悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第二章

公爵夫人もじゃじゃ馬である模様

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 ひらひらと弱々しい蝶がグランサニュー公爵の家の守護者の樹にとまる。守護者はその蝶々を手にとめると蝶々はゆるりと手紙の形に変化した。

「俺は無事」

そんな短文が書かれた手紙だった。

「ちょっと遠いか」

守護者はそうつぶやいて、暫く考えていた。グランサニュー公爵が朝の挨拶に守護者の元に顔を出した。最近守護者はこちらの結界の修復に司茂ク通っている、という事になっている。陛下に対しては。黒魔術集団にしたら陛下が一番好悪略しやすい対象なのであの手この手で陛下を篭絡しようとしていてどこで陛下が穴になるか判らないからだ。

 『届くには届いたが……、もう少し近づいた方が良いな、手紙が儚い』

 公爵にもその意味は判った。手紙自身が何か存在感が薄いのだ。

『なぁ、ギルドはどうやって荷物を運んでいるんだ?他国にもあまり期間を置かず届くだろう?』

守護者が疑問をもった。

「ふむ?ちょっとギルドに話を聞いてみるか」

『頼んだぞ』


 数日後、公爵がギルド相手に悪戦苦闘している間にウージェーヌがマドレーヌとアルにかけあって、次の国への移動をギルドや他の転移システムをつかわせてもらい次の国で何件か討伐とか依頼をこなす、を繰り返して砂の王都まで行け、と指示を出した。時間を少しでも短縮して少しでも早く帰ってこい、と。それはアルの母親の為であると丸め込んだのだ。ウージェーヌはグランサニュー公爵とジェラールに報告しニヤリと笑う。

『こっちの要件を通したいなら向こうの要件も、ね』

と真面目な顔で言った。マドレーヌのあきれ顔と、丸め込まれて困惑しているアルを思い浮かべて守護者は笑った。どちらも最期に見た時の子供の姿のままであった。
 アルが7才のころ辺境伯がやはりこの家に集まった事があった。その時は陛下が事前に静養という名目で正妃を少し離れた大国の有名リゾートに送り込んでいたので今回のような邪魔は入らなかった。その時のお気に入りの魔術師と近衛も特別につけてやっていた。
(その時の報告書は外に出せないくらい爛れたもので宰相と陛下で頭を抱えた。また費用も法外なものでそのお忍び旅行だけで、王族用の歳費、3年分が飛んでいた。半額受け持ったベルティエ公爵家ですら一時傾いたぐらいの額だった)
 その時に未だ赤ん坊のマドレーヌと7才のアルは逢っているのだが二人とも記憶がない。アルに残っている7才の記憶は少し年上のクロードに遊んでもらったことだった。公爵夫人を散々怒らせたの記憶もある。
 滑りの良い厚手のカーテンを外して外の芝生で少しだけ坂になっている場所で『草ソリ』をしたのだ。カーテンの件も怒られたが、そこは芝生を育てていた場所で生えそろったところの芝生をその場にいた数人の男の子でダメにしてしまったのだ。グランサニュー公爵は良い子一辺倒だったアルのそんな面にものすごく喜んでいたが。



 「ウジェはこちらの懸念をかなり減らしてくれたな」

公爵の言葉に夫人は熱いお茶を入れながらにっこりほほ笑んだ。

「あの子は人たらしだものねぇ。貴方が籠絡されるわけだわ。……最初は魅了持ちだと疑ったくらい」

夫人がにこやかに笑いながら公爵に言う。

「貴方、私来月には西の辺境に伺いたいの」

「理由は」

舌を焼きそうに熱い紅茶の香りを公爵は楽しんでいる。

「あちらの銀の樹を育てておこうかと。今回の件で信頼できる通信手段があった方がいいでしょう?」

夫人の言葉に公爵は顎を一撫でする。

「質の良い魔石を17個と大量のポーションを用意してほしいの」

「ふむ」

「それと寝心地の良いテント。……テントは一週間ほどこっちで実験して理由を教えてあげるから早急に手配してね」

公爵にはさわさわと守護者の同意と喜びの意が届けられた。
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