8 / 12
8.オースティンの逆襲
しおりを挟む
ある日、クローネが、応接室に女性のお客様がみえており、オースティン様がいつになく怒っていると教えてくれた。
オースティン様が怒っているようなそぶりを見せたのは、あの夜会の後と今回が二度目だ。
結局、オースティン様とサネルマさんはお付き合いしているの?
していないの?
私には、わからなかった。
しかも、クローネが、
「エミリア様、オースティン様が応接室でお呼びです。」
と告げる。
そんなの嫌。
オースティン様と女性がいるところになんて、行きたくない。
二人を直視するのは、最も避けたいことなのに。
見たらきっと傷つくのは、わかっている。
こちらに来てから、邸の中では、オースティン様は私をほぼ放置だったのに。
どうして、よりにもよって、女性と揉めているところに私を呼ぶの?
それに、私自身、揉め事は避けて生きてきたのに、あえてその中に入って行くなんて、嫌だ。
でも、オースティン様が呼んでいるなら、行くしかないのね。
オースティン様は私の婚約者だし、今はこの邸の公爵家当主だし。
私は断れる立場にない。
私は、渋々二人の元へ向かうのであった。
「お呼びでしょうか、オースティン様」
「やあ、待っていたよ。
こっちにおいで。」
オースティン様は私が応接室に入ると急に笑顔になり、オースティン様が座っているソファの横をポンポンと叩いて、私をそこに座るよう促す。
えっ、どうしたの、オースティン様?
今までそんなことしたことないのに。
サネルマさんが、あんぐりと口を開けて、オースティン様を見ているわ。
でも、ここで彼に従わない訳にはいかず、そおっとオースティン様の横に座る。
するとオースティン様は、私の身体の回りに腕を回して、引き寄せる。
キャーっ、この接触は何?
恥ずかしい。
両手で、顔を覆ってしまいたいが、グッと我慢して、まるで何でもないかのように微笑む。
今まで一度でも、このようなことをしたことはなかったのに。
いきなりどうしたの?
オースティン様。
でも、私は貴族令嬢だ。
どんな時だって、人前で狼狽えることはせず、身体を硬直させて、オースティン様の接触に耐える。
するとオースティン様は肩に手を回したまま、満足そうに私の頭にキスする。
くっ。
声が、出そう。
でも、オースティン様は私をよくわかっている。
人前で、彼を否定することなんて、絶対にしない。
とは言え、前の婚約時の時から、オースティン様はエスコートの時、腕を組むぐらいで、私と一定の距離を保っていたので、こんなことは初めてだった。
私は、彼に包まれていることで、胸のドキドキがおさまらず、ついに下を向いて、彼にもたれかかってしまう。
それを見たサネルマさんは、
「オースティン様。
エミリア様とは、ほとんど会わないし、会っても二人はよそよそしいと伺っておりましたが?」
「そんな噂は知らないな。
僕達二人の時はいつもこうだよ。
僕達のことを勝手に決めつけないでくれ。
そう言うことだから、お引き取り願おうか。
くれぐれも、変な噂を立てて、エミリアを侮辱することは僕が許さないから。
覚えておいてくれ。」
サネルマさんは悔しそうに、顔を背けながら、逃げるように帰って行った。
「オースティン様、そろそろこれを外していただけます?」
応接室でやっと二人きりになると、ピッタリと横にくっついていることに、私はいたたまれず、自分に回されたオースティン様の手を離してもらおうと思った。
「こうされるのは、嫌い?」
オースティン様は私の瞳を見ながら、笑顔で問いかけて来る。
「嫌いと言うわけではないんですが、動揺しています。」
「じゃあ、このままにしよう。
君を動揺させれるなんて、最高だ。
最初から遠慮しないで、こうしていれば良かったのかな。
僕達は婚約者同士だし、許されるよね。」
オースティン様は、上機嫌で話す。
「まぁ、そうとも言いますけれど。」
私は、二人のこのゼロ距離が慣れなくて、胸のドキドキはおさまる気配をみせない。
本当にどうしたのだろうか、オースティン様は?
「僕は以前婚約していた時は、説明をすれば、僕が好きなのは君だとわかってくれる。
君は僕に間違った噂があったとしても、僕を信じてくれる。
そう思っていた。
けれども、それは僕の思い違いだった。
だから、再び婚約してからは、少しずつ君と話をすることで、これまでの誤解を解こうと思っていた。
けれど、君は過去の話を望まないし、そうしているうちに、変な女まで湧いてきて、僕と付き合っているなどと嘘の噂を立てようとする。
だったら、僕はこうする。
君を抱きしめるんだ。
人がいても、いなくても。
そうすれば、君も僕が君を好きだという気持ちを誤解しないだろうし、変な噂もしだいに跳ね除けるだろう。
本当は君の気持ちを確かめてから、こうしようと思っていた。
けれども、そんなことを思って、何もしないでいると、また僕達は同じことを繰り返す。
僕は君を再び失うことが、怖くてたまらないんだ。
君は、僕に女性が近づいたら、きっと逃げ出すだろう。
そんなことは許さない。
僕は今度こそ、君を絶対に離さない。
だから、君は早く今の僕に慣れて。
これが、僕達の新しい形だから。」
そう言って、再びオースティン様は私の頭にキスをする。
どうしてこんなことに?
私のせい?
私がまたも、オースティン様の女性関係の間違った噂を信じたから?
彼の言うとおり、今までのオースティン様とは全く違う。
私を離さないとでも言うように、笑顔でピッタリと抱きしめている。
彼の香りに包まれて、抱きしめられると、幸せすぎて、めまいがする。
私はいけないものを掘り起こした、そんな気分だった。
オースティン様が怒っているようなそぶりを見せたのは、あの夜会の後と今回が二度目だ。
結局、オースティン様とサネルマさんはお付き合いしているの?
していないの?
私には、わからなかった。
しかも、クローネが、
「エミリア様、オースティン様が応接室でお呼びです。」
と告げる。
そんなの嫌。
オースティン様と女性がいるところになんて、行きたくない。
二人を直視するのは、最も避けたいことなのに。
見たらきっと傷つくのは、わかっている。
こちらに来てから、邸の中では、オースティン様は私をほぼ放置だったのに。
どうして、よりにもよって、女性と揉めているところに私を呼ぶの?
それに、私自身、揉め事は避けて生きてきたのに、あえてその中に入って行くなんて、嫌だ。
でも、オースティン様が呼んでいるなら、行くしかないのね。
オースティン様は私の婚約者だし、今はこの邸の公爵家当主だし。
私は断れる立場にない。
私は、渋々二人の元へ向かうのであった。
「お呼びでしょうか、オースティン様」
「やあ、待っていたよ。
こっちにおいで。」
オースティン様は私が応接室に入ると急に笑顔になり、オースティン様が座っているソファの横をポンポンと叩いて、私をそこに座るよう促す。
えっ、どうしたの、オースティン様?
今までそんなことしたことないのに。
サネルマさんが、あんぐりと口を開けて、オースティン様を見ているわ。
でも、ここで彼に従わない訳にはいかず、そおっとオースティン様の横に座る。
するとオースティン様は、私の身体の回りに腕を回して、引き寄せる。
キャーっ、この接触は何?
恥ずかしい。
両手で、顔を覆ってしまいたいが、グッと我慢して、まるで何でもないかのように微笑む。
今まで一度でも、このようなことをしたことはなかったのに。
いきなりどうしたの?
オースティン様。
でも、私は貴族令嬢だ。
どんな時だって、人前で狼狽えることはせず、身体を硬直させて、オースティン様の接触に耐える。
するとオースティン様は肩に手を回したまま、満足そうに私の頭にキスする。
くっ。
声が、出そう。
でも、オースティン様は私をよくわかっている。
人前で、彼を否定することなんて、絶対にしない。
とは言え、前の婚約時の時から、オースティン様はエスコートの時、腕を組むぐらいで、私と一定の距離を保っていたので、こんなことは初めてだった。
私は、彼に包まれていることで、胸のドキドキがおさまらず、ついに下を向いて、彼にもたれかかってしまう。
それを見たサネルマさんは、
「オースティン様。
エミリア様とは、ほとんど会わないし、会っても二人はよそよそしいと伺っておりましたが?」
「そんな噂は知らないな。
僕達二人の時はいつもこうだよ。
僕達のことを勝手に決めつけないでくれ。
そう言うことだから、お引き取り願おうか。
くれぐれも、変な噂を立てて、エミリアを侮辱することは僕が許さないから。
覚えておいてくれ。」
サネルマさんは悔しそうに、顔を背けながら、逃げるように帰って行った。
「オースティン様、そろそろこれを外していただけます?」
応接室でやっと二人きりになると、ピッタリと横にくっついていることに、私はいたたまれず、自分に回されたオースティン様の手を離してもらおうと思った。
「こうされるのは、嫌い?」
オースティン様は私の瞳を見ながら、笑顔で問いかけて来る。
「嫌いと言うわけではないんですが、動揺しています。」
「じゃあ、このままにしよう。
君を動揺させれるなんて、最高だ。
最初から遠慮しないで、こうしていれば良かったのかな。
僕達は婚約者同士だし、許されるよね。」
オースティン様は、上機嫌で話す。
「まぁ、そうとも言いますけれど。」
私は、二人のこのゼロ距離が慣れなくて、胸のドキドキはおさまる気配をみせない。
本当にどうしたのだろうか、オースティン様は?
「僕は以前婚約していた時は、説明をすれば、僕が好きなのは君だとわかってくれる。
君は僕に間違った噂があったとしても、僕を信じてくれる。
そう思っていた。
けれども、それは僕の思い違いだった。
だから、再び婚約してからは、少しずつ君と話をすることで、これまでの誤解を解こうと思っていた。
けれど、君は過去の話を望まないし、そうしているうちに、変な女まで湧いてきて、僕と付き合っているなどと嘘の噂を立てようとする。
だったら、僕はこうする。
君を抱きしめるんだ。
人がいても、いなくても。
そうすれば、君も僕が君を好きだという気持ちを誤解しないだろうし、変な噂もしだいに跳ね除けるだろう。
本当は君の気持ちを確かめてから、こうしようと思っていた。
けれども、そんなことを思って、何もしないでいると、また僕達は同じことを繰り返す。
僕は君を再び失うことが、怖くてたまらないんだ。
君は、僕に女性が近づいたら、きっと逃げ出すだろう。
そんなことは許さない。
僕は今度こそ、君を絶対に離さない。
だから、君は早く今の僕に慣れて。
これが、僕達の新しい形だから。」
そう言って、再びオースティン様は私の頭にキスをする。
どうしてこんなことに?
私のせい?
私がまたも、オースティン様の女性関係の間違った噂を信じたから?
彼の言うとおり、今までのオースティン様とは全く違う。
私を離さないとでも言うように、笑顔でピッタリと抱きしめている。
彼の香りに包まれて、抱きしめられると、幸せすぎて、めまいがする。
私はいけないものを掘り起こした、そんな気分だった。
950
お気に入りに追加
1,141
あなたにおすすめの小説
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
大好きなあなたが「嫌い」と言うから「私もです」と微笑みました。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
私はずっと、貴方のことが好きなのです。
でも貴方は私を嫌っています。
だから、私は命を懸けて今日も嘘を吐くのです。
貴方が心置きなく私を嫌っていられるように。
貴方を「嫌い」なのだと告げるのです。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】貴方が好きなのはあくまでも私のお姉様
すだもみぢ
恋愛
伯爵令嬢であるカリンは、隣の辺境伯の息子であるデュークが苦手だった。
彼の悪戯にひどく泣かされたことがあったから。
そんな彼が成長し、年の離れたカリンの姉、ヨーランダと付き合い始めてから彼は変わっていく。
ヨーランダは世紀の淑女と呼ばれた女性。
彼女の元でどんどんと洗練され、魅力に満ちていくデュークをカリンは傍らから見ていることしかできなかった。
しかしヨーランダはデュークではなく他の人を選び、結婚してしまう。
それからしばらくして、カリンの元にデュークから結婚の申し込みが届く。
私はお姉さまの代わりでしょうか。
貴方が私に優しくすればするほど悲しくなるし、みじめな気持ちになるのに……。
そう思いつつも、彼を思う気持ちは抑えられなくなっていく。
8/21 MAGI様より表紙イラストを、9/24にはMAGI様の作曲された
この小説のイメージソング「意味のない空」をいただきました。
https://www.youtube.com/watch?v=L6C92gMQ_gE
MAGI様、ありがとうございます!
イメージが広がりますので聞きながらお話を読んでくださると嬉しいです。
【完結】白い結婚はあなたへの導き
白雨 音
恋愛
妹ルイーズに縁談が来たが、それは妹の望みでは無かった。
彼女は姉アリスの婚約者、フィリップと想い合っていると告白する。
何も知らずにいたアリスは酷くショックを受ける。
先方が承諾した事で、アリスの気持ちは置き去りに、婚約者を入れ換えられる事になってしまった。
悲しみに沈むアリスに、夫となる伯爵は告げた、「これは白い結婚だ」と。
運命は回り始めた、アリスが辿り着く先とは… ◇異世界:短編16話《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる