悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第三章

嘘は言わない

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 「マドレーヌ、お願いがいあるの」

久しぶりにマリアンヌからの発言だった。

「……アルノーの家の事なら調べないからね」

マドレーヌはさすがに生まれた時からマリアンヌと付き合っているだけあってマリアンヌの言いそうな事は判っていた。

「アレン……どうしてるかと思って」

マリアンヌは泣きそうな顔になる。

「……あの人のせいでマリアンヌは怪我したのよ?判ってる?それとアルノーの件には私は首を突っ込むなってクロード兄さんに言われてる」

マリアンは溜息をついた。クロードがそう言っているという事はマドレーヌも従う。それは兄妹感のルールであった。フロランでさえクロードには逆らわない。ただクロード自身が上から押さえつけるだけの兄ではなかったので4兄妹の中はおおむね良好であある。フロランがマリアンヌの甘えにいら立っているのはある。
 実はクロードは一番マリアンヌに甘い。そしてマドレーヌに対して無意識で妹と思っていなさそうなところがある。クロードの無意識の中でフロランとマドレーヌは同じ狩人でマリアンヌは後方の庇護する相手という感覚があるのだ。

 マドレーヌは一つ溜息をついた。エリクに教えられていた言葉をマリアンヌに告げる。

「……神官様に聞いたのは『アレンは死んではいない。ただし今後意識を取り戻すかどうかは判らない』って。今、神殿で治療中だって」

グランジエ家の人々はエリクにもしマリアンヌにアレンの事を聞かれたら現状を正直に話すようにと言われたのだ。理由は『生きてる、だけだったら変な希望を抱くでしょう。間違った認識は狂気に繋がりますから。辺境で狂気は命取りです。……アレン自身が教えてくれましたね』、と。皆、それはわかり切った話でエリクの言葉に納得した。動けるようになったマリアンヌにふらふらと魔の森をうろつかれたくない。

 後でマリアンヌがマドレーヌにアルノー家の事を聞いたと知ったフロランはまた爆発していた。それ以降、フロランはマリアンヌの顔を見ないように生活し、実質マリアンヌが若くに亡くなるまで一度も顔を合わせなかった。次のマリアンヌとフロランの再会は葬式の時であった。この後、マリアンヌは10年程度で祖母よりも先に亡くなる。祖母は『アルノーの長男が連れて行っちゃったのかもね』と呟いた。



 エマが北を意味する石を代える日、陛下がへろって転移してくる。この位置への転移は既に羊皮紙に描いた陣がなくても出来るようになったという。頭の中に正確に陣を再構築できる、と言う事なのでなかなか高度な技だが陛下は出来て当たり前じゃないの?という態度であった。

「ほら、見たまま頭の中に再現すればいいだけなんだから」

「んなもん、簡単にできるか」

グランサニュー公爵も参加していた。アルもいる。陛下は執務中を抜けて来たのかシャツ一枚の軽装でくしゃみを連発する。

「父上、お寒いでしょう」

アルが頭からかぶっていた皮のチュニックを脱いで父親に渡す。陛下はむやみと嬉しそうだ。

「もう俺より肩幅も広いし手も長いんだな」

チュニックを着ながら陛下はそんなことを呟いた。
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