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405 備え
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目前に迫った魔物は倒せた。だがこれが終わりではない。魔物の大発生は始まったばかりなのだ。魔石の回収さえもどかしく、魔物に対する備えを先にする。
ルキアスがするのは『鏡』でのカモフラージュのやり直し。今度は隠れている袋小路だけでなく向こう三軒両隣、意味は違うがそんな感じで計六枚を張った。先は魔物に興味を持たれたせいで簡単に見付けられたから、ダミーの『鏡』を置くことでその確率を減らす。
「ルキアスくんは『鏡』も凄いわ……ね」
リュミアがルキアスに『鏡』でのカモフラージュを頼んだのはそれができると踏んでのことだ。しかしそれを六枚まで出せるとは思わなかったらしい。
「『鏡』もいつも使ってるから……」
「そうなのでしょう……ね」
魔法の習熟度はそれぞれで上げる必要がある。リュミアもルキアス並に『鏡』を使い続ければ同じ事ができるようになるだろう。だがそのための時間を捻出するのが難しい。魔法が攻撃手段だから探索中には魔力を不用意に使えない。つまりは探索している時間を勘定に入れられない。
「今のところ魔物は近くに見当たりません」
エリリースは風魔法で索敵を行っていたようだ。
だがルキアスはエリリースにそれができることを知らなかった。だからエリリースにいつそんな事ができるようになったかを尋ねると、ルキアスがソロ活動をしている間にと言う。「それはそうだ」と納得するしかないルキアスだ。
それからはただ待つ時間。魔物に気取られてはいけないので会話も少なく、静かな時間が過ぎる。
そして時間が過ぎれば痺れも切れる。
「意外に魔物は来ないもんだな。ここに籠もってないで上に上がってみるか?」
「魔物が来ないのは入口から少し離れているからじゃないかな? 魔物は螺旋回廊に集まる筈だから、行くのは危険だと思う」
「そりゃそうだが、こうじっとしてるのもな……」
「それにしても大発生は今どうなってるのでしょう?」
「うーん。メイナーダさんを待つしかないかな……」
「シッ! 来た……わ」
噂をすれば影とばかりに魔物が近付いて来た。
魔物は『鏡』に挟まれた場所まで来ると、左右を気にして咆哮一発、『鏡』に頭から突進した。
ルキアスがするのは『鏡』でのカモフラージュのやり直し。今度は隠れている袋小路だけでなく向こう三軒両隣、意味は違うがそんな感じで計六枚を張った。先は魔物に興味を持たれたせいで簡単に見付けられたから、ダミーの『鏡』を置くことでその確率を減らす。
「ルキアスくんは『鏡』も凄いわ……ね」
リュミアがルキアスに『鏡』でのカモフラージュを頼んだのはそれができると踏んでのことだ。しかしそれを六枚まで出せるとは思わなかったらしい。
「『鏡』もいつも使ってるから……」
「そうなのでしょう……ね」
魔法の習熟度はそれぞれで上げる必要がある。リュミアもルキアス並に『鏡』を使い続ければ同じ事ができるようになるだろう。だがそのための時間を捻出するのが難しい。魔法が攻撃手段だから探索中には魔力を不用意に使えない。つまりは探索している時間を勘定に入れられない。
「今のところ魔物は近くに見当たりません」
エリリースは風魔法で索敵を行っていたようだ。
だがルキアスはエリリースにそれができることを知らなかった。だからエリリースにいつそんな事ができるようになったかを尋ねると、ルキアスがソロ活動をしている間にと言う。「それはそうだ」と納得するしかないルキアスだ。
それからはただ待つ時間。魔物に気取られてはいけないので会話も少なく、静かな時間が過ぎる。
そして時間が過ぎれば痺れも切れる。
「意外に魔物は来ないもんだな。ここに籠もってないで上に上がってみるか?」
「魔物が来ないのは入口から少し離れているからじゃないかな? 魔物は螺旋回廊に集まる筈だから、行くのは危険だと思う」
「そりゃそうだが、こうじっとしてるのもな……」
「それにしても大発生は今どうなってるのでしょう?」
「うーん。メイナーダさんを待つしかないかな……」
「シッ! 来た……わ」
噂をすれば影とばかりに魔物が近付いて来た。
魔物は『鏡』に挟まれた場所まで来ると、左右を気にして咆哮一発、『鏡』に頭から突進した。
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