19 / 212
第一章
エド、冒険者になる
しおりを挟む
「エドも冒険者登録したの?」
エドは頷いた。
「学生って言ってたよね?」
「ええ。ただ、途中で会った少年と少し話してて、上の学校に弟妹を行かせるための助けをしてるって聞いてね。マドレーヌ嬢をみるにつけ、自分は世界が狭いなって思って。このまま学者を目指しても頭でっかちの世間知らずだと思うと……」
エドは照れくさそうに鼻の頭を掻いた。マドレーヌは暫く考えていたが、口を開く。
「じゃ、冒険者エドに個人依頼をだしていい?」
「もちろん!でもこんな新米になにができるんですか?」
マドレーヌはふふっと笑う。そんな様子はやはり『ご令嬢』でこんな殺伐とした場所にはそぐわないな、とエドは思った。
「じゃ、食堂で待ってて」
エドは頷き、自分の穂無の街とは比べ物にならないくらい充実した食堂でメニューを決めかねて迷っていた。その間、マドレーヌは別の窓口に行って、口座の残金の確認と手紙を受け取る。口座の残金は増えていた。後で手紙を読んでわかるのだが、父親が異国で苦労しないようにと仕送りを振り込んでくれていたのだ。
「あら、増えてる……。あとこれを入金してほしいのですが」
残ってきた金貨と銀貨をギルドに預け、この国の硬貨で金貨50枚、銀貨100枚を引き出してもらう。
「個人に仕事の依頼を」
「はい。何でしょうか」
「今日、登録が済んだエドという冒険者に」
職員はクリスタルの板を捜査する。
「この方ですね。先ほど登録した方」
「そうです。期間は一月、この国の言葉を教えてくれ、と。報酬は金貨5枚で」
「……差し出がましいですが、報酬としては過分ではないかと」
マドレーヌはにっこりと笑う。
「それでお願いします」
「……わかりました」
「食堂にいるので書類が出来たら持ってきてくださる?」
職員は不承不承頷いた。
「なんだ、坊主。なにか迷ってるのか?それとも字が読めない?」
ジンジャーエールとソーセージを持った髪がない巨漢が声をかけてくる。巨漢は全身これ筋肉というタイプだった。
「あ、いや。……メニューが多いなって」
「そうか。あの『カレー』っていう南の料理は旨いぞ。ちょっとスパイシーだけどな」
巨漢は気のいい笑顔で教えてくれる。
「この王都以外では見ない料理だから一度味わうと良い」
「親切にありがとう」
「どういたしまして。なにかあったら俺に訊いてくれ。ギルドにはよく来るからな。俺はエディっていうんだ」
「俺はエドって言います」
二人は顔を見合わせてにやりと笑う。エドはせっかくだからとおすすめの『カレー』という料理を頼んでみる。
「ナン?チャパティ?ライス?」
食堂の人が言うことがわからない。食堂の人は慣れているのか実物を見せてくれたのでエドはナンを選ぶ。カレーは薄いとろみがあって、それをナンにつけて食べるのだという。飲み物は水で薄めた果実酒を選ぶ。銅貨20枚、という値段をエドは初めて食事に使った。
「たっけー」
そう呟きながら、エドはカレーを口にした。
エドは頷いた。
「学生って言ってたよね?」
「ええ。ただ、途中で会った少年と少し話してて、上の学校に弟妹を行かせるための助けをしてるって聞いてね。マドレーヌ嬢をみるにつけ、自分は世界が狭いなって思って。このまま学者を目指しても頭でっかちの世間知らずだと思うと……」
エドは照れくさそうに鼻の頭を掻いた。マドレーヌは暫く考えていたが、口を開く。
「じゃ、冒険者エドに個人依頼をだしていい?」
「もちろん!でもこんな新米になにができるんですか?」
マドレーヌはふふっと笑う。そんな様子はやはり『ご令嬢』でこんな殺伐とした場所にはそぐわないな、とエドは思った。
「じゃ、食堂で待ってて」
エドは頷き、自分の穂無の街とは比べ物にならないくらい充実した食堂でメニューを決めかねて迷っていた。その間、マドレーヌは別の窓口に行って、口座の残金の確認と手紙を受け取る。口座の残金は増えていた。後で手紙を読んでわかるのだが、父親が異国で苦労しないようにと仕送りを振り込んでくれていたのだ。
「あら、増えてる……。あとこれを入金してほしいのですが」
残ってきた金貨と銀貨をギルドに預け、この国の硬貨で金貨50枚、銀貨100枚を引き出してもらう。
「個人に仕事の依頼を」
「はい。何でしょうか」
「今日、登録が済んだエドという冒険者に」
職員はクリスタルの板を捜査する。
「この方ですね。先ほど登録した方」
「そうです。期間は一月、この国の言葉を教えてくれ、と。報酬は金貨5枚で」
「……差し出がましいですが、報酬としては過分ではないかと」
マドレーヌはにっこりと笑う。
「それでお願いします」
「……わかりました」
「食堂にいるので書類が出来たら持ってきてくださる?」
職員は不承不承頷いた。
「なんだ、坊主。なにか迷ってるのか?それとも字が読めない?」
ジンジャーエールとソーセージを持った髪がない巨漢が声をかけてくる。巨漢は全身これ筋肉というタイプだった。
「あ、いや。……メニューが多いなって」
「そうか。あの『カレー』っていう南の料理は旨いぞ。ちょっとスパイシーだけどな」
巨漢は気のいい笑顔で教えてくれる。
「この王都以外では見ない料理だから一度味わうと良い」
「親切にありがとう」
「どういたしまして。なにかあったら俺に訊いてくれ。ギルドにはよく来るからな。俺はエディっていうんだ」
「俺はエドって言います」
二人は顔を見合わせてにやりと笑う。エドはせっかくだからとおすすめの『カレー』という料理を頼んでみる。
「ナン?チャパティ?ライス?」
食堂の人が言うことがわからない。食堂の人は慣れているのか実物を見せてくれたのでエドはナンを選ぶ。カレーは薄いとろみがあって、それをナンにつけて食べるのだという。飲み物は水で薄めた果実酒を選ぶ。銅貨20枚、という値段をエドは初めて食事に使った。
「たっけー」
そう呟きながら、エドはカレーを口にした。
7
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。
音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日……
*体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……
青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら?
この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。
主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。
以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。
※カクヨム。なろうにも時差投稿します。
※作者独自の世界です。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる