生活魔法は万能です

浜柔

文字の大きさ
上 下
530 / 627

530 続けるのか?

しおりを挟む
 ルキアス達が入口付近で魔物と戦っている間にタイラク達深層組が何をしていたかと言えば、第一階層奥のを探索だ。その深層組がルキアス達が引き上げようとしたところにちょうど戻って来た。『大盾』の向こうの魔物があっと言う間に片付けられる。

「よう、お前達はまだ続けるのか?」
「ちょうど帰ろうと思っていたところです」
「そっか。それじゃちょうど『大盾』が出てることだし、消す前にちょっと試させてくれねぇか?」
「?」

 タイラクはルキアスの答えに相槌を打つと、ザネクに頼んだ。無論ザネクには何の事だか判らない。ザネクが首を傾げていると、タイラクが安物の剣を取り出した。

「『大盾』がどの程度のものか知りたいんでな。こいつでちょいと殴らせてくれや」
「おう?」

 ザネクは疑問符を残しながらも了承し、ルキアス、シャルウィと共に脇に避ける。

「いいぜ」
「おっしゃ!」

 タイラクは剣を上段に構えて振り下ろす。するとギャンと甲高い音を立てて剣が折れ飛んだ。

「おー、『大盾』ってのはなかなか頼りになるな」
「あの、でも、何で急に?」
「そりゃあな、ルキアス達が自分で自分を守れるなら奥の探索に連れて行ってもいいかと思ってな」
「あー、気にしないでくれたまえよ。タイラクはマッピングをしたくなくてルキアス君達に押し付けようとしているだけだからね」
「おい、フヨヨン!」
「何だい? 何か違ったと言うのかい?」
「ち……違うに決まってるだろ。俺はぁルキアス達の今後のだな、成長のためにだな……」
「しどろもどろね。タイラク、ださいわよ」

 メイナーダにまでツッコまれてタイラクは渋面で沈黙した。

「マッピング……」

 ルキアス、ザネク、シャルウィの三人は目配せした後、タイラクに「ちょっと待ってください」と言って壁際に行き、うんこ座りでヒソヒソと話し合う。

「どう思う?」
「マッピングはどうせ奥の探索をする時にはやるんだから、押し付けられるったって悪い話じゃないぞ」
「だけど自力じゃ逃げることもできないのは怖いわよ」
「『大盾』ってもっと曲げられない? いっそ周りを全部囲むくらいに。そうしたら歩くのが遅くても安全になるから」
「それならルキアスの『傘』の方が確実じゃないか? この階層の魔物なら堪えられるだろ」
「それは試してみないと……」
「試してみなけりゃってのは俺もだ」
「……先に検証が必要だね」
「今はまだ見送りだな」
「じゃあ、暫くは今日みたいなのを続けるのね? あたしも先にもっと魔法の練習をしたいわ。できれば一人で倒せるくらいには」
「うん。暫くこのままだね」
「だな」

 ヒソヒソ話し始めたものの、結論辺りになると普通の声になっていて深層組にも丸聞こえだった。
 そして深層組は改めてルキアス達が話す結論を苦笑いを噛み殺しながら聞いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと

Debby
ファンタジー
【完結まで投稿済みです】 山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。 好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリスト。 やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。 転移先の条件としては『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。 そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。 更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。 これにはちゃんとした理由がある。必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ない。 もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。 ──そして本当に転移してしまった星良は、頼もしい仲間(レアアイテムとモフモフと細マッチョ?)と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。 いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。 理想通りだったり思っていたのとちょっと違ったりするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。 あなたが異世界転移するなら、リストに何を書きますか? ---------- 覗いて下さり、ありがとうございます! 10時19時投稿、全話予約投稿済みです。 5話くらいから話が動き出します。 ✳(お読み下されば何のマークかはすぐに分かると思いますが)5話から出てくる話のタイトルの★は気にしないでください

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

処理中です...