悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第三章

マリアンヌの部屋で

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 「そうなんですか?」

エリクが話を引き取る。アルはゆっくりとした姿勢から椅子に腰かける形に姿勢を変える。開いた膝の上に肘をおいて胸の前ので手を組む形になった。

「で、ちょっとおくすりが効きすぎて色々はなしてくれたんだよ、正妃がね」

エリクが無表情で話す。

「生活魔法は教えてもらって難なく使えましたよ」

アルが報告する。

「生活魔法は庶民の低魔力でも手軽に使えるからね。……庶民は全く魔力がない人間もいるから魔法の杖が販売されてるんだけど」

「魔法の杖?」

アルは魔術師達が持っている杖を連想する。

「あー、クズ魔石を使った生活魔法を規定回数使える杖があるんだ。クリアとかの杖」

「そういうのがあるんですね」

「そうそう。君らが持って帰ってきてた冒険者用の黒の大陸の商会のカタログにも色々のってるよ、こっちだと結局東の商会が暫くは取り扱ってくれるらしいよ。大元の商会と東の国の商会は協力関係にあるらしい」

エリクが説明してくれる。あるはふと堅物だった側近候補の神殿の神官見習いだった友人を思い出しエリクに消息を聞いた。

「ジャンは今は?」

「……神殿から離れてる。から私は知らない」

エリクはすらっと答えた。アルは状況が落ち着いたら領地にでも連絡するか、と思った。ジャンは子爵の三男坊で、お付き候補の侯爵家の親戚でそこの侯爵子息のお付きとして王宮に来ていた少年の一人だった。
 その侯爵嫡男はあまりに傍若無人でアルの『ご学友』候補からは早々に外れたがその時に子分よろしく引き連れていた数人の伯爵令息や子爵令息はそのままアルが一般的授業を受ける時に一緒に勉強していた。
 幾人かの『ご学友』候補は学園に行く直前のアルの『病気療養』で会社員で言うところの『解雇』扱いになった。そして別件で内々ちに処分された。ジャンは連帯責任で神官候補を降ろされて領地へ帰ったのだ。



 エマはちょくちょくマリアンヌの部屋を訪れている。マリアンヌがエマを敬愛している事、フロランが精霊につつかれてエマにマリアンヌと会話してくれと頼んできた事もあった。フロラン曰く、マリアンヌは精霊が見えたりはしないようだけど好かれてるから、と。精霊が心配してると。
 家族に対しては甘えてはいるが心を閉ざしている感じがする、とジョアンからもエマは愚痴られていた。ジョアンとエマはすっかり温泉友達になっている。

「長男のマティアスはあんまり内政に向いてないのよね」

エマはマリアンヌに自分の子供の話をする。2男2女を産んだエマは娘二人は普通の子に育ったのに息子二人はちょっと変わり者が二人育ったと笑う。

「うちは長男のクロードは特出した力はないけど全方位平均点以上上位以下って感じですわね」

マリアンヌに着いている祖母がそうジャッジを下す。

「あら、そうなの?」

祖母の手にもマリアンヌの手にもレース編み用のタティングが握られている。これも長く仕上げて神殿のバザーに出すのだとか。ぽつり、とマリアンヌが呟く。

「エマ様、……アルノー家はどうなってます?」

エマは感情を消した声で答える。

「まだ何もわからないの。夫たちが調査してるみたい」

マリアンヌが顔を上げる。

「……奥様は御無事なんでしょうか?」

「けがとかはないわ。外向きには出てないみたい。ちょっとアランとマドレーヌちゃんの件が響いてるから社交とかはしておられないわ」

エマはエマが知っている事だけを答えた。
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