133 / 212
第三章
マリアンヌの部屋で
しおりを挟む
「そうなんですか?」
エリクが話を引き取る。アルはゆっくりとした姿勢から椅子に腰かける形に姿勢を変える。開いた膝の上に肘をおいて胸の前ので手を組む形になった。
「で、ちょっとおくすりが効きすぎて色々はなしてくれたんだよ、正妃がね」
エリクが無表情で話す。
「生活魔法は教えてもらって難なく使えましたよ」
アルが報告する。
「生活魔法は庶民の低魔力でも手軽に使えるからね。……庶民は全く魔力がない人間もいるから魔法の杖が販売されてるんだけど」
「魔法の杖?」
アルは魔術師達が持っている杖を連想する。
「あー、クズ魔石を使った生活魔法を規定回数使える杖があるんだ。クリアとかの杖」
「そういうのがあるんですね」
「そうそう。君らが持って帰ってきてた冒険者用の黒の大陸の商会のカタログにも色々のってるよ、こっちだと結局東の商会が暫くは取り扱ってくれるらしいよ。大元の商会と東の国の商会は協力関係にあるらしい」
エリクが説明してくれる。あるはふと堅物だった側近候補の神殿の神官見習いだった友人を思い出しエリクに消息を聞いた。
「ジャンは今は?」
「……神殿から離れてる。から私は知らない」
エリクはすらっと答えた。アルは状況が落ち着いたら領地にでも連絡するか、と思った。ジャンは子爵の三男坊で、お付き候補の侯爵家の親戚でそこの侯爵子息のお付きとして王宮に来ていた少年の一人だった。
その侯爵嫡男はあまりに傍若無人でアルの『ご学友』候補からは早々に外れたがその時に子分よろしく引き連れていた数人の伯爵令息や子爵令息はそのままアルが一般的授業を受ける時に一緒に勉強していた。
幾人かの『ご学友』候補は学園に行く直前のアルの『病気療養』で会社員で言うところの『解雇』扱いになった。そして別件で内々ちに処分された。ジャンは連帯責任で神官候補を降ろされて領地へ帰ったのだ。
エマはちょくちょくマリアンヌの部屋を訪れている。マリアンヌがエマを敬愛している事、フロランが精霊につつかれてエマにマリアンヌと会話してくれと頼んできた事もあった。フロラン曰く、マリアンヌは精霊が見えたりはしないようだけど好かれてるから、と。精霊が心配してると。
家族に対しては甘えてはいるが心を閉ざしている感じがする、とジョアンからもエマは愚痴られていた。ジョアンとエマはすっかり温泉友達になっている。
「長男のマティアスはあんまり内政に向いてないのよね」
エマはマリアンヌに自分の子供の話をする。2男2女を産んだエマは娘二人は普通の子に育ったのに息子二人はちょっと変わり者が二人育ったと笑う。
「うちは長男のクロードは特出した力はないけど全方位平均点以上上位以下って感じですわね」
マリアンヌに着いている祖母がそうジャッジを下す。
「あら、そうなの?」
祖母の手にもマリアンヌの手にもレース編み用のタティングが握られている。これも長く仕上げて神殿のバザーに出すのだとか。ぽつり、とマリアンヌが呟く。
「エマ様、……アルノー家はどうなってます?」
エマは感情を消した声で答える。
「まだ何もわからないの。夫たちが調査してるみたい」
マリアンヌが顔を上げる。
「……奥様は御無事なんでしょうか?」
「けがとかはないわ。外向きには出てないみたい。ちょっとアランとマドレーヌちゃんの件が響いてるから社交とかはしておられないわ」
エマはエマが知っている事だけを答えた。
エリクが話を引き取る。アルはゆっくりとした姿勢から椅子に腰かける形に姿勢を変える。開いた膝の上に肘をおいて胸の前ので手を組む形になった。
「で、ちょっとおくすりが効きすぎて色々はなしてくれたんだよ、正妃がね」
エリクが無表情で話す。
「生活魔法は教えてもらって難なく使えましたよ」
アルが報告する。
「生活魔法は庶民の低魔力でも手軽に使えるからね。……庶民は全く魔力がない人間もいるから魔法の杖が販売されてるんだけど」
「魔法の杖?」
アルは魔術師達が持っている杖を連想する。
「あー、クズ魔石を使った生活魔法を規定回数使える杖があるんだ。クリアとかの杖」
「そういうのがあるんですね」
「そうそう。君らが持って帰ってきてた冒険者用の黒の大陸の商会のカタログにも色々のってるよ、こっちだと結局東の商会が暫くは取り扱ってくれるらしいよ。大元の商会と東の国の商会は協力関係にあるらしい」
エリクが説明してくれる。あるはふと堅物だった側近候補の神殿の神官見習いだった友人を思い出しエリクに消息を聞いた。
「ジャンは今は?」
「……神殿から離れてる。から私は知らない」
エリクはすらっと答えた。アルは状況が落ち着いたら領地にでも連絡するか、と思った。ジャンは子爵の三男坊で、お付き候補の侯爵家の親戚でそこの侯爵子息のお付きとして王宮に来ていた少年の一人だった。
その侯爵嫡男はあまりに傍若無人でアルの『ご学友』候補からは早々に外れたがその時に子分よろしく引き連れていた数人の伯爵令息や子爵令息はそのままアルが一般的授業を受ける時に一緒に勉強していた。
幾人かの『ご学友』候補は学園に行く直前のアルの『病気療養』で会社員で言うところの『解雇』扱いになった。そして別件で内々ちに処分された。ジャンは連帯責任で神官候補を降ろされて領地へ帰ったのだ。
エマはちょくちょくマリアンヌの部屋を訪れている。マリアンヌがエマを敬愛している事、フロランが精霊につつかれてエマにマリアンヌと会話してくれと頼んできた事もあった。フロラン曰く、マリアンヌは精霊が見えたりはしないようだけど好かれてるから、と。精霊が心配してると。
家族に対しては甘えてはいるが心を閉ざしている感じがする、とジョアンからもエマは愚痴られていた。ジョアンとエマはすっかり温泉友達になっている。
「長男のマティアスはあんまり内政に向いてないのよね」
エマはマリアンヌに自分の子供の話をする。2男2女を産んだエマは娘二人は普通の子に育ったのに息子二人はちょっと変わり者が二人育ったと笑う。
「うちは長男のクロードは特出した力はないけど全方位平均点以上上位以下って感じですわね」
マリアンヌに着いている祖母がそうジャッジを下す。
「あら、そうなの?」
祖母の手にもマリアンヌの手にもレース編み用のタティングが握られている。これも長く仕上げて神殿のバザーに出すのだとか。ぽつり、とマリアンヌが呟く。
「エマ様、……アルノー家はどうなってます?」
エマは感情を消した声で答える。
「まだ何もわからないの。夫たちが調査してるみたい」
マリアンヌが顔を上げる。
「……奥様は御無事なんでしょうか?」
「けがとかはないわ。外向きには出てないみたい。ちょっとアランとマドレーヌちゃんの件が響いてるから社交とかはしておられないわ」
エマはエマが知っている事だけを答えた。
7
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。

前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる