生活魔法は万能です

浜柔

文字の大きさ
上 下
570 / 627

570 新しい武器は

しおりを挟む
 第二三階層まではシャルウィとザネクが交互に魔石を回収しながら進む。小走りのタイラクに遅れるようなら魔石を諦めて進むので然程の遅滞は起きない。
 各階段は最短ルートを通れば意外に近く、第二三階層には二時間程で到着した。途中に出現する魔物はもっと上の階層と代わり映えしない。爬虫類や両生類の類の姿のものばかりだ。

「思ったより早かった……」
「そうね。だけどこれ以上先に進むなら途中の魔石は全部捨てた方がいいわ」

 ルキアスの呟きにはメイナーダが答えた。その答えを聞いてルキアスも一つ頷く。
 ここまで行き掛けの駄賃とばかりに魔石を回収していたが、もっと深い階層に行くなら魔石を見捨てて休み無く駆け足するくらいでなければ難しい。
 ただこれはルキアス、ザネク、それにシャルウィの足での話だ。タイラクとメイナーダだけなら第二三階層までを魔石を回収しながらでも一時間と掛からず駆け抜けて来れるだろうし、この先のかなり深い階層まで日帰りできるだろう。

「だけど魔石を捨てるなら、ルキアスちゃんの『傘』でもっと早く来れるんじゃないかしら」
「……試してみた方がいいんでしょうか?」
「そうね。今日の帰りなんてどうかしら。タイラクはどう?」
「いいんじゃないか? 『傘』でのんびりも悪くない」
「そう言うことで決まりね」
「はい」

 帰りをどうするかを決めても探索はこれからだ。
 タイラクは道中にルキアスが作ったナイフを手に持った。

「新しい武器は試してみないとな!」

 ノリノリだ。
 早速出て来た魔物に近寄ると、魔物の攻撃を軽く躱してその胸元にナイフを突き入れる。軽く捻りながらナイフを引き抜くと、ピンと音を立てて何かがルキアスの許まで飛んだ。

「魔石!?」

 ルキアスが受け止めると取れ立ての魔石だった。

「どうやったの!?」
「ナイフの背に載せるようにしてちょちょっとな」

 シャルウィの問いともつかない声にタイラクは嬉しそうに答えた。

「まあ、切れ味のいいナイフじゃなけりゃこうはならないけどな。ルキアス、このナイフ気に入ったぜ」

 タイラクはまた魔物に向かうと、先と同じように魔石を弾き、今度はシャルウィへと飛ばした。

「する事無くなっちゃったわ」
「楽しんでるんだからさせておけばいいわ」

 小さく頭を振るシャルウィにメイナーダが苦笑しつつ言った。

「あのアダマントの剣はこの辺りの魔物相手じゃ過剰だったもの」

 ベクロテのダンジョンで換算するなら第五〇階層レベルの魔物でもタイラクには取るに足らない魔物なのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

処理中です...