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第一章
娘のトラブル引き寄せ体質に苦笑する
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ウージェーヌは冒険者ギルドに送ってもらう馬車の中で手紙を開けた。手紙は魔法を解除した時の独特の悪臭が一瞬漂う。生理的に受け付けない匂いだなとウージェーヌは思いながらマドレーヌからの手紙を読み始めた。
『黒百合が助けを求めてる』
その一文とそれを発した人物の容姿の詳細、マドレーヌが抱いた印象が認められていた。ウージェーヌは何も言わず、手紙に再度個人認証の魔法をかけた。勝手に開けたらその場で捕縛の魔法が発動するようにあからさまに、わかるようにかけておいた。
「さて、と。やっぱりマドレーヌは運が……良い、のか?これ」
ウージェーヌは頭を抱える。問題のど真ん中に突っ込んでいくその性質はなんなんだ、と思ってしまう。そもそもアランとの婚約が問題だったかとも思った。
アランは気位が高い、と思っていたがそこに努力嫌いの男尊女卑がついていた。マドレーヌが騎士科に入る為に努力するのを嫌い、『女は男の後ろで控えていればいい』という態度を崩さないアラン。マドレーヌは冷静に冷たい視線でアランを観察していた。
『なにか文句あるのか』
と荒ぶるアランにマドレーヌは何も言わず小首を傾げてにっこりと笑うだけであった。
『貴方の言う通りにしております。女が口を開くなと申された故』
そう言ってにっこり笑いまた黙る。傍で見ていても木で鼻をくくった、というのはこういう態度か、とウージェーヌは思った。マドレーヌはぜったいマリアンヌをアランにあわせなかった。マリアンヌの纏う空気は必ずアランが気に入るであろうと。大人しやかで控えめで、他人を癒す柔らかい雰囲気のマリアンヌをあの暴君は気に入るであろうし。蹂躙しようとするのは目に見えてるとマドレーヌは思っていた。
そんなマドレーヌの様子にウージェーヌとジョアンは『婚約失敗かな』と話し合い、アランの身上調査をした。でるわでるわ、確かにネイサンとは仲が良いようだ。ネイサンにしたらはじめての同年代の友達だったようだ。アランと付き合いだしてからネイサンの評判は下降の一方で、逆にアランの悪評は多少軽減していた。
そしてバスチエ男爵令嬢の存在と、複数人の女性の遊び相手の事。遊び相手は全て正妃の手のものの娘であった。
その報告書を読んだ時、クロードやフロランは『なんで王妃がこんな胡散臭い人間集めたんだ?それこそスキャンダルまみれになるだろうに』と不思議がっていたが、ウージェーヌは正妃の母親の伝手からだろうなぁと悟っていた。
ウージェーヌはそっとギルドから自宅へ向かった。自宅の執務室に滑り込んだところ、妻のジョアンがウサギのローストと黒パン、自家製のワインをもって来てくれた。
「夕飯は皆済ませたの。ありもので悪いけど」
「上等。君もワインを一緒に飲むかい?」
「そうね、頂くわ」
ジョアンはこれは夫は話す気が無いんだと思っていた。
「個人認証の手紙に血がついていてね。北の侯爵の所に行っていた」
ウージェーヌは黒パンに切り込みを入れると付け合わせの野菜とローストされたウサギ肉を挟み食べ始めた。
「どなたがそんなことを?」
「王宮の聖女」
「……正妃様の傀儡ですか」
正妃も聖女も社交界の女性からは嫌われている。それは正妃が幼い令嬢時代から続いていた。聖女は友達がいない正妃の為に友達役として宛がわれた騎士の娘であった。二人の関係は子供の時から変わらない。
前公爵は娘にとことん甘く、色々な方面で不義理をしていたらしく現公爵がなんとか立て直したようだった。
ウージェーヌは娘と『黒百合』連れ戻すのは急務になったなと頭を抱えた。
『黒百合が助けを求めてる』
その一文とそれを発した人物の容姿の詳細、マドレーヌが抱いた印象が認められていた。ウージェーヌは何も言わず、手紙に再度個人認証の魔法をかけた。勝手に開けたらその場で捕縛の魔法が発動するようにあからさまに、わかるようにかけておいた。
「さて、と。やっぱりマドレーヌは運が……良い、のか?これ」
ウージェーヌは頭を抱える。問題のど真ん中に突っ込んでいくその性質はなんなんだ、と思ってしまう。そもそもアランとの婚約が問題だったかとも思った。
アランは気位が高い、と思っていたがそこに努力嫌いの男尊女卑がついていた。マドレーヌが騎士科に入る為に努力するのを嫌い、『女は男の後ろで控えていればいい』という態度を崩さないアラン。マドレーヌは冷静に冷たい視線でアランを観察していた。
『なにか文句あるのか』
と荒ぶるアランにマドレーヌは何も言わず小首を傾げてにっこりと笑うだけであった。
『貴方の言う通りにしております。女が口を開くなと申された故』
そう言ってにっこり笑いまた黙る。傍で見ていても木で鼻をくくった、というのはこういう態度か、とウージェーヌは思った。マドレーヌはぜったいマリアンヌをアランにあわせなかった。マリアンヌの纏う空気は必ずアランが気に入るであろうと。大人しやかで控えめで、他人を癒す柔らかい雰囲気のマリアンヌをあの暴君は気に入るであろうし。蹂躙しようとするのは目に見えてるとマドレーヌは思っていた。
そんなマドレーヌの様子にウージェーヌとジョアンは『婚約失敗かな』と話し合い、アランの身上調査をした。でるわでるわ、確かにネイサンとは仲が良いようだ。ネイサンにしたらはじめての同年代の友達だったようだ。アランと付き合いだしてからネイサンの評判は下降の一方で、逆にアランの悪評は多少軽減していた。
そしてバスチエ男爵令嬢の存在と、複数人の女性の遊び相手の事。遊び相手は全て正妃の手のものの娘であった。
その報告書を読んだ時、クロードやフロランは『なんで王妃がこんな胡散臭い人間集めたんだ?それこそスキャンダルまみれになるだろうに』と不思議がっていたが、ウージェーヌは正妃の母親の伝手からだろうなぁと悟っていた。
ウージェーヌはそっとギルドから自宅へ向かった。自宅の執務室に滑り込んだところ、妻のジョアンがウサギのローストと黒パン、自家製のワインをもって来てくれた。
「夕飯は皆済ませたの。ありもので悪いけど」
「上等。君もワインを一緒に飲むかい?」
「そうね、頂くわ」
ジョアンはこれは夫は話す気が無いんだと思っていた。
「個人認証の手紙に血がついていてね。北の侯爵の所に行っていた」
ウージェーヌは黒パンに切り込みを入れると付け合わせの野菜とローストされたウサギ肉を挟み食べ始めた。
「どなたがそんなことを?」
「王宮の聖女」
「……正妃様の傀儡ですか」
正妃も聖女も社交界の女性からは嫌われている。それは正妃が幼い令嬢時代から続いていた。聖女は友達がいない正妃の為に友達役として宛がわれた騎士の娘であった。二人の関係は子供の時から変わらない。
前公爵は娘にとことん甘く、色々な方面で不義理をしていたらしく現公爵がなんとか立て直したようだった。
ウージェーヌは娘と『黒百合』連れ戻すのは急務になったなと頭を抱えた。
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