悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

文字の大きさ
上 下
165 / 212
第四章

結界の中の冒険者

しおりを挟む
 真夜中のショーが始まった。小窓を覗く騎士達も薄笑いになって戻っていく。それは公爵達もだった。冒険者の方は慣れているのかこの辺りの獣が来ても顔色も変わらないのだが兵士は雪角が雪狼が結界をつつくたびに怯えている。またちょくちょく結界の周りを黒い靄っぽいものがいったり来たりしている。

「ふむ。じゃ侯爵」

「ん?」

「リーダーに話が聞けると思います?」

「どうだろうな。やってみるが。ウジェの方がいいのでは?」

「そうかなぁ。侯爵は寛大なふり、出来ますよね?」

「ふむ、物事にこだわらない方のたちではあるかな」

「じゃ、リーダーを任せます。ウジェはリーダー以外の知り合いから情報を」

「まずは白湯かの」

ドニが白湯を用意し始める。



 エリクは黒い布を被ると外の結界の中に転移し、10人ほどの冒険者達を連れてドームの中に入った。そしてドームの中央に設えてあるテーブルに冒険者を座らせる。

「手の縄をほどきますね。暴れないでくださいね」

エリクは最初に厳つい男の手首の縄を解いた。その男は好機と見たのかエリクを人質に取ろうと動いたのだが、動いた瞬間にウージェーヌの足先がその男の頭を左から右に薙ぎ払った。そして公爵がささっと魔道具の魔力と膂力を封じる腕輪と足環を着けて膝を荒縄で縛る。

「おっちゃん、意外と縛るの上手いね」

「うちの子供は悪ガキばっかでな。長男は特にな。長男と長女は縛って木に吊るしてたことあるな」

「こいつも吊るせる?」

ウージェーヌとグランサニュー公爵は呑気な会話をかわしている。

「で、ジョスよ」

北の侯爵が穏やかにリーダーに声をかける。

「何故お前はそっち側にいる?」

「……おやっさん、すんません。俺達は……」

「まず、何故隣国の軍隊に協力したのか教えてくれ」

リーダーが答える事をためらっているのでメンバーの一人が声を出した・

「リーダーたちは、奥方を抑えられてる。娘を抑えられたメンバーもいる。俺達はリーダーを助けたくて協力した。あいつらの上官がアルノー伯と取引があるらしく俺達はここへ案内させられた」

侯爵は頷いた。

「……女たちはもう、正気を保ってないと思う。アルノー伯が用意した媚薬の実験台に使われたみたいだ」

「でも見捨てられないだろう?」

侯爵の声が優しい。リーダーは唇を噛んでいた。

「国は関わってるか?」

リーダーは小さく首を横に振る。

「今回はより強力な薬が用意できたっていう取引で、軍人どもの上司は今」

「あ、向こうの国は建国祭の準備か」

「そうなんだ。で、腹心を使ってここでアルノー伯を待ってたんだが約束の期日を越えてもこない。今の時期は狩りの季節だから知り合いにでも捕まってるのかって奴らは考えて期日から今日で20日なんだが。あいつらはなにかやらかしたらしくて……国に帰りづらい状態らしくて」

こういう話をリーダーはぼそぼそ細切れに話した。冒険者のうち3人が元が聖水の白湯に苦味を感じたのでドニが三人を治療していた。

「おっちゃん。ここから帰ったら即陛下に知らせてくれ」

ウージェーヌは別の知人から聞いたリーダー達の家族に対する狼藉をグランサニュー公爵へつげた。エリクが気軽に言う。

「紙でまとめてくれたらちょっと自分が行ってくるけど?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。

音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日…… *体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

野生児少女の生存日記

花見酒
ファンタジー
とある村に住んでいた少女、とある鑑定式にて自身の適性が無属性だった事で危険な森に置き去りにされ、その森で生き延びた少女の物語

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

処理中です...