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第一章
アレン、グランジエ領を訪う。
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魔獣退治が落ち着きつつあるころ、アレンはグランジエ猟を訪った。
「本当に来たんだな」
「ええ」
アレンはクロードににこやかに返事をする。
「マリアンヌ嬢がお得意だというウサギのパイもいただきたくて」
アレンが言うとクロードはちょっと不思議そうな顔になる。
「この時期だと俺らもマリアンヌももてなせないぞ?というか……客人よ、まずは父の所に案内するのが先だな」
アレンはクロードに着いて行く。何故伯爵はこの時期に自分を呼んだのかとアレンは不思議だった。
「よく来たね、アレン君。……お付きとかは?」
「いません。ここまでは乗合馬車で来ましたから」
クロードはちょっと感心したようだった。
「アルノー伯爵は反対しなかったのかい?」
「しましたが、母が押し切って……馬車の中はここに来るギルド職員の人と一緒に乗ってました」
「妥当な判断かな。はじめての乗合馬車はどうだった?」
「色んな人がいました」
アレンは興奮気味だった。母親は時々こういう馬車を利用して実家に帰ったりしているらしい。母の実家は王都の端でどう見ても長閑な農家だった。祖父母の趣味らしい。実家を継いだ母の兄は王都の真ん中でグリモー侯爵家の事務を主に担っているとか。
「そういう経験は貴族んでも必要だと思ってるんだ、僕は」
自分の父と年代が同じのはずなのにどう見ても青年にしかみえないウージェーヌをアランは不思議なものを見る気持ちで見ている。
「さて、この時期に来てほしいと言った意味なんだけどね」
にっこりとウージェーヌが笑い、年上の男性の色気にアレンは計らずもどきりとした。
「まずはグランジエ家の一番グランジエ家らしい所を見て欲しいと思ってね。それがメインだけど、この時期だと猪とか鹿とかのジビエが取れるからね。マリアンヌの料理の腕を確かめてくれ。旨かったらちゃんと旨いっていってあげて欲しい」
「はい」
アレンは返事をしながらウージェーヌの父親らしいところを見てほっこりした。
マリアンヌは母親と一緒に大きな猪をさばいていた。アランはそれを眺めていた。血が粘膜に着かないようにと大きな布で鼻から下を覆い目元はガラス製のカバーをしている。手袋をつけ、長いナイフで猪を美味しそうな肉の塊にしている姿は勇ましくも恰好良いとアレンは思った。
猪の肉があらかた片付いたところで、アレンは執事に連れられてこの家のサロンに座っ
た。暫くするとこの家の女主人のジョアンと娘のマリアンヌが顔をだした。
アレンはマリアンヌを見ると『ああ、やはりこの人はいいなぁ』と思う。柔らかそうな
金茶の紙を動きやすくまとめて、ワンピースも質素な青い仕事着であったがアレの目に
はマリアンヌは清楚で可憐な少女と映っている。
「いらっしゃいませ、アレン様。もうしばらくバタバタしますが夕食時はゆっくりお話し
する時間もあると思います。マリアンヌももうしばらく忙しいので、早めにお返しくださ
いね」
ジョアンはそう言うとにこやかに笑ってその場を離れた。
「……顔も見れましたし、ゆっくり話すのは夕食時で」
マリアンヌは顔を上げてアレンに告げた。
「図書室まで案内する時間位ありますわ。立派な図書室ではないですけど……、ご自宅と
は違う本もあろうかと思いますし、覗いてみませんか?」
「そうですね、それは興味深い。図書室に案内してもらえますか?」
ふたりはこれと言って会話をせず廊下をゆっくりと図書室まで歩いた。
「本当に来たんだな」
「ええ」
アレンはクロードににこやかに返事をする。
「マリアンヌ嬢がお得意だというウサギのパイもいただきたくて」
アレンが言うとクロードはちょっと不思議そうな顔になる。
「この時期だと俺らもマリアンヌももてなせないぞ?というか……客人よ、まずは父の所に案内するのが先だな」
アレンはクロードに着いて行く。何故伯爵はこの時期に自分を呼んだのかとアレンは不思議だった。
「よく来たね、アレン君。……お付きとかは?」
「いません。ここまでは乗合馬車で来ましたから」
クロードはちょっと感心したようだった。
「アルノー伯爵は反対しなかったのかい?」
「しましたが、母が押し切って……馬車の中はここに来るギルド職員の人と一緒に乗ってました」
「妥当な判断かな。はじめての乗合馬車はどうだった?」
「色んな人がいました」
アレンは興奮気味だった。母親は時々こういう馬車を利用して実家に帰ったりしているらしい。母の実家は王都の端でどう見ても長閑な農家だった。祖父母の趣味らしい。実家を継いだ母の兄は王都の真ん中でグリモー侯爵家の事務を主に担っているとか。
「そういう経験は貴族んでも必要だと思ってるんだ、僕は」
自分の父と年代が同じのはずなのにどう見ても青年にしかみえないウージェーヌをアランは不思議なものを見る気持ちで見ている。
「さて、この時期に来てほしいと言った意味なんだけどね」
にっこりとウージェーヌが笑い、年上の男性の色気にアレンは計らずもどきりとした。
「まずはグランジエ家の一番グランジエ家らしい所を見て欲しいと思ってね。それがメインだけど、この時期だと猪とか鹿とかのジビエが取れるからね。マリアンヌの料理の腕を確かめてくれ。旨かったらちゃんと旨いっていってあげて欲しい」
「はい」
アレンは返事をしながらウージェーヌの父親らしいところを見てほっこりした。
マリアンヌは母親と一緒に大きな猪をさばいていた。アランはそれを眺めていた。血が粘膜に着かないようにと大きな布で鼻から下を覆い目元はガラス製のカバーをしている。手袋をつけ、長いナイフで猪を美味しそうな肉の塊にしている姿は勇ましくも恰好良いとアレンは思った。
猪の肉があらかた片付いたところで、アレンは執事に連れられてこの家のサロンに座っ
た。暫くするとこの家の女主人のジョアンと娘のマリアンヌが顔をだした。
アレンはマリアンヌを見ると『ああ、やはりこの人はいいなぁ』と思う。柔らかそうな
金茶の紙を動きやすくまとめて、ワンピースも質素な青い仕事着であったがアレの目に
はマリアンヌは清楚で可憐な少女と映っている。
「いらっしゃいませ、アレン様。もうしばらくバタバタしますが夕食時はゆっくりお話し
する時間もあると思います。マリアンヌももうしばらく忙しいので、早めにお返しくださ
いね」
ジョアンはそう言うとにこやかに笑ってその場を離れた。
「……顔も見れましたし、ゆっくり話すのは夕食時で」
マリアンヌは顔を上げてアレンに告げた。
「図書室まで案内する時間位ありますわ。立派な図書室ではないですけど……、ご自宅と
は違う本もあろうかと思いますし、覗いてみませんか?」
「そうですね、それは興味深い。図書室に案内してもらえますか?」
ふたりはこれと言って会話をせず廊下をゆっくりと図書室まで歩いた。
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