悪役令嬢、冒険者になる 【完結】

あくの

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第一章

短編 バスチエ男爵夫人

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 夫の子供の事は知っていた。……でもこの名前はない。私の名はレディというのだけど……リディって!

「ほ、ほら。君も親しみが持てるだろ、自分の名前に近いからって。自分の子供みたいで」


 夫とは遠縁で男爵を継ぐ私を他家に取られない為に父がさがしてきた相手だった。お金と教育を受けさせる事で縛り6歳から一緒に暮らした。18と16で結婚したころには既に外に子供を作っていた。父は親戚フィルターで目が曇っていたのか、男の甲斐性と思っていたのかは知らない。3年前父が逝き、私が家督を継いだ。夫は自分にもチャンスがあると思っていたようだった。
 私とは幸か不幸か子供は出来なかった。表向きは。私はこの男の血を引いた当主を作る気はなく、既に次の男爵には従弟の子を指名している。従弟の次男を。そう、従弟の長男を狙った狙撃があったりはしたし、夫は私と従弟の間を疑っているようだった。
 パートナーが必要なパーティの時に飲んだくれて二日酔いの夫ではなく従弟を連れて行っただけなのだが。

 そして夫は母親が失踪した娘を連れて来た。マナーもなにも出来ない子供を躾け、読み書きを教える。どうもこの子供は自分が男爵令嬢で私が後妻だとおもっているようだ、とわかってきた。
 もういい、この子供に私が手をかけるのは無駄。自覚を持たせるために学園の淑女科、いえ家政科につっこんだ。下級女官や下働きの文官向きの教育をするところだ。

 私は夫に言い渡した。

「この家は貴方のものにならないようにしてるから。家をでるなら手切れ金をお渡しするわ。あの娘の学費は卒業までは持ってあげる。でも留年したらそこで終わり、ね」

今、私は結婚してから最高に美しく笑えていると思う。
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