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300 覗いてみるのは
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ルキアス達は螺旋回廊の出口から少し離れた。第五階層までは戻らない。余分に時間が掛かり、状況も掴みにくくなるためだ。
料理はロマが有り合わせの手持ちで用意した。それでもパンにスープ、ハムと、夕食には少々頼りないが、空腹を満たすには十分なものがある。ロマはいざと言う時の用意をいつもしているらしい。余りがちなパンは乾かして砕いて揚げ物の衣に使ったり、小さく切って揚げてスープのトッピングにすると言う。
そうして腹ごしらえして一息入れた一同はこれからどう動くかを考える。
「どうする? 覗いてみるのは第四階層だけにしとくか?」
口火を切ったのはザネクだ。第四階層を見るだけなら螺旋回廊の出口に行くだけで良い。魔物が降りて来る気配が無いので、歩いて行くだけでも良さそうだ。
それとももっと上まで行ってみるか。そうなるとルキアスの『傘』が必須になるのでルキアスの意向が重要だ。だからザネクはルキアスに尋ねたのだが、ルキアスには判断が付かなかった。
「どうしましょう?」
ルキアスがリュミアとロマを見比べながら尋ねると、リュミアはルキアスを生暖かく見詰め、ロマは苦笑で応えた。
「上の階層の様子を確かめられりゃ、それに越したことはないな」
ロマのこれは一般論だ。しかしルキアスの『傘』を知っている者は受け取り方が違う。
「危なくはないでしょうか?」
「上から見るだけなら大丈夫なんじゃない?」
「でも全員は乗れないよ?」
エリリースが懸念を言い、シャルウィが楽観論を出し、ルキアスが欠点を言った。
今ここに居るのは、ルキアス、ダン老人、ザネク、エリリース、シャルウィ、リュミア、ロマ、そしてユアの八人だ。今乗せられるのはルキアスの肌感覚で以前より一人増えた六人。ユアが小さいので余裕の部分で乗せたとしても七人。一人余ってしまう。
この時点でロマやダン老人は話から置いてきぼりにされている。ルキアスの『傘』のことをまだ知らないためだ。
「誰かが残るか、歩いて付いて行くか」
事情を知っているザネクが呟いた。
「後は……」
ルキアスはザネクを見る。ザネクが『傘』を使えば全員が乗れる勘定だ。だがザネクの『傘』を間近に見た経験からすれば移動が遅くて危なっかしかった。魔物の上を飛んでいる時に『傘』を維持できなくなったら事だ。今は危機が迫っている訳でもないので危険は避けたい。全員で動くのを諦めた方が良いだろう。
「ぼくと誰か、二、三人だけで見てくるかだよね」
「それが良さそうだな」
この状況で一人、二人だけで残るのはリスクが高い。誰かが残るなら残る人数を多くするべきだ。そうなると、二、三人での偵察が妥当な選択となる。
では誰を選ぶか。ユアはルキアスがメイナーダから頼まれたのだから常にルキアスと一緒だ。だから行くことになる。リュミアはエリリースの護衛を兼ねているから、二人を離すのも無しだ。この二人は選択から外れる。また、ルキアスの心情的にザネクの居ない場所でシャルウィと行動するのは躊躇われる。
となると、ザネク、ロマ、ダン老人の中の誰かになる。ルキアス的に最も心強く感じるのはロマだが、ロマには残ったメンバーの取り纏めて欲しくもある。
「じゃあザネク、一緒に来てくれる?」
ルキアスは最も気心の知れた相手を相棒にするのが良いと判断した。
「おう。いいぜ」
ザネクは頷いた。他のメンバーもそれぞれに頷いた。
する事は決まったので早速『傘』に乗って出発だ。
ルキアスはロマが微妙な顔をしているのに気付いたが、理由が判らず首を傾げるだけであった。
料理はロマが有り合わせの手持ちで用意した。それでもパンにスープ、ハムと、夕食には少々頼りないが、空腹を満たすには十分なものがある。ロマはいざと言う時の用意をいつもしているらしい。余りがちなパンは乾かして砕いて揚げ物の衣に使ったり、小さく切って揚げてスープのトッピングにすると言う。
そうして腹ごしらえして一息入れた一同はこれからどう動くかを考える。
「どうする? 覗いてみるのは第四階層だけにしとくか?」
口火を切ったのはザネクだ。第四階層を見るだけなら螺旋回廊の出口に行くだけで良い。魔物が降りて来る気配が無いので、歩いて行くだけでも良さそうだ。
それとももっと上まで行ってみるか。そうなるとルキアスの『傘』が必須になるのでルキアスの意向が重要だ。だからザネクはルキアスに尋ねたのだが、ルキアスには判断が付かなかった。
「どうしましょう?」
ルキアスがリュミアとロマを見比べながら尋ねると、リュミアはルキアスを生暖かく見詰め、ロマは苦笑で応えた。
「上の階層の様子を確かめられりゃ、それに越したことはないな」
ロマのこれは一般論だ。しかしルキアスの『傘』を知っている者は受け取り方が違う。
「危なくはないでしょうか?」
「上から見るだけなら大丈夫なんじゃない?」
「でも全員は乗れないよ?」
エリリースが懸念を言い、シャルウィが楽観論を出し、ルキアスが欠点を言った。
今ここに居るのは、ルキアス、ダン老人、ザネク、エリリース、シャルウィ、リュミア、ロマ、そしてユアの八人だ。今乗せられるのはルキアスの肌感覚で以前より一人増えた六人。ユアが小さいので余裕の部分で乗せたとしても七人。一人余ってしまう。
この時点でロマやダン老人は話から置いてきぼりにされている。ルキアスの『傘』のことをまだ知らないためだ。
「誰かが残るか、歩いて付いて行くか」
事情を知っているザネクが呟いた。
「後は……」
ルキアスはザネクを見る。ザネクが『傘』を使えば全員が乗れる勘定だ。だがザネクの『傘』を間近に見た経験からすれば移動が遅くて危なっかしかった。魔物の上を飛んでいる時に『傘』を維持できなくなったら事だ。今は危機が迫っている訳でもないので危険は避けたい。全員で動くのを諦めた方が良いだろう。
「ぼくと誰か、二、三人だけで見てくるかだよね」
「それが良さそうだな」
この状況で一人、二人だけで残るのはリスクが高い。誰かが残るなら残る人数を多くするべきだ。そうなると、二、三人での偵察が妥当な選択となる。
では誰を選ぶか。ユアはルキアスがメイナーダから頼まれたのだから常にルキアスと一緒だ。だから行くことになる。リュミアはエリリースの護衛を兼ねているから、二人を離すのも無しだ。この二人は選択から外れる。また、ルキアスの心情的にザネクの居ない場所でシャルウィと行動するのは躊躇われる。
となると、ザネク、ロマ、ダン老人の中の誰かになる。ルキアス的に最も心強く感じるのはロマだが、ロマには残ったメンバーの取り纏めて欲しくもある。
「じゃあザネク、一緒に来てくれる?」
ルキアスは最も気心の知れた相手を相棒にするのが良いと判断した。
「おう。いいぜ」
ザネクは頷いた。他のメンバーもそれぞれに頷いた。
する事は決まったので早速『傘』に乗って出発だ。
ルキアスはロマが微妙な顔をしているのに気付いたが、理由が判らず首を傾げるだけであった。
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