悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第四章

ほいほい使える男、エリク

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 「転移ってのはもうちょっとこう……」

冒険者たちの一人がぼそっと呟く。横で治療をしていたドニが思わず同意する。

「ほんにな。……無詠唱な上にあれ、魔法陣を使わずにいっとるんじゃよ。今回は助かってるが……」

「あれは規格外」

ウージェーヌが同意すると呟いた冒険者がまぜっかえす。

「あんたが言うなよ。前庭にあんたが立った時からこの任務は失敗するって悟ったんだからな」

「失敗して良かったろ」

冒険者が頷いた。ついでにその冒険者は言う。

「そこの伸びてるやつが俺達に軍人の依頼を持ってきたやつだ。そいつ締めあげたら軍人側
の情報も手に入ると思う」

「そうか。……後でエリクにあいつらを王宮の地下に持って行ってもらわんとな」

ドニの言葉にウージェーヌが笑う。

「結局ドニ様もエリクを便利につかうでしょうが」

ドニがむむっと唸った。グランサニュー公爵が苦笑する。

「ウジェ、お手柔らかにな。ドニは儂ほどお前に慣れ取らんからな」

「でもエリクといるだろ?」

「……普段はエリクは神殿の仕事があるから」

ウージェーヌは納得いかなげな表情だった。小窓から捕虜たちを見ていたフロランが戻って来る。

「……だれか漏らしてるかも。眼の焦点会ってないやつが複数人いた」

「……ち、あいつら幻覚草キメてるかも」

リーダーがいう。一人が見張りに立ってる以外は大抵水たばこや幻覚草と呼ばれている軽い麻薬を吸っている事が多いらしいと。

「俺らはあの草の煙を吸わなくていいように入口近くに陣取ってたから」

「そうか。……王都での裏カジノ騒ぎの頃にはもう、あいつらに奥方を?」

ウジェの言葉にリーダーは頷く。



 いくつかの追加の情報を手に入れ、温かいスープを冒険者達に振舞う。そしてエリクが帰ってきた。

「さっくり向こうの国の大使を陛下が呼び出した」

「この時間に?」

「あっちの大使は王宮に常駐だからね。うちは大使館建てたけど。あの国はぞの経済的な部分でそういう経費は出し渋られる方だからね」

エリクは肩をすくめる。

「軍人たちは十分に怖い目にあってもらったから眠らせて来た」

「ほんと、エリク自由だな」

「そのための魔力」

冒険者たちは神殿でしかつめらしい顔で説教する神官長しかしらないのでぽかんとしている。そしドニが前の神官長だとは気が付いてないようだった。

「その……短い神官服って」

「野外活動用の神殿の制服だよ」

先行隊付きの冒険者の中の年若い、マドレーヌくらいの年齢の少年が訊ねる。彼は隣国で路地にいた孤児で12になったから冒険者に登録した日にこのパーティに拾われたのだという。路地以前の記憶が無いのでどこでさらわれたのかや情報がないのだという。

 アルはそんな話を聞きながら黙っている。しかしそう言う子供に対して出来る事、自分が出来る事はあるのだろうかと考えていた。

「うちの領地では一定の年齢になるまで基礎教育を神殿付きの孤児院で受けてもらってます。北の侯爵の所もそう。辺境はどこもスラム街がちいさいのです。家がどうあっても子供が食べて教育を受けられますから。……俺ら、魔獣の相手が忙しくてスラムまで面倒見切れないから逆にそういう部分をしっかり手当するんです」

フロランが辺境の事にかこつけてアルにほんの少しヒントを与える。

「最終的に自活が出来る、稼げるようになってもらうのが目的です。ギルドが冒険者に基礎教育の機会を作るのと同じですね」
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