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第6章 仲間と絆
5.空から
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「もう、大丈夫? お兄ちゃん……。」
「あぁ、ごめんな………。ちょっとウトウトしてたらしくって、なんか悪い夢を見ちゃってたみたいなんだ。……本当にゴメン。」
俺は涙を袖で拭い、顔を上げて心配してくれるリリアにニコッと笑って見せた。
「さぁっ! 休憩もしたし…、再出発しようか。パウロ! アダム! イブ! アンドレア! そろそろ行くよ。ピエトロも起きて!」
俺は横でいつの間にか寝ていたピエトロを揺り起こしながら、傍にある木の上で遊んだり寛いだりしていた猫たちを呼んだ。
焚き火の始末をして皆で精霊の手に乗り込み、ドアを閉めてさぁ出発するぞという時になって突然、乗っている精霊の手を包み込む様にふっと影が落ちた。
「えっ……?」
「どうしたのにゃ?」
驚いた俺たちは窓から顔を出し、キョロキョロと外を確認した。
「ウッ、ニャッ! ニャアァァァァァァ~~~~ア!!」
その時、頭上の方から悲鳴とも言える様な猫の叫び声が聞こえてきたので見上げると、大鷲にしがみ付いて乗っている猫が大鷲よりも少し大きな空飛ぶ鹿に襲われていた。
「あれは……、ペリュトンか………。」
キィキィと甲高い声で鳴きながら、ペリュトンは大鷲の後ろを飛んで付いて行き、何度も猫に噛み付こうとしていた。
「お兄ちゃん……。助けてあげて。」
俺がどうしたものかとその光景をただジッと見ていると、横に座っていたリリアが期待を込めた目で訴えてきた。
「う、うん……。でも、空の……、あんなに上の方じゃ………。」
しかし俺もどうにかしてやりたいとは思うのだが、外に出たはいいものの手を伸ばしても届かない上空の方で繰り広げられている出来事に、俺は文字通り手も足も出なかった。
「そこの人! 隠れて!」
「へっ!?」
オロオロとしているだけの俺にどこかからか向けられた声に驚き、キョロキョロと首を動かして周りを捜し見ていると、再び「いいから隠れて!」と聞こえてきた。
俺はハッとして、その声が支持するままに精霊の手の中へと隠れた。
と、その次の瞬間……、何かが弾ける音がした!
「なっ、……なんだ?」
俺は何が起こったのか訳も分からずに驚き、先程と同じ声で「ハァッ!」という掛け声がした方向を見た。
するとそこには、キラキラと光る金髪を風に靡かせて弓を構えているエルフが居た。
そのエルフは俺が自分の事を見ていることに気が付くと、ツカツカと歩いて近寄ってきた。
「あなた……、外国人ね。しかも“黒人”……。こんなところで高級精霊の手にまで乗って何をしているの?」
そう言って俺の目を真っ直ぐに見て睨んできた。
「い、いや……。えっと…、ちょっと旅をしていて……。君は黄色エルフかい?」
「そうよ。それが何?」
俺の目の前にエルフは仁王立ちになり、睨まれたまま強い口調で質問されたことにビクッと体が反応して目が泳いでしまい、ドギマギして返答に窮していると、喰い気味に更に聞いてきた。
懐古主義の性質の者ばかりだという黄色エルフは余所者に対して多少は警戒心が強いというが、俺に対するこの態度はそれだけではなく、他国の神官であろう疑惑を持たざるを得ない“黒人”の成りをしていたせいであろう。
この世界において神官とは戦争を担う者、つまりはエリートの代名詞であり、神官になれる素質を表す黒髪黒目は自国の者であれば尊敬と憧れの念を抱くものだが、それが他国の者となると一変して恐怖と警戒の象徴となる。
そんな中で美人エルフに睨まれた事で怯んだ俺が取ってしまった態度は、どう見ても怪しかったのだろう……。
「えっと……、こんな成りをしてるけど“黒人”じゃないから安心してほしいんだ。俺は全く魔法は使えないし、神官でもないし…。俺たちはちょっと事情があって、君たち黄色エルフが統治しているという街に行きたくて目指していたんだ。」
たどたどしくはなってしまったが、救世主の証である指輪を見せながら説明した。
「ふぅ~ん……。あなた…、五人目の柱なんだ。また、異界の者なのね………。」
「柱?」
「この世界には神との契約書である聖書によって世界を支える柱となる者が千年に一度誕生するとエルフでは言われているわ。他の国では救世主だの言われて敬われているけども………まぁ、体の良い生贄ってことよね。だから『柱』よ。」
それは特別自治区に住まう加護無きエルフにとっては、余程救世主なんてどうでもよい存在なのだろうと見て取れる態度であった。
「グルー、ジョヴァンニ。帰るわよ。」
俺たちが話をしている間に地上に降りて来た大鷲と猫は、いつの間にか出てきていたアダムとジャレて遊んでいたが、そのエルフに名前を呼ばれて再び飛び立とうとした。
「あっ! ちょっと待って……。君の名前を教えてほしいんだ。俺はルカ。ルカ・遠見。」
「なんであなたに名乗らなくちゃ……。まぁ…、いいわ。私は村長の娘のサマリアよ。うちの村に来るというのなら村長である父に伝えておくわ。まぁ、歓迎する者は誰もいないでしょうけどね。」
エルフはそう捨て台詞を吐くと、俺たちをフンっと鼻で笑ってから一気に駆けて行った。
「はぁっやっ!」
「ふぇ~……! もう見えなくなっちゃったにゃ……。」
「黄色エルフは大地の民って言われているからなぁ……、それで速いのか………?」
そんなことを話しながら、エルフの消えた道の先をアダムと一緒に見ていた。
「あぁ、ごめんな………。ちょっとウトウトしてたらしくって、なんか悪い夢を見ちゃってたみたいなんだ。……本当にゴメン。」
俺は涙を袖で拭い、顔を上げて心配してくれるリリアにニコッと笑って見せた。
「さぁっ! 休憩もしたし…、再出発しようか。パウロ! アダム! イブ! アンドレア! そろそろ行くよ。ピエトロも起きて!」
俺は横でいつの間にか寝ていたピエトロを揺り起こしながら、傍にある木の上で遊んだり寛いだりしていた猫たちを呼んだ。
焚き火の始末をして皆で精霊の手に乗り込み、ドアを閉めてさぁ出発するぞという時になって突然、乗っている精霊の手を包み込む様にふっと影が落ちた。
「えっ……?」
「どうしたのにゃ?」
驚いた俺たちは窓から顔を出し、キョロキョロと外を確認した。
「ウッ、ニャッ! ニャアァァァァァァ~~~~ア!!」
その時、頭上の方から悲鳴とも言える様な猫の叫び声が聞こえてきたので見上げると、大鷲にしがみ付いて乗っている猫が大鷲よりも少し大きな空飛ぶ鹿に襲われていた。
「あれは……、ペリュトンか………。」
キィキィと甲高い声で鳴きながら、ペリュトンは大鷲の後ろを飛んで付いて行き、何度も猫に噛み付こうとしていた。
「お兄ちゃん……。助けてあげて。」
俺がどうしたものかとその光景をただジッと見ていると、横に座っていたリリアが期待を込めた目で訴えてきた。
「う、うん……。でも、空の……、あんなに上の方じゃ………。」
しかし俺もどうにかしてやりたいとは思うのだが、外に出たはいいものの手を伸ばしても届かない上空の方で繰り広げられている出来事に、俺は文字通り手も足も出なかった。
「そこの人! 隠れて!」
「へっ!?」
オロオロとしているだけの俺にどこかからか向けられた声に驚き、キョロキョロと首を動かして周りを捜し見ていると、再び「いいから隠れて!」と聞こえてきた。
俺はハッとして、その声が支持するままに精霊の手の中へと隠れた。
と、その次の瞬間……、何かが弾ける音がした!
「なっ、……なんだ?」
俺は何が起こったのか訳も分からずに驚き、先程と同じ声で「ハァッ!」という掛け声がした方向を見た。
するとそこには、キラキラと光る金髪を風に靡かせて弓を構えているエルフが居た。
そのエルフは俺が自分の事を見ていることに気が付くと、ツカツカと歩いて近寄ってきた。
「あなた……、外国人ね。しかも“黒人”……。こんなところで高級精霊の手にまで乗って何をしているの?」
そう言って俺の目を真っ直ぐに見て睨んできた。
「い、いや……。えっと…、ちょっと旅をしていて……。君は黄色エルフかい?」
「そうよ。それが何?」
俺の目の前にエルフは仁王立ちになり、睨まれたまま強い口調で質問されたことにビクッと体が反応して目が泳いでしまい、ドギマギして返答に窮していると、喰い気味に更に聞いてきた。
懐古主義の性質の者ばかりだという黄色エルフは余所者に対して多少は警戒心が強いというが、俺に対するこの態度はそれだけではなく、他国の神官であろう疑惑を持たざるを得ない“黒人”の成りをしていたせいであろう。
この世界において神官とは戦争を担う者、つまりはエリートの代名詞であり、神官になれる素質を表す黒髪黒目は自国の者であれば尊敬と憧れの念を抱くものだが、それが他国の者となると一変して恐怖と警戒の象徴となる。
そんな中で美人エルフに睨まれた事で怯んだ俺が取ってしまった態度は、どう見ても怪しかったのだろう……。
「えっと……、こんな成りをしてるけど“黒人”じゃないから安心してほしいんだ。俺は全く魔法は使えないし、神官でもないし…。俺たちはちょっと事情があって、君たち黄色エルフが統治しているという街に行きたくて目指していたんだ。」
たどたどしくはなってしまったが、救世主の証である指輪を見せながら説明した。
「ふぅ~ん……。あなた…、五人目の柱なんだ。また、異界の者なのね………。」
「柱?」
「この世界には神との契約書である聖書によって世界を支える柱となる者が千年に一度誕生するとエルフでは言われているわ。他の国では救世主だの言われて敬われているけども………まぁ、体の良い生贄ってことよね。だから『柱』よ。」
それは特別自治区に住まう加護無きエルフにとっては、余程救世主なんてどうでもよい存在なのだろうと見て取れる態度であった。
「グルー、ジョヴァンニ。帰るわよ。」
俺たちが話をしている間に地上に降りて来た大鷲と猫は、いつの間にか出てきていたアダムとジャレて遊んでいたが、そのエルフに名前を呼ばれて再び飛び立とうとした。
「あっ! ちょっと待って……。君の名前を教えてほしいんだ。俺はルカ。ルカ・遠見。」
「なんであなたに名乗らなくちゃ……。まぁ…、いいわ。私は村長の娘のサマリアよ。うちの村に来るというのなら村長である父に伝えておくわ。まぁ、歓迎する者は誰もいないでしょうけどね。」
エルフはそう捨て台詞を吐くと、俺たちをフンっと鼻で笑ってから一気に駆けて行った。
「はぁっやっ!」
「ふぇ~……! もう見えなくなっちゃったにゃ……。」
「黄色エルフは大地の民って言われているからなぁ……、それで速いのか………?」
そんなことを話しながら、エルフの消えた道の先をアダムと一緒に見ていた。
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