生活魔法は万能です

浜柔

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530 続けるのか?

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 ルキアス達が入口付近で魔物と戦っている間にタイラク達深層組が何をしていたかと言えば、第一階層奥のを探索だ。その深層組がルキアス達が引き上げようとしたところにちょうど戻って来た。『大盾』の向こうの魔物があっと言う間に片付けられる。

「よう、お前達はまだ続けるのか?」
「ちょうど帰ろうと思っていたところです」
「そっか。それじゃちょうど『大盾』が出てることだし、消す前にちょっと試させてくれねぇか?」
「?」

 タイラクはルキアスの答えに相槌を打つと、ザネクに頼んだ。無論ザネクには何の事だか判らない。ザネクが首を傾げていると、タイラクが安物の剣を取り出した。

「『大盾』がどの程度のものか知りたいんでな。こいつでちょいと殴らせてくれや」
「おう?」

 ザネクは疑問符を残しながらも了承し、ルキアス、シャルウィと共に脇に避ける。

「いいぜ」
「おっしゃ!」

 タイラクは剣を上段に構えて振り下ろす。するとギャンと甲高い音を立てて剣が折れ飛んだ。

「おー、『大盾』ってのはなかなか頼りになるな」
「あの、でも、何で急に?」
「そりゃあな、ルキアス達が自分で自分を守れるなら奥の探索に連れて行ってもいいかと思ってな」
「あー、気にしないでくれたまえよ。タイラクはマッピングをしたくなくてルキアス君達に押し付けようとしているだけだからね」
「おい、フヨヨン!」
「何だい? 何か違ったと言うのかい?」
「ち……違うに決まってるだろ。俺はぁルキアス達の今後のだな、成長のためにだな……」
「しどろもどろね。タイラク、ださいわよ」

 メイナーダにまでツッコまれてタイラクは渋面で沈黙した。

「マッピング……」

 ルキアス、ザネク、シャルウィの三人は目配せした後、タイラクに「ちょっと待ってください」と言って壁際に行き、うんこ座りでヒソヒソと話し合う。

「どう思う?」
「マッピングはどうせ奥の探索をする時にはやるんだから、押し付けられるったって悪い話じゃないぞ」
「だけど自力じゃ逃げることもできないのは怖いわよ」
「『大盾』ってもっと曲げられない? いっそ周りを全部囲むくらいに。そうしたら歩くのが遅くても安全になるから」
「それならルキアスの『傘』の方が確実じゃないか? この階層の魔物なら堪えられるだろ」
「それは試してみないと……」
「試してみなけりゃってのは俺もだ」
「……先に検証が必要だね」
「今はまだ見送りだな」
「じゃあ、暫くは今日みたいなのを続けるのね? あたしも先にもっと魔法の練習をしたいわ。できれば一人で倒せるくらいには」
「うん。暫くこのままだね」
「だな」

 ヒソヒソ話し始めたものの、結論辺りになると普通の声になっていて深層組にも丸聞こえだった。
 そして深層組は改めてルキアス達が話す結論を苦笑いを噛み殺しながら聞いた。
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