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第6章 仲間と絆
6.黄色エルフの街
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エルフの娘、サマリアが去った後に精霊の手の中へと戻ると、ピエトロはリリアに抱かれた状態でビクビクと震え、イブは手で両耳を抑え、パウロは自らの羽を伸ばして自分と皆を包み込んで庇い、アンドレアがそんな皆を守る様に外に向かってシャーと威嚇をしていた。
おそらくは大きな音がした所為だろうか……。
俺はそんな風に怖がっている猫たちに悪いと思いながらも、皆が皆イカ耳になっている姿に可愛いという思いが湧き、思わずフフッと笑ってしまった。
「もう大丈夫だよ。」
猫たちの背中を撫でながらそう言うと、少し安心したのかソオーっと伏せていた顔を上げた。
「リリアも怖かったよね。猫たちを守ってくれてありがとう。」
「そんな……、私は………。」
「お兄ちゃ~ん! ワタチも怖かったにゃ~。抱っこしてにゃ~。」
パウロが抱き着いて素直に甘えてきたのに対し、リリアは少し申し訳なさそうにしていた。
精霊の手を暫く走らせていると、それまでは道沿いに密集した木々によって真上しか見えなかった狭い空が広大になる程に開けた場所へと出てきた。
「ルカ様! あれは……!」
ピエトロにそう示されて見た前方には、この世のものとは思えない程に大きな大樹が見えた。
植わっている場所はまだ遠くであるはずなのに、まるで目の前にでも存在する様な錯覚をしてしまう程の大樹は上空の枝を黄色エルフの街の端から端まで伸ばし、それは街を守っているかの様に生い茂る葉の影がすっぽりと包み込んでいた。
「大樹に守られた街、か……。あの娘は『村』と言っていたがなかなかどうして…、立派な街じゃないか。」
今居る場所から眼下に一望できるその集落は、今までこの世界で見てきたどの『街』よりも少し小さめではあるが『村』というには些か規模の大きなものであった。
「なんだか……不思議な感じだね、お兄ちゃん。まるであの大きな樹がお母さんで、抱っこされてるみたい。」
「そうだな……。」
そんな事を話しながら街の出入り口を目指した。
この街はほかの街と違って森の中にある所為か、魔物の侵入防止の為の背の高い塀というものが存在しない。
だが、大きな湖の中にある島に街が存在し、出入り口は唯一外界と内とを繋ぐ様に架けられている橋1つだけなので特に心配はないのだろう。
「う~ん……。なんだか神秘的な場所だな。」
そんな感想が俺の口からポロっと漏れた程だった。
「ト・マ・レ。」
街の入り口である橋まで来ると、高さが3mはあろうかという石で出来た大きな人形に前進するのを阻まれ、止められた。
「おい、お前! この村に何の用だ?」
精霊の手の外に出て初めて見たその大きな人形に目を奪われていると、街の中から黄色エルフの若い男が一人出てきた。
「あ、あの! 俺たちはこういうもので……。今旅をしてまして………。」
俺はさっきと同じ様に救世主の証である指輪をまた見せながら話した。
「あぁ………。お前がお嬢がさっき話してた……。」
俺の頭の天辺から足の先まで、まるで値踏みでもされるが如くジロジロと舐めまわす様に見てきた。
「村長も…、別に金を払うなら村に入れてやらんこともないと言っていたが……。いくら持ってるんだ? 精霊の手に乗っているのはお前一人か? 中に他にもいるというなら全員降ろして見せろ!」
百万円持っていると言えば百万円を払えとでも言いだしそうな雰囲気に少したじろいでいると、精霊の手の中からリリアがひょっこりと顔を出した。
「お兄ちゃん?」
「ほう……。可愛い女を連れているじゃないか……。なんだったら、その子を俺に差し出すなら金はまけてやってもいいぞ。滅多と来ないサクラヴェール国の人間だ。なぁに、ちょっと普段と違う味を試してみたいだけさ。数日使ったら返してやるよ。こういうのが門番の特権だからな。ヒヒヒッ! この高貴なエルフ様が気まぐれに人間の女なんかを味わってやろうって言うんだから喜べよ!」
「なっ…!?」
オフィーリア国民であるエルフはサクラヴェール国民である人間を格下に見ているものというが……、この男言い分は酷かった。
俺が怒りで握り締めた拳をワナワナと震わせていると、背後の精霊の手の出入り口からイブが飛び出してきた。
イブはエルフの男の顔に飛び掛かり、爪を立てて何度も引っ掻きながら威嚇の声をあげていた。
「ウッ! ウワッ! 痛い! 何だ!? や、止めろ! っ!!」
エルフの男は悲痛な叫び声をあげながらなんとか顔にしがみ付いているモノを引き剥がし、イブの姿を確認してそれが白猫だと分かると、まるで汚い物を振り払うかの様に床に投げつけた。
俺は「ヒャンッ!」というイブの叫び声が聞こえるよりも先に守ろうと駆け寄ったが痛みなんか感じないという様子で、イブは興奮冷めやらぬままフーッフーッと鼻息荒く毛を逆立てて威嚇していた。
「何をするんだ!」
「何をするか、だって? そいつはお前の連れだろう? “白”だなんて気味の悪い……。」
そう言ってエルフの男はイブに引っかかれた顔を「痛てて…。」と言いながら摩っていた。
「気味の悪いだなんて………。」
背中に隠れていたリリアがボソリとそう洩らし、俺の服をギュッと掴んで引っ張った。
「“白”は邪神を象徴する色だぞ? サクラヴェール国の人間はそんなことも知らんのか? 邪神の祝福を色濃く受けた御使いである悪魔にしか無い色だ。野蛮人めっ! そんな者を連れていると知っちゃあ、村の中に入れるわけにはいかんな……。お前も本当は救世主じゃなくて邪神教徒なんじゃないか? 出ていけ! もし明日もこの辺りをうろついている様なら神に背いてでも殺しに行くからな。」
そう言われ、俺たちは石で出来た大きな人形によって追い帰された。
おそらくは大きな音がした所為だろうか……。
俺はそんな風に怖がっている猫たちに悪いと思いながらも、皆が皆イカ耳になっている姿に可愛いという思いが湧き、思わずフフッと笑ってしまった。
「もう大丈夫だよ。」
猫たちの背中を撫でながらそう言うと、少し安心したのかソオーっと伏せていた顔を上げた。
「リリアも怖かったよね。猫たちを守ってくれてありがとう。」
「そんな……、私は………。」
「お兄ちゃ~ん! ワタチも怖かったにゃ~。抱っこしてにゃ~。」
パウロが抱き着いて素直に甘えてきたのに対し、リリアは少し申し訳なさそうにしていた。
精霊の手を暫く走らせていると、それまでは道沿いに密集した木々によって真上しか見えなかった狭い空が広大になる程に開けた場所へと出てきた。
「ルカ様! あれは……!」
ピエトロにそう示されて見た前方には、この世のものとは思えない程に大きな大樹が見えた。
植わっている場所はまだ遠くであるはずなのに、まるで目の前にでも存在する様な錯覚をしてしまう程の大樹は上空の枝を黄色エルフの街の端から端まで伸ばし、それは街を守っているかの様に生い茂る葉の影がすっぽりと包み込んでいた。
「大樹に守られた街、か……。あの娘は『村』と言っていたがなかなかどうして…、立派な街じゃないか。」
今居る場所から眼下に一望できるその集落は、今までこの世界で見てきたどの『街』よりも少し小さめではあるが『村』というには些か規模の大きなものであった。
「なんだか……不思議な感じだね、お兄ちゃん。まるであの大きな樹がお母さんで、抱っこされてるみたい。」
「そうだな……。」
そんな事を話しながら街の出入り口を目指した。
この街はほかの街と違って森の中にある所為か、魔物の侵入防止の為の背の高い塀というものが存在しない。
だが、大きな湖の中にある島に街が存在し、出入り口は唯一外界と内とを繋ぐ様に架けられている橋1つだけなので特に心配はないのだろう。
「う~ん……。なんだか神秘的な場所だな。」
そんな感想が俺の口からポロっと漏れた程だった。
「ト・マ・レ。」
街の入り口である橋まで来ると、高さが3mはあろうかという石で出来た大きな人形に前進するのを阻まれ、止められた。
「おい、お前! この村に何の用だ?」
精霊の手の外に出て初めて見たその大きな人形に目を奪われていると、街の中から黄色エルフの若い男が一人出てきた。
「あ、あの! 俺たちはこういうもので……。今旅をしてまして………。」
俺はさっきと同じ様に救世主の証である指輪をまた見せながら話した。
「あぁ………。お前がお嬢がさっき話してた……。」
俺の頭の天辺から足の先まで、まるで値踏みでもされるが如くジロジロと舐めまわす様に見てきた。
「村長も…、別に金を払うなら村に入れてやらんこともないと言っていたが……。いくら持ってるんだ? 精霊の手に乗っているのはお前一人か? 中に他にもいるというなら全員降ろして見せろ!」
百万円持っていると言えば百万円を払えとでも言いだしそうな雰囲気に少したじろいでいると、精霊の手の中からリリアがひょっこりと顔を出した。
「お兄ちゃん?」
「ほう……。可愛い女を連れているじゃないか……。なんだったら、その子を俺に差し出すなら金はまけてやってもいいぞ。滅多と来ないサクラヴェール国の人間だ。なぁに、ちょっと普段と違う味を試してみたいだけさ。数日使ったら返してやるよ。こういうのが門番の特権だからな。ヒヒヒッ! この高貴なエルフ様が気まぐれに人間の女なんかを味わってやろうって言うんだから喜べよ!」
「なっ…!?」
オフィーリア国民であるエルフはサクラヴェール国民である人間を格下に見ているものというが……、この男言い分は酷かった。
俺が怒りで握り締めた拳をワナワナと震わせていると、背後の精霊の手の出入り口からイブが飛び出してきた。
イブはエルフの男の顔に飛び掛かり、爪を立てて何度も引っ掻きながら威嚇の声をあげていた。
「ウッ! ウワッ! 痛い! 何だ!? や、止めろ! っ!!」
エルフの男は悲痛な叫び声をあげながらなんとか顔にしがみ付いているモノを引き剥がし、イブの姿を確認してそれが白猫だと分かると、まるで汚い物を振り払うかの様に床に投げつけた。
俺は「ヒャンッ!」というイブの叫び声が聞こえるよりも先に守ろうと駆け寄ったが痛みなんか感じないという様子で、イブは興奮冷めやらぬままフーッフーッと鼻息荒く毛を逆立てて威嚇していた。
「何をするんだ!」
「何をするか、だって? そいつはお前の連れだろう? “白”だなんて気味の悪い……。」
そう言ってエルフの男はイブに引っかかれた顔を「痛てて…。」と言いながら摩っていた。
「気味の悪いだなんて………。」
背中に隠れていたリリアがボソリとそう洩らし、俺の服をギュッと掴んで引っ張った。
「“白”は邪神を象徴する色だぞ? サクラヴェール国の人間はそんなことも知らんのか? 邪神の祝福を色濃く受けた御使いである悪魔にしか無い色だ。野蛮人めっ! そんな者を連れていると知っちゃあ、村の中に入れるわけにはいかんな……。お前も本当は救世主じゃなくて邪神教徒なんじゃないか? 出ていけ! もし明日もこの辺りをうろついている様なら神に背いてでも殺しに行くからな。」
そう言われ、俺たちは石で出来た大きな人形によって追い帰された。
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