生活魔法は万能です

浜柔

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406 迎撃

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 魔物が突進したのは向こう側左の『鏡』。『鏡』は砕かれるが、その先は無論壁だ。壁に激突した魔物が悶絶する。
 ルキアスはすかさず『鏡』を張り直した。
 魔物が頭を起こし、『鏡』に映った自分を睨む。そしてまた『鏡』に向け、より激しく突進した。『鏡』が砕け、壁に激突した魔物がのたうち回って悶絶する。
 ルキアスはまたすかさず『鏡』を張り直した。
 魔物は前後不覚に陥ったのだろう。悶絶する間に回れ右しているのに気付かない様子で左を向く。
 そこはルキアス達の潜む袋小路だ。エリリースが小さく上げ掛けた悲鳴を呑み込んだ。
 そして魔物がまた『鏡』へ突進する。

『大盾』

 ルキアスの『鏡』の裏に沿わせるようにザネクが『大盾』を展開すると、魔物は弾き返されて悶絶した。
 ルキアスは魔物が立ち直る前にまた『鏡』を張り直す。するとまた魔物は別の『鏡』へと突進して壁に激突する。
 そうして幾度か目、魔物はついに動かなくなった。

「死んだ?」
「いや、止めが必要だ」

 ザネクは『大盾』を消し、剣を抜いて駆けて行く。

「ザネク、待って!」

 リュミアの呼び掛けも空しく、ザネクは魔物の首筋に剣を突き立てた。
 ところが剣は鈍い音を立てるだけで突き刺さらない。その上直後に魔物が動いた。攻撃を受ければ瀕死であっても反応する。その前足を大きく振り回してザネクを払う。

「『傘』!」

 魔物の動きは緩慢に見えても足の先だけなら高速だ。ザネクは辛うじて『傘』を展開するが、巨体から生み出される衝撃はザネクの『傘』を打ち砕いてザネクを弾き飛ばした。『大盾』なら防げたに違いない。日頃『傘』を使っていた弊害だ。もんどり打ってダンジョンの壁へと飛ばされる。

「『エアクッション』」

 そんなザネクをリュミアの魔法が受け止め、致命的な打撃を受けるのを避けられた。

「た、助かったぜ……」

 冷や汗を掻きながらザネクは呟いた。

「ザネクはお説教……ね」

 リュミアのこの言葉にザネクの冷や汗が一段と濃くなるが、リュミアは先に魔物に止めを刺した。

「それではザネク……」
「あ、あの! お昼にしませんこと!?」

 小さくなっているザネクにリュミアが説教を始めそうな気配を察したエリリースは咄嗟に提案した。

「そ、そうだね! ぼくもお腹減ったよ!」

 ルキアスも乗った。
 リュミアは二人をじとっと見るが、直ぐに表情を緩ませる。

「二人に免じてお昼にしましょう……か」

 ザネクはほっとした表情を見せるが、リュミアに「ザネクのお説教は後で……ね」と付け加えられた顔を引き攣らせた。
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