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第6章 仲間と絆
7.休憩と夕食
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黄色エルフの街へと入ろうとして追い帰された俺たちは、精霊の手に乗って森の中へと入った。
「もうすぐ夕方だし、仕方ない。今日はとりあえずここら辺りで野営をしようか。」
精霊の手は馬と違って人工精霊というAIの様なものを介し、大地の中をまるで神経や血管の様に縦横無尽に流れている見えない道の中から魔力を随時吸収しながら動いている。
なので回復の為の休憩の必要性もなく、暗い道でも飛べる様に屋根よりチョウチンアンコウみたいに垂れ下がった場所にはライトも付いているし、地球にあった乗用車程にはそれなりにスピードの出る乗り物だ。
だがやむを得ずといった感じで作られた森の中の道は、茂った木々が横から差し迫ってくるので狭いし視界も悪くてスピードが出せず、トラブル続きなのもあってリリアや猫たちには少し休憩が必要だった。
「イブ……体は大丈夫かい?」
「ニィ……。自慢のモフモフの毛皮がクッションになったので…、それほど酷くはありませんにゃ…。ちょっと大きな打ち身を負ったぐらいですのでそんなに気にしないでくださいにゃ……。」
そう言ってイブは負傷した体を横たえたまま申し訳なさげに笑いかけながらも、先程からブワッと太くなったままの尻尾はタシンタシンと床に叩きつけられており、苛立ちやこちらに心配をかけまいと隠そうとしている本音がそこから洩れ出ていた。
村に定期的に行商に来ていたエルフと交流を持っていたリリアでも、他との交流を極力絶って森に隠れ住んでいる黄色エルフたちは独特の訛りをしていて何を喋っていたのか全ては分からずにいた。
しかも猫たちに至っては耳慣れぬ人間の言葉はさっぱりだったのだが、雰囲気から俺たちの悪口を言われていることは察していたらしい。
そこに黄色エルフの男がリリアの事を品定めするような視線を向けて舌なめずりをし、それを見ていた俺がワナワナと震えているのを確認し、皆の母親の様な存在となっているイブは我慢が出来なかったらしくって黄色エルフの男がリリアに手を伸ばした瞬間に咄嗟に顔を目掛けて飛びつき、攻撃したというのだ。
「リリア様は……、出会ってから1年も経ってはいませんが、もう私の娘みたいなものですにゃ。その大切な娘を侮辱する様なあの視線……。あんな悍ましい男の手には娘に触れてほしくなかったんですにゃ……。」
「イブ、俺も同じ気持ちだよ……。」
以前にあった青色エルフの街での出来事から俺はまた殺してしまうのではないかと怖くなり、感情を昂らせまいと必死に抑え込んでいて何も言う事さえできずにいた悔しさと、そんな俺の代わりに反抗してくれたイブに感謝の思いでいっぱいになり、優しく撫でながら「ありがとう。」と言った。
まさか自分の毛色の所為で街に入れずに追い出され、自らが負傷した理由にもなったなんて知ったらどんなにか口惜しいだろう……。
それを知ってしまえばどんなにかイブは落ち込むだろうかと胸が苦しくなってしまい、それだけ言うと俺は唇を噛みしめた。
「お兄ちゃん。お兄ちゃん。焚き木、拾ってきたよ。」
「ふぉんなひ、おっひいのふぁ、ふぉふぇふぁひふぁふぁ!」
俺がイブと話をしている間に、リリアは焚き木となる枯れ枝を周囲を歩いて拾い集め、イブ以外の猫たちは協力して今日の晩御飯となる獲物を捕まえてきていた。
「パウロ……。口に咥えたまま喋ったら何を言っているのか分からないよ。」
「こんなに大きいのを捕まえたにゃ!」
アダムとピエトロとアンドレアとの4人で協力して捕まえたんだと咥えていた獲物を口から放してパウロが話しだし、皆で咥えて引き摺りながら運んできてたのは丸々とした身の大きなトカゲだった。
「おぉ! 凄いな……。しかし……これ、食えるのか?」
「食べれますにゃ、ルカ様。前にエルフたちが話しているのを聞いたことがあるんだにゃ! 確か……人間の言葉でドラゴンモドキとか言う名前らしいにゃ。翼の無いワイバーンとか言う異名もあるらしい美味しい肉って聞いたから覚えてたのにゃ~。」
そうアダムに言われ、確かにドラゴンというには猫6匹分程とそれほど大きな体格ではないが、ワイバーンの親戚と言われれば「そうなんだな。」と思えるぐらいにはそれっぽい見た目をしていると思えた。
初めて見る生き物に、俺はどうしたものかとじっくりとそのドラゴンモドキを観察していると、パウロが褒めてほしそうに俺の足に擦り寄り、尻尾をピンと立ててアピールしていた。
「こんな大きな獲物をよく頑張ったな。」
そうしてパウロの頭を撫でて褒めてやると、とても嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らしていた。
「まっ、取り合えず捌いてみるか……。今日はこれを焼いてご飯にするぞ。」
「「にゃ~ぁ!」」
猫たちの楽しそうな掛け声と共に調理を開始し、野営にすっかりと慣れてきたリリアが捌いている間に用意してくれた焚き火で、ドラゴンモドキの肉を適度に小さく切って木の棒へ串刺しにした物を焼こうと火にかけた。
肉から溶け出てきた脂に火が当たってパチパチと音が鳴っている傍で、猫だけじゃなくリリアまで涎を垂らしてその肉が徐々に焼けていく様子をジーっと見ていた。
「もうすぐ夕方だし、仕方ない。今日はとりあえずここら辺りで野営をしようか。」
精霊の手は馬と違って人工精霊というAIの様なものを介し、大地の中をまるで神経や血管の様に縦横無尽に流れている見えない道の中から魔力を随時吸収しながら動いている。
なので回復の為の休憩の必要性もなく、暗い道でも飛べる様に屋根よりチョウチンアンコウみたいに垂れ下がった場所にはライトも付いているし、地球にあった乗用車程にはそれなりにスピードの出る乗り物だ。
だがやむを得ずといった感じで作られた森の中の道は、茂った木々が横から差し迫ってくるので狭いし視界も悪くてスピードが出せず、トラブル続きなのもあってリリアや猫たちには少し休憩が必要だった。
「イブ……体は大丈夫かい?」
「ニィ……。自慢のモフモフの毛皮がクッションになったので…、それほど酷くはありませんにゃ…。ちょっと大きな打ち身を負ったぐらいですのでそんなに気にしないでくださいにゃ……。」
そう言ってイブは負傷した体を横たえたまま申し訳なさげに笑いかけながらも、先程からブワッと太くなったままの尻尾はタシンタシンと床に叩きつけられており、苛立ちやこちらに心配をかけまいと隠そうとしている本音がそこから洩れ出ていた。
村に定期的に行商に来ていたエルフと交流を持っていたリリアでも、他との交流を極力絶って森に隠れ住んでいる黄色エルフたちは独特の訛りをしていて何を喋っていたのか全ては分からずにいた。
しかも猫たちに至っては耳慣れぬ人間の言葉はさっぱりだったのだが、雰囲気から俺たちの悪口を言われていることは察していたらしい。
そこに黄色エルフの男がリリアの事を品定めするような視線を向けて舌なめずりをし、それを見ていた俺がワナワナと震えているのを確認し、皆の母親の様な存在となっているイブは我慢が出来なかったらしくって黄色エルフの男がリリアに手を伸ばした瞬間に咄嗟に顔を目掛けて飛びつき、攻撃したというのだ。
「リリア様は……、出会ってから1年も経ってはいませんが、もう私の娘みたいなものですにゃ。その大切な娘を侮辱する様なあの視線……。あんな悍ましい男の手には娘に触れてほしくなかったんですにゃ……。」
「イブ、俺も同じ気持ちだよ……。」
以前にあった青色エルフの街での出来事から俺はまた殺してしまうのではないかと怖くなり、感情を昂らせまいと必死に抑え込んでいて何も言う事さえできずにいた悔しさと、そんな俺の代わりに反抗してくれたイブに感謝の思いでいっぱいになり、優しく撫でながら「ありがとう。」と言った。
まさか自分の毛色の所為で街に入れずに追い出され、自らが負傷した理由にもなったなんて知ったらどんなにか口惜しいだろう……。
それを知ってしまえばどんなにかイブは落ち込むだろうかと胸が苦しくなってしまい、それだけ言うと俺は唇を噛みしめた。
「お兄ちゃん。お兄ちゃん。焚き木、拾ってきたよ。」
「ふぉんなひ、おっひいのふぁ、ふぉふぇふぁひふぁふぁ!」
俺がイブと話をしている間に、リリアは焚き木となる枯れ枝を周囲を歩いて拾い集め、イブ以外の猫たちは協力して今日の晩御飯となる獲物を捕まえてきていた。
「パウロ……。口に咥えたまま喋ったら何を言っているのか分からないよ。」
「こんなに大きいのを捕まえたにゃ!」
アダムとピエトロとアンドレアとの4人で協力して捕まえたんだと咥えていた獲物を口から放してパウロが話しだし、皆で咥えて引き摺りながら運んできてたのは丸々とした身の大きなトカゲだった。
「おぉ! 凄いな……。しかし……これ、食えるのか?」
「食べれますにゃ、ルカ様。前にエルフたちが話しているのを聞いたことがあるんだにゃ! 確か……人間の言葉でドラゴンモドキとか言う名前らしいにゃ。翼の無いワイバーンとか言う異名もあるらしい美味しい肉って聞いたから覚えてたのにゃ~。」
そうアダムに言われ、確かにドラゴンというには猫6匹分程とそれほど大きな体格ではないが、ワイバーンの親戚と言われれば「そうなんだな。」と思えるぐらいにはそれっぽい見た目をしていると思えた。
初めて見る生き物に、俺はどうしたものかとじっくりとそのドラゴンモドキを観察していると、パウロが褒めてほしそうに俺の足に擦り寄り、尻尾をピンと立ててアピールしていた。
「こんな大きな獲物をよく頑張ったな。」
そうしてパウロの頭を撫でて褒めてやると、とても嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らしていた。
「まっ、取り合えず捌いてみるか……。今日はこれを焼いてご飯にするぞ。」
「「にゃ~ぁ!」」
猫たちの楽しそうな掛け声と共に調理を開始し、野営にすっかりと慣れてきたリリアが捌いている間に用意してくれた焚き火で、ドラゴンモドキの肉を適度に小さく切って木の棒へ串刺しにした物を焼こうと火にかけた。
肉から溶け出てきた脂に火が当たってパチパチと音が鳴っている傍で、猫だけじゃなくリリアまで涎を垂らしてその肉が徐々に焼けていく様子をジーっと見ていた。
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