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ルキアスから見えるのだから、近場から見ている人にはもっと容易く見える。
「子供だ! 女の子が取り残されてるぞ!」
「助けはまだなの!?」
遠くの誰かの叫び声はルキアスの耳にも届いた。
火事が起きてから間が無いのだろう。消防隊は活動準備に入ったばかりの様子だ。だがもし仮に消火活動を始めていても建物内の経路は火に阻まれそうで、外から救出するには何らかの魔法が必要だろう。そして外から救出する手段を持ち合わせている人員はどうやら不在と思われる。もし居るなら直ぐにでも救出に向かっている筈だ。
(このままじゃ間に合わないかも……)
消火するにも時間が掛かる。今から別の人を呼んで来るにも時間が掛かる。
(ぼくなら……、行こう!)
僅かな躊躇いの後、ルキアスは決心した。
「『傘』!」
走っていては間に合わなくなりそうなので端から『傘』だ。『傘』を大きめに差し、素速く乗り込んで空へと上がる。ルキアスが飛ぶのに気付いた人々からどよめきが起きるが構わず加速。急加速でガクンと後方に引っ張られるのを堪えつつ更に加速する。
出火現場の近くともなれば野次馬も多い。指差されて声を上げられたりと、注目されもする。これには少々居たたまれない気持ちにさせられるルキアスだがじっと我慢だ。ここで注目を浴びる羞恥心で狼狽えては助けられるものも助けられなくなってしまう。
「ママーっ! 助けてーっ!」
女の子が叫ぶ声が聞こえる。『傘』を減速させ、女の子が顔を覗かせる窓へと寄せる。窓下へとピッタリ寄せて手を伸ばす。
「こっちへ早く!」
ところが女の子はイヤイヤと頭を振る。更には室内に振り返って叫ぶ。
「ママーっ! ママーっ! 助けてーっ!」
ルキアスは違和感を持った。だが室内は煙のためか、昼なのに暗く、見通しが悪い。
「『ランプ』!」
室内に『ランプ』を飛ばす。すると窓から少し離れた場所で『ランプ』の光に照らされた倒れている人の手が見えた。
女性の手のようだ。考えられるのはその手の主が女の子の母親。
(ママに助けを求めてたんじゃなかったんだ!)
女の子は言葉が覚束なくて単語の羅列になっていたのだろう。「ママを助けて」と言いたかったのだ。
ルキアスは窓から女の子を退かすのももどかしく、直ぐさま女の子を抱えるようにしながら室内へと入り込む。
「ちょっと待っててね。直ぐ助けるから」
女の子に言うが早いか、ルキアスは女の子を床に下ろして倒れている人へと駆け寄った。
倒れていたのは見えた通りに女性だ。間違いなく女の子の母親だろう。煙に巻かれて気を失ったらしい。
ルキアスは女性を抱え上げた。ところが女性が思いの外軽かった。
「うわっ!」
勢い余って投げ飛ばしそうになるのを懸命に堪える。
(女の人ってこんなに軽いんだ!?)
奇妙な感想を抱くルキアスだが、驚いてばかりもいられない。室内の更に奥、廊下側、煙の隙間からオレンジ色がちろちろしているのが見える。急いで窓へと駆け寄りつつ女性を左腕だけで抱え直し、女の子を右腕に抱え上げて『傘』へとダイブする。
だがその直後、激しい爆発音と共に窓から爆炎が噴き出してルキアス達を乗せた『傘』を包み込んだ。
「子供だ! 女の子が取り残されてるぞ!」
「助けはまだなの!?」
遠くの誰かの叫び声はルキアスの耳にも届いた。
火事が起きてから間が無いのだろう。消防隊は活動準備に入ったばかりの様子だ。だがもし仮に消火活動を始めていても建物内の経路は火に阻まれそうで、外から救出するには何らかの魔法が必要だろう。そして外から救出する手段を持ち合わせている人員はどうやら不在と思われる。もし居るなら直ぐにでも救出に向かっている筈だ。
(このままじゃ間に合わないかも……)
消火するにも時間が掛かる。今から別の人を呼んで来るにも時間が掛かる。
(ぼくなら……、行こう!)
僅かな躊躇いの後、ルキアスは決心した。
「『傘』!」
走っていては間に合わなくなりそうなので端から『傘』だ。『傘』を大きめに差し、素速く乗り込んで空へと上がる。ルキアスが飛ぶのに気付いた人々からどよめきが起きるが構わず加速。急加速でガクンと後方に引っ張られるのを堪えつつ更に加速する。
出火現場の近くともなれば野次馬も多い。指差されて声を上げられたりと、注目されもする。これには少々居たたまれない気持ちにさせられるルキアスだがじっと我慢だ。ここで注目を浴びる羞恥心で狼狽えては助けられるものも助けられなくなってしまう。
「ママーっ! 助けてーっ!」
女の子が叫ぶ声が聞こえる。『傘』を減速させ、女の子が顔を覗かせる窓へと寄せる。窓下へとピッタリ寄せて手を伸ばす。
「こっちへ早く!」
ところが女の子はイヤイヤと頭を振る。更には室内に振り返って叫ぶ。
「ママーっ! ママーっ! 助けてーっ!」
ルキアスは違和感を持った。だが室内は煙のためか、昼なのに暗く、見通しが悪い。
「『ランプ』!」
室内に『ランプ』を飛ばす。すると窓から少し離れた場所で『ランプ』の光に照らされた倒れている人の手が見えた。
女性の手のようだ。考えられるのはその手の主が女の子の母親。
(ママに助けを求めてたんじゃなかったんだ!)
女の子は言葉が覚束なくて単語の羅列になっていたのだろう。「ママを助けて」と言いたかったのだ。
ルキアスは窓から女の子を退かすのももどかしく、直ぐさま女の子を抱えるようにしながら室内へと入り込む。
「ちょっと待っててね。直ぐ助けるから」
女の子に言うが早いか、ルキアスは女の子を床に下ろして倒れている人へと駆け寄った。
倒れていたのは見えた通りに女性だ。間違いなく女の子の母親だろう。煙に巻かれて気を失ったらしい。
ルキアスは女性を抱え上げた。ところが女性が思いの外軽かった。
「うわっ!」
勢い余って投げ飛ばしそうになるのを懸命に堪える。
(女の人ってこんなに軽いんだ!?)
奇妙な感想を抱くルキアスだが、驚いてばかりもいられない。室内の更に奥、廊下側、煙の隙間からオレンジ色がちろちろしているのが見える。急いで窓へと駆け寄りつつ女性を左腕だけで抱え直し、女の子を右腕に抱え上げて『傘』へとダイブする。
だがその直後、激しい爆発音と共に窓から爆炎が噴き出してルキアス達を乗せた『傘』を包み込んだ。
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