一〇倍にも達する。そこまで速くなれば天井に擦りそうに見え、壁にぶつかって行くような錯覚も起こる。曲がり角の場合は錯覚ではなくぶつかる進路になるため、ビクビクし気味のシャルウィには恐ろしさも一入だ。

「きゃあああああああっ!」

 怖いが目を瞑るともっと怖いので目を開けたままでいるのだが、悲鳴を上げる口も開けたままになるのだった。
 そして第三階層までで掛かったのは約二〇分。それ以降は人が多くなったため、間違って攻撃を受けたりしないように歩いて約一〇分。都合約三〇分で地上に帰り着いた。

「明日からの往復も『傘』で頼むぜ」

 タイラクはマジ顔で言った。
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