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299 待ってて
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前を歩くルキアスやザネクが立ち止まれば後を歩く皆も追い付く。
「ルキアスちゃん、どうかした?」
「メイナーダさん、あれを……」
ルキアスは螺旋回廊の出口を指差した。そこから見える第四階層には魔物がわらわら蠢いている。
「あらあら、困ったわね」
困った風に頬に手を当てて小首を傾げるメイナーダだが、口調に困った色は全く含まれない。
「様子を見て来るからルキアスちゃん達はここで待っててちょうだい。ううん? 第五階層に戻った方がいいかしら?」
「危なそうだったら戻ります」
「それがいいわね。それで……と、ユア、起きてユア」
メイナーダはルキアスと合意するとユアを起こした。そして寝ぼけ眼のユアを地面に下ろして立たせる。
「ユアはルキアスちゃんと一緒に待っててね」
「ん!」
ユアは意外とはっきりした返事をして頷いた。
「ぼくと? 安全ならメイナーダさんと一緒の方が……」
「それは大丈夫。ユアの天職はこの程度の階層の魔物なら破られないから」
「そう……なんですか? それならいいんですけど……」
ルキアスはユアの天職が何なのか知らないので「メイナーダがそう言うなら」で納得するしかない。天職は不用意に尋ねないのがマナーだ。
「じゃあお願いね。行ってくるわ」
「はい。行ってらっしゃい」
メイナーダが出口に向かう。その途中で指をパチンと鳴らすと、出口の直ぐ向こうで火柱が上がって見える範囲の魔物が一掃される。メイナーダはそこを悠々と歩いて行く。
「相変わらずメイはヒヤヒヤさせてくれるぜ」
「どうして?」
「火の範囲に探索者が居たらイチコロだからな」
「そっか……」
もし誰か居て、その誰かからみたらいきなり火柱に包まれることになる。恐怖を感じる暇があるかも怪しいから、そのもしもの誰かが何かを思うことは無いのかも知れない。しかしその誰かを想像させられる立ち位置に居たなら肝も冷えよう。
これを想像していなかったルキアスはロマの言葉で想像して、却って怖くなった。
「しかしどうすっかねぇ。第四階層を覗いてみるか?」
「でも『ここで待ってて』って」
「そんなの馬鹿正直に守らなくたっていいぞ?」
「賛せーい!」
シャルウィが右手を高く揚げて同意した。
「わたくしもここでずっと待つのは落ち着きませんわ」
「それはいいんだが、その前に腹ごしらえしないか? 腹減ったぜ」
「ほっほっほ。腹が減っては戦もできぬからの」
ザネクの提案にダン老人が同意し、他の皆も顔を見合わせ頷き合った。
「ルキアスちゃん、どうかした?」
「メイナーダさん、あれを……」
ルキアスは螺旋回廊の出口を指差した。そこから見える第四階層には魔物がわらわら蠢いている。
「あらあら、困ったわね」
困った風に頬に手を当てて小首を傾げるメイナーダだが、口調に困った色は全く含まれない。
「様子を見て来るからルキアスちゃん達はここで待っててちょうだい。ううん? 第五階層に戻った方がいいかしら?」
「危なそうだったら戻ります」
「それがいいわね。それで……と、ユア、起きてユア」
メイナーダはルキアスと合意するとユアを起こした。そして寝ぼけ眼のユアを地面に下ろして立たせる。
「ユアはルキアスちゃんと一緒に待っててね」
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「そう……なんですか? それならいいんですけど……」
ルキアスはユアの天職が何なのか知らないので「メイナーダがそう言うなら」で納得するしかない。天職は不用意に尋ねないのがマナーだ。
「じゃあお願いね。行ってくるわ」
「はい。行ってらっしゃい」
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「相変わらずメイはヒヤヒヤさせてくれるぜ」
「どうして?」
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「そっか……」
もし誰か居て、その誰かからみたらいきなり火柱に包まれることになる。恐怖を感じる暇があるかも怪しいから、そのもしもの誰かが何かを思うことは無いのかも知れない。しかしその誰かを想像させられる立ち位置に居たなら肝も冷えよう。
これを想像していなかったルキアスはロマの言葉で想像して、却って怖くなった。
「しかしどうすっかねぇ。第四階層を覗いてみるか?」
「でも『ここで待ってて』って」
「そんなの馬鹿正直に守らなくたっていいぞ?」
「賛せーい!」
シャルウィが右手を高く揚げて同意した。
「わたくしもここでずっと待つのは落ち着きませんわ」
「それはいいんだが、その前に腹ごしらえしないか? 腹減ったぜ」
「ほっほっほ。腹が減っては戦もできぬからの」
ザネクの提案にダン老人が同意し、他の皆も顔を見合わせ頷き合った。
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