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509 変な波
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職人達の多くは呆然と巨大怪魚が跳んだ空を見詰めた。
「さすがにあんなのが居たんじゃ工事できねぇぞ」
ドーズはこれくらいではフリーズしないらしい。
ルキアスもダンジョンの深層でリザード先生などを間近に見たためか、驚きはしても思考停止には陥っていない。
「とにかくぼくは様子を見に行って来ますから、下ろしますよ!」
ルキアスは未だ『傘』から降りおらず、まるで動こうともしない職人達を強制的に下ろすべく、『傘』を可能な限り平らにしてゆっくり下げる。
「ちょっと待った! 変な波が来る! 上だ! 岸から離れろ!」
ずっと怪魚が跳んだ方を見ていたポルクスが鋭く叫んだ。彼は動かなかっただけでフリーズしていなかったらしい。
ルキアスはその警告に順って、半ば反射的に『傘』を上昇させる。
ドーズはまごついているシャルウィを担いで走る。ドーズだって男の子……、いや、おっさん。助けるなら女の子だ。
変な波、即ち津波が湿地林の合間を縫って押し寄せて来る。
ドーズに出遅れた職人達も逃げ始めるが、膝くらいの波高なためか、間に合わなくても良いくらいの暢気さだ。
だが津波に巻き込まれた時点で後悔したようだ。
「うわっ!」
「脚が!」
水の勢いで脚が思うように動かせない。流されないようにするので精一杯。歩こうにも歩けやしない。
「掴まって!」
ルキアスが職人達そ傍に『傘』を降下させた。ある職人は『傘』に掴まり、ある職人は『傘』に乗った職人の伸ばした手に掴まって難を逃れるが、『傘』に全員の手が届くものでもない。
「た! 助けてくれ!」
だが手の届かない職人を助けようとして『傘』を横に動かせば、今『傘』に掴まっている職人を振り落としかねない。掴まっている職人を引っ張り上げようにも流れる水に脚を掠われそうになっている相手では難しそうだ。
「『傘』を上げます! ぶら下がれそうにない人に手を貸してやってください!」
ルキアスは『傘』を上昇させることにした。『傘』にぶら下がるだけなら彼らも少しは保つだろう。
職人達もこれに同意した。
「行きます! 少し頑張っててください!」
ルキアスは波が凪いだ瞬間を狙って『傘』を上昇させた。そして水辺から少し離れた小高い場所へと移動、職人達を下ろす。
しかしその間に取り残された職人が転倒、波に掠われた。
「下ろして!」
シャルウィがドーズの肩から飛び降りる。
「『水よ』!」
シャルウィは水に手を浸けて『水魔法』を発動した。
するとシャルウィの手が触れた場所から水が分かれ、地面が露出。その露出箇所が真っ直ぐ伸びるようにして、波に掠われた職人が露わになった。
「誰か、早く! 長くは保たないから!」
シャルウィの声に応えるようにドーズが走る。ルキアスも飛んだ。
シャルウィがめまいを起こして魔法が途切れたのは、ドーズが職人を抱えてジャンプ一発、ルキアスの『傘』に跳び乗るのと同時だった。
「さすがにあんなのが居たんじゃ工事できねぇぞ」
ドーズはこれくらいではフリーズしないらしい。
ルキアスもダンジョンの深層でリザード先生などを間近に見たためか、驚きはしても思考停止には陥っていない。
「とにかくぼくは様子を見に行って来ますから、下ろしますよ!」
ルキアスは未だ『傘』から降りおらず、まるで動こうともしない職人達を強制的に下ろすべく、『傘』を可能な限り平らにしてゆっくり下げる。
「ちょっと待った! 変な波が来る! 上だ! 岸から離れろ!」
ずっと怪魚が跳んだ方を見ていたポルクスが鋭く叫んだ。彼は動かなかっただけでフリーズしていなかったらしい。
ルキアスはその警告に順って、半ば反射的に『傘』を上昇させる。
ドーズはまごついているシャルウィを担いで走る。ドーズだって男の子……、いや、おっさん。助けるなら女の子だ。
変な波、即ち津波が湿地林の合間を縫って押し寄せて来る。
ドーズに出遅れた職人達も逃げ始めるが、膝くらいの波高なためか、間に合わなくても良いくらいの暢気さだ。
だが津波に巻き込まれた時点で後悔したようだ。
「うわっ!」
「脚が!」
水の勢いで脚が思うように動かせない。流されないようにするので精一杯。歩こうにも歩けやしない。
「掴まって!」
ルキアスが職人達そ傍に『傘』を降下させた。ある職人は『傘』に掴まり、ある職人は『傘』に乗った職人の伸ばした手に掴まって難を逃れるが、『傘』に全員の手が届くものでもない。
「た! 助けてくれ!」
だが手の届かない職人を助けようとして『傘』を横に動かせば、今『傘』に掴まっている職人を振り落としかねない。掴まっている職人を引っ張り上げようにも流れる水に脚を掠われそうになっている相手では難しそうだ。
「『傘』を上げます! ぶら下がれそうにない人に手を貸してやってください!」
ルキアスは『傘』を上昇させることにした。『傘』にぶら下がるだけなら彼らも少しは保つだろう。
職人達もこれに同意した。
「行きます! 少し頑張っててください!」
ルキアスは波が凪いだ瞬間を狙って『傘』を上昇させた。そして水辺から少し離れた小高い場所へと移動、職人達を下ろす。
しかしその間に取り残された職人が転倒、波に掠われた。
「下ろして!」
シャルウィがドーズの肩から飛び降りる。
「『水よ』!」
シャルウィは水に手を浸けて『水魔法』を発動した。
するとシャルウィの手が触れた場所から水が分かれ、地面が露出。その露出箇所が真っ直ぐ伸びるようにして、波に掠われた職人が露わになった。
「誰か、早く! 長くは保たないから!」
シャルウィの声に応えるようにドーズが走る。ルキアスも飛んだ。
シャルウィがめまいを起こして魔法が途切れたのは、ドーズが職人を抱えてジャンプ一発、ルキアスの『傘』に跳び乗るのと同時だった。
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