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第四章 混乱
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しおりを挟むその後の検視官の調べでも、詳しくは解剖してみないと分からないが、おそらく死因はショック死だろうという事だった。
寒川家にも連絡をし、ご両親と優人にかめなし心と体のクリニックまで来てもらう。
弥人の行方は依然として分からないままだ。警察は、代わりに優人を参考人として取り調べをしたが「僕は何も知りません。」の一点張り。実際に呼人からの供述以外何の証拠もなかったので、拘束するわけにもいかなかったようだ。
俺は会っていないが、寒川三兄弟のご両親は見ている側が辛いほど憔悴していたようだ。三男が長男の作ったドラッグで死んだなんて、普通の神経をしていたらなかなか受け入れられないだろう。
しかもその長男は失踪中。おまけに次男も関係しているとうすうす気付いているからか、優人を化物でも見るような怯えた目で見ていたとの事。
ゲン先生に聞いた話では、家庭内でも優人の権力が強く、両親も常に優人の顔色をうかがっているような状況らしい。
・・・寒川・・・・・本当に何なのお前??
弥人にコバルトもどきを作らせ、実験台にした呼人を死なせ、両親からも怯えた目で見られる・・・
そう言えば俺をいじめていた時もおかしかったな。何て言うか尋常じゃないんだよ。
俺の事を、同性愛者だからとの嫌悪感からいじめているわけではなさそうで、何と言うか使命感・・?かといって悦楽に浸っているわけでもなく・・・優人にも加虐性があるのは確かだが、自分の中でそれが正しい事と信じて実行しているようだった。
でも、トウマに傾倒していると言って親友面はしていたけど、そこまで「トウマの為に!」って感じではなかったな。
あれは優人の意思だ。
何への使命感だったんだろう?
トウマは優人と連んでいて楽しかったのかな?何と言うか、俺への憎悪でトウマもちょっとおかしくなっていた。
同性愛者だからって、あそこまで憎まれるのはちょっと異常だ。
今だから冷静に考えられる。
みんなには優人が俺の高校時代のいじめの加害者だと言ってあるので、会わないよう配慮してくれているのだが、むしろ会って話をしてみたいような気がしてきたな。
そんな事を考えているうちに、ケイ、ゲン先生、木村博士の間で議論が進んでいた。
木村博士が言う。
「う~ん、ウチの寒川くんはあたしと一緒で薬の合成が出来れば幸せな子だからね。どこかでコバルトもどきをせっせと合成しているんじゃないかしら?」
「・・なら、これからまだまだ黒ホグが出て、青ホグを喰う案件が出まくるのか?最悪だな・・・覚悟しておけよ。今月末には大きな野外フェスもあるしな。そこでコバルトもコバルトもどきも出回るだろう。
きっと修羅場になる。」
ケイの言葉にみんな頷く。
「ねぇ、マコちゃん。雪村朔夜くんを知ってるでしょ?」
木村博士に突然そう聞かれ、意味が分からないまま答える。何で木村博士がサクヤ先生の事を知ってるの??
「はい。高校時代の恩師です。」
「雪村くんもねぇ、あたしの教え子なの。で、寒川弥人くんの家庭教師をしてた事があるらしいのよね。
弥人くんって人付き合いが本当に苦手で、友達もいないっぽいんだけど、雪村くんの事は慕ってたのよ。
世間話をしていて、寒川くんの口からプライベートの交友関係で出て来る名前は雪村くんだけだった。まぁ、あたしと共通の知り合いだから話題にしやすかったのかも知れないけど、他には特に親しい人っていなかったと思うの。
マコちゃんの恩師でもあるってケイに聞いたから、一応伝えておこうと思ってね?」
「・・そうなんですか。ありがとうございます。サクヤ先生は優しいから・・・きっと弥人さんも頼りにしてたんでしょうね。あっ、じゃあ・・今の居場所ももしかしたら・・・」
「当然警察もこの事は知っているから、すでに参考人として事情聴取されてるはずよ?
それでもまだ見つかってないんだから本当に知らないか・・よっぽど上手く隠してるかねぇ・・・?」
「・・俺としてはサクヤ先生を信じたいですが・・・連絡してみようかな・・・?」
「連絡はしてもいいが、もし会うような事になっても一人では行くなよ。」
ケイの言葉に思わず反論する。だってそんな言い方、サクヤ先生が危険人物みたいじゃん?!
「何でっ?サクヤ先生は俺の恩師だよ??会うのは自由だろっ?!」
「まぁまぁ、今のこの状況じゃどこで弥人が出て来てもおかしくねーからな。そのサクヤのもとに、コバルトもどきを食った弥人が会いに来るかも知れねぇ。
ホグハンターは、基本二人で行動だろ?
警察も張ってはいるだろうが、黒ホグが出る可能性が1%でもあるのなら、一人では行くな。
そうでなくてもケイは心配で付いて行きそうだがなw」
・・確かにゲン先生の言う通りだけど・・・最後のはないよねっ?!リュカくんも頷いてるけど、ケイは・・・
「・・そうだな。」
えっ?!うそ??肯定しちゃうの??!
俺の顔が真っ赤になってしまったのはしょうがないと思う・・・
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