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第一章 開店準備

七話 目的地

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「う~ん、どうかな?」
「似合ってるワンよ! 大魔導士って感じだワン!」

 カルちゃんがキラキラした目でそう太鼓判を押してくれるのだけど、裾は引きずっているしブカブカだし、多分似合ってはいないと思う……。
 でも私は調子に乗って右手を突き出して、訳あり品召喚ポーズをとってみる。

「凄いワン、本物の魔法使いみたいだワン!」
「あはは、そ、そうかな~」

 つい乗ってしまった。私はさりげなく反省する。
 晴れて主従関係を結んだ私達はパッド達を待つ間、暇を持て余していた為、大胆にもリヴァイアスさんのローブを試着していたのだ。
 リヴァイアスさんごめんなさい。

「ポケットの中に入っていいかワン」
「ん、ああ、ポケットってこれの事。勿論いいよ」

 カルちゃんが、ぴょんとジャンプして飛びついてくるのを受け止めると、ローブの胸部分についているポケットの中に入れる。
 浅いポケットみたいでカルちゃんの顔がチョコンと飛び出す。

「懐かしいワン。またこのポケットに入れるなんて至福のひと時だワン」
「あはは、そんな風に言ってもらえて私も嬉しいよ」
「ポケット最高ワン」

 そんなにポケットが好きなんだな、と私が微笑ましい気持ちになっていると、ふとある事を思い出す。

 パッドが言っていた、魔獣は絶滅したというフレーズ。それに……。

(パッド達は、リヴァイアスさんの遺産を探しに来たって言ってた)

 私がリヴァイアスさんのローブを持っていたらどう思うだろう。目利きの出来る商人が見れば、仕立ての良い、高価なローブだという事は簡単に見抜けるだろう。

 それにカルちゃんの事もある。パッドがそんな事をするとは思えないけど、絶滅したと言われている高値で取引されていたハーフの魔獣は商人にとっては格好の商売道具にならないだろうか。

 そもそも、カルちゃんは幽霊という事になるのだろうか。冷たいけど、抱きしめる事も出来るし、お手をした時に肉球を感じる事も出来る。

 私だけに見えていて、私だけカルちゃんに触れられるという事なのだろうか。
 
 色々な不安が脳内を駆け巡る。

「カルちゃんはこのダンジョンから脱出する方法を知ってるの?」
「勿論知ってるワンよ。大分長い事このダンジョンにいるワンから、抜け道を沢山見つけたワンよ」
「じゃあ、案内してもらう事は出来る?」
「勿論ワン!」

 急にいなくなったらパッド達が心配するかなと思ったけれど、パッド達のパーティーの中にもし悪い人がいたら?

 ローブを奪われたり、カルちゃんが連れ去られたりしたら困る。
 私は、カルちゃんの飼い主なのだ。それにさっきカルちゃんを守ると約束した。

 私はカルちゃんに言う。

「カルちゃんその抜け道を案内してもらう事は出来るかな」

 私の問いかけにカルちゃんは嬉しそうに頷いたのだった。

 ♪

「うっ、眩しい」
「久しぶりのお外だワン」

 湿気っぽくカビ臭いダンジョンの中にいたからか、外の空気が清々しい。
 あまりの眩しさに目を細める。

 私は後方を振り返り、改めてダンジョンの入り口を見てみる。岩壁にぽっかりと巨大な穴が開いていておどろおどろしい雰囲気を醸し出している。
 
(……私よくこんなおっかない場所の中に居れたな)

 と、自分を自分で褒めたくなる。
 でも、これから何処に行ったらいいのかな……。
 ふと、パッドの言葉を思い出す。

 ――商人ライセンスは実技もないし比較的簡単だから取りやすいよ。

(そうだ、その手があった。私は訳あり品召喚スキルで珍しい商品を仕入れる事が出来るし、それでお店を始めたら流行るんじゃない!)

 現世でも訳あり品が充実したお店は天国の様な場所だった。こっちの世界でだって訳あり品好きな人はいるはずだ。

「カルちゃん、私商人のライセンスを取りたい。どうすれば商人ライセンスを取れるの?」

 思い切ってカルちゃんに聞いてみる。見切り発車みたいでカルちゃんに呆れられるかなと思ったけどそんな事はなく丁寧に教えてくれた。

「商人ライセンスは、商業都市ラッセルにある商業ギルドの本部で試験を受ければ取れるワンよ。商業都市ラッセルは凄くお金持ちな町で、商人のお偉いさん達が負担して、無料の乗合馬車を出してるワンよ。それに乗っていけばあっという間ワンよ、早速行ってみるワン」
「うん、行ってみよう!」

 私はカルちゃんに案内され、商業都市ラッセル行きの乗合馬車乗り場に向かったのだった。
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