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このナファーと言う店で主に扱われているのは日用雑貨だが、それ以外にも家具や寝具などが陳列されている。
ルキアスは店内をざっと一通り見て歩いた後で家具売場へと向かった。目的であるクッションがソファーに置かれて陳列されていたのを見掛けたからで、手掛かりとしてそこを求めた。
改めてソファー周辺を見回せば、クッションも幾らかは陳列されている。しかし店の規模に比べれば申し訳程度の数でしかなく、値段も高すぎるように思われた。
ルキアスは別を探すことにした。クッションは枕に似ているので寝具売場の方にも足を運ぶ。
(あった! こっちのは手頃だ。けど……)
予想通り枕と隣り合わせるように並べられたクッションはソファー近くにあった品よりお手頃価格だ。それでも四桁ダール後半が目安で、貧乏性のルキアスにはそうそう手が出せない。服を買ったばかりだから余計に痛く感じる。
(毛布で間に合わせちゃおうか……?)
そんな日和った考えが浮かぶ。ところが念のために毛布の値段を調べてみればクッションよりも高い。もしも何かの都合で駄目にしてしまったら毛布の方が痛手だ。
だが万一にも膝を痛めるようなことになったら数千ダールでは済まないのだ。
(買う……しかなないな)
ルキアスは悩んだ末に八〇〇〇ダールのクッションを選んで買った。店内での『収納』などの使用は禁止されていて、もしも使えば即座に警察に連行されると言う。無論そうなっては堪らないので外に出てから『収納』する。手で持ち運べないような品物の場合は引き渡し所まで店員に台車運んで貰って受け取るか、配達して貰うらしい。
ルキアスの帰り道の足取りは幾分軽やかだ。懐には少々ダメージを負ったが、欲しくて買った買い物の後と言うのは知らず知らず心が癒されもすれば躍りもする。
ところがそんなルキアスの気分を引き裂くように、通りの向こうでいきなりサイレンの音が鳴り響き、喧騒が湧き起こった。
(え!? 何!?)
事態を掴めずに周囲を見回せば、多くの人が同じ方向を見詰めている。
ルキアスがこれに気付くとほぼ同時に叫び声も飛んで来た。
「火事だーっ!」
見れば人々が見詰める向こうで煙が出ている。『望遠』で拡大して見れば、四階建ての建物のようだ。火がチラチラ見え隠れする。
「誰か取り残されてるんだってよ」
誰かのそんな話が気になり、ルキアスが更に『望遠』で寄ると、四階の煙が噴き出す窓から子供が頭を突き出して叫んでいた。
ルキアスは店内をざっと一通り見て歩いた後で家具売場へと向かった。目的であるクッションがソファーに置かれて陳列されていたのを見掛けたからで、手掛かりとしてそこを求めた。
改めてソファー周辺を見回せば、クッションも幾らかは陳列されている。しかし店の規模に比べれば申し訳程度の数でしかなく、値段も高すぎるように思われた。
ルキアスは別を探すことにした。クッションは枕に似ているので寝具売場の方にも足を運ぶ。
(あった! こっちのは手頃だ。けど……)
予想通り枕と隣り合わせるように並べられたクッションはソファー近くにあった品よりお手頃価格だ。それでも四桁ダール後半が目安で、貧乏性のルキアスにはそうそう手が出せない。服を買ったばかりだから余計に痛く感じる。
(毛布で間に合わせちゃおうか……?)
そんな日和った考えが浮かぶ。ところが念のために毛布の値段を調べてみればクッションよりも高い。もしも何かの都合で駄目にしてしまったら毛布の方が痛手だ。
だが万一にも膝を痛めるようなことになったら数千ダールでは済まないのだ。
(買う……しかなないな)
ルキアスは悩んだ末に八〇〇〇ダールのクッションを選んで買った。店内での『収納』などの使用は禁止されていて、もしも使えば即座に警察に連行されると言う。無論そうなっては堪らないので外に出てから『収納』する。手で持ち運べないような品物の場合は引き渡し所まで店員に台車運んで貰って受け取るか、配達して貰うらしい。
ルキアスの帰り道の足取りは幾分軽やかだ。懐には少々ダメージを負ったが、欲しくて買った買い物の後と言うのは知らず知らず心が癒されもすれば躍りもする。
ところがそんなルキアスの気分を引き裂くように、通りの向こうでいきなりサイレンの音が鳴り響き、喧騒が湧き起こった。
(え!? 何!?)
事態を掴めずに周囲を見回せば、多くの人が同じ方向を見詰めている。
ルキアスがこれに気付くとほぼ同時に叫び声も飛んで来た。
「火事だーっ!」
見れば人々が見詰める向こうで煙が出ている。『望遠』で拡大して見れば、四階建ての建物のようだ。火がチラチラ見え隠れする。
「誰か取り残されてるんだってよ」
誰かのそんな話が気になり、ルキアスが更に『望遠』で寄ると、四階の煙が噴き出す窓から子供が頭を突き出して叫んでいた。
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