生活魔法は万能です

浜柔

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531 一纏めに

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 翌日。ルキアス、ザネク、シャルウィの三人はルキアスの『傘』の検証から始めた。前日も一度『傘』で魔物を防いだが、一種類に一回のみだったため、継続的にどうかや他の種類にどうかは軽々に判断できない。
 検証方法は単純だ。『大盾』で守られた中から外の魔物を『傘』を被せる。内側から壊されなければ外から壊されることも無い。

「ルキアスの『傘』は凄いとは思っていたが、危なげなさ過ぎてビビるぜ。また硬くなってないか?」
「ほんと、あの魔物ったら閉じ込められてパニック起こしてるじゃない」
「誰だって練習したらこのくらいできるよ!」
「まあ、どんだけ練習したらいいかっつーことだがな」
「……そ、それよりザネクが『傘』を『大盾』と一緒に出せるかも試してみない?」
「それもそうだな。『大盾』の前に試してみるか」

 三人は念のためルキアスの『傘』に乗って天井近くまで上がり、ザネクは『大盾』を出したまま『傘』を差す。

「『大盾』が弱体化する感覚は無いな。ただ動かせるのは『傘』と『大盾』のどっちかだけだ。片方を動かすともう片方が疎かになっちまう」
「二つの事を考えるようなものだからそう言うものじゃないの?」
「ぼくもそう思う。ぼくも『鏡』とか『ランプ』とか沢山出してても一纏めに惰性で動かしてるだけだし」
「一纏めってのがよく判らないんだが」
「あ、それはね……、例えば『鏡』をこう五つ並べて、こんな風に動かす時……」

 ルキアスは細長い『鏡』を横一直線に並べ、波打たせるように動かしてみせる。

「『鏡』一つ一つを動かそうってするんじゃなくて、五つが一本の紐で繋ったイメージで波のように動かすんだよ。ほら、紐の端を持って上下に振ると波打つでしょ? あんな感じ」
「おお……、それであんなに色々魔法を使っても大丈夫だったのか」
「どっちかと言うと、沢山魔法を使ってたらできるようになったかな」
「どんだけ練習したんだかな……」

 ザネクは呆れ半分感嘆半分で言った。

「まあ、俺ももう少し頑張るか……」

 今は『大盾』使用中に『傘』も差そうとすると『大盾』をうっかり消してしまう懸念があるので使わないようにしている。気にせず『傘』を差せるようになったら戦術の幅が広がる筈だ。
 『大盾』を丸める検証もまたルキアスの『傘』に乗ったまま行う。そして丸めることは可能だったが、『傘』が完全に閉じられないのと同じように必ず隙間が出来ることも判明した。

「どうしても動きが遅くなるから隙間狙われたらヤバいよな」

 尺取り虫のように伸ばしたり縮ませたりしながら動けば若干速く動けるが、遅いことに変わりない。その上伸ばしたり縮めたりは魔力を余分に食うようで、得られる効果に比べて無駄に疲労するようだ。

「『傘』と組み合わせたらどう?」

 『大盾』の隙間を『傘』で補ったらどうかと言うシャルウィの提案だ。

「……それもありか。それでもやっぱりまだまだ『傘』を練習しなきゃならないがな」

 いずれにしてもザネクが当面する事は同じであった。
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