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肚の底の真実
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ああ、開き直られたのだなと思った。
最近のスピネル王は龍之介への寵愛を隠さなくなった。お渡りの数も段違いに多いし、滞在時間も長く、公務の合間にも顔を出す。
そして人目も憚らず彼を溺愛するようになった。それは部下の前でも、子供の前でも、他の妃たちの前でさえも、彼の目は如実に龍之介を特別だと物語っていた。
それは王の覚悟のようにも思えたし、酷く残酷な光景にも見えた。それまでの公平で穏やかな後宮は、ひとえにスピネル王の努力の賜物であると知れてしまったのだから。
(王妃様たちの絶望は、いかばかりか)
同情する一方で、エドワードとて愛するただひとりの人を害されていた。それはとても許すことの出来ない事柄で、同時にそれは己への罰にもなった。いかに自分が傲慢で怠慢であったかをまざまざと見せつけられた。愛する人が毒を盛られ嘔吐する様は、この先きっと一生瞼の裏から離れられない光景になるだろうとエドワードは覚悟する。
(その証拠に、王は閨へ自分を呼ばなくなった)
スピネルが自分と龍之介がセックスするところを見たがったのは、一方で冷静であろうとした証拠であるとエドワードは考えていた。
(自分とて、抱いている時は錯覚しそうになる。彼にとってのいちばんが、自分なのではないかと)
そのくらい、セックスの最中の龍之介は可愛いかった。どんな刺激にも敏感に反応して、よがって喘いでいやらしく鳴いて、縋ってくる。
あれで勘違いしない男はいないだろうと、そう思う。全てを征服したくなる。そして、何度でも抱きしめて、奥まではいりたくなる。
けれどふとした瞬間に気付くのだ。
彼に愛されている男は、自分だけではないのだと
(王は、残りの時間を思いのまま使う決心をなされたのだ)
その後、どんな顛末になろうとも、今のこの感情だけを優先したのだ。
その結果多くの者を傷つけ信頼を失ったとしても、それと引き換えにしてもよいと思えるほどに、愛してしまったのだろう。
恐らくは、自分と同じ、人間の彼を。
「エド、顔怖いぞ」
「………セスか」
「念願の護衛騎士になったのに、なんでそんな浮かない顔してるんだ?龍之介様は元気なのか?」
「元気でおられる。死にかけたというのに、怖いくらいに普段通りだ」
「へえ、肝が据わってるな」
でなけりゃあの王にあそこまで執着されないか、と虎の貌をした友人は遠い目をする。
彼とて本当は龍之介に懸想していた男のひとりだったろう。護衛騎士の選抜にも名乗りを上げていたのを知っている。勝利したのは、自分だったけれど。
「…誰のものでも構わないから、ずっとこの国にいてくれればいいのにな」
「…そうだな」
そうだなと、同意してからふと考える。
誰のものでも構わない?
本当にそうか?そうなのか?
(肚の底の真実をぶちまけてみろ)
思ってもみなかった醜悪な事実が、そこには隠されているのではないのか?
最近のスピネル王は龍之介への寵愛を隠さなくなった。お渡りの数も段違いに多いし、滞在時間も長く、公務の合間にも顔を出す。
そして人目も憚らず彼を溺愛するようになった。それは部下の前でも、子供の前でも、他の妃たちの前でさえも、彼の目は如実に龍之介を特別だと物語っていた。
それは王の覚悟のようにも思えたし、酷く残酷な光景にも見えた。それまでの公平で穏やかな後宮は、ひとえにスピネル王の努力の賜物であると知れてしまったのだから。
(王妃様たちの絶望は、いかばかりか)
同情する一方で、エドワードとて愛するただひとりの人を害されていた。それはとても許すことの出来ない事柄で、同時にそれは己への罰にもなった。いかに自分が傲慢で怠慢であったかをまざまざと見せつけられた。愛する人が毒を盛られ嘔吐する様は、この先きっと一生瞼の裏から離れられない光景になるだろうとエドワードは覚悟する。
(その証拠に、王は閨へ自分を呼ばなくなった)
スピネルが自分と龍之介がセックスするところを見たがったのは、一方で冷静であろうとした証拠であるとエドワードは考えていた。
(自分とて、抱いている時は錯覚しそうになる。彼にとってのいちばんが、自分なのではないかと)
そのくらい、セックスの最中の龍之介は可愛いかった。どんな刺激にも敏感に反応して、よがって喘いでいやらしく鳴いて、縋ってくる。
あれで勘違いしない男はいないだろうと、そう思う。全てを征服したくなる。そして、何度でも抱きしめて、奥まではいりたくなる。
けれどふとした瞬間に気付くのだ。
彼に愛されている男は、自分だけではないのだと
(王は、残りの時間を思いのまま使う決心をなされたのだ)
その後、どんな顛末になろうとも、今のこの感情だけを優先したのだ。
その結果多くの者を傷つけ信頼を失ったとしても、それと引き換えにしてもよいと思えるほどに、愛してしまったのだろう。
恐らくは、自分と同じ、人間の彼を。
「エド、顔怖いぞ」
「………セスか」
「念願の護衛騎士になったのに、なんでそんな浮かない顔してるんだ?龍之介様は元気なのか?」
「元気でおられる。死にかけたというのに、怖いくらいに普段通りだ」
「へえ、肝が据わってるな」
でなけりゃあの王にあそこまで執着されないか、と虎の貌をした友人は遠い目をする。
彼とて本当は龍之介に懸想していた男のひとりだったろう。護衛騎士の選抜にも名乗りを上げていたのを知っている。勝利したのは、自分だったけれど。
「…誰のものでも構わないから、ずっとこの国にいてくれればいいのにな」
「…そうだな」
そうだなと、同意してからふと考える。
誰のものでも構わない?
本当にそうか?そうなのか?
(肚の底の真実をぶちまけてみろ)
思ってもみなかった醜悪な事実が、そこには隠されているのではないのか?
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