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第四章 混乱
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しおりを挟むあの後、俺はサクヤ先生に連絡を取り、四日後の土曜にランチをする約束をした。サクヤ先生は化学部の顧問をしているが、文化系クラブなので土日はないらしい。
場所はカフェマデリカ。朱雀メンタルクリニックからも近い場所にある、お洒落なカフェだ。店長のお兄さん、レンさんもカッコいいし、お茶もケーキもご飯も美味しい。俺のお気に入りのお店なんだ。
あっ、ちなみにこの前のデリバリーもここのお店のものだ。
そしてその当日、ケイは本当に付いて来た。そりゃ、コバルトもどきを食った弥人が来たら危ないかもだけどさ。
うん、その危険性も分かってる。けど・・・何だろう?あんまりケイとサクヤ先生を会わせたくないんだよなぁ・・・
だって絶対相性悪いし!!
何でも理詰めで語るケイと、ちょっと天然で気弱なサクヤ先生・・多分ケイはイライラするし、サクヤ先生は下手したら怯える・・・
ま、まぁ仕方がない。俺がフォローしなきゃなっ!正直、ケイが心配して付いて来てくれるのは嬉しいし。
マデリカの扉を開けるとレンさんが笑顔で迎えてくれる。う~ん、眼福眼福!クールビューティ系のイケメンなレンさんは今日も麗しい。
ケイもレンさんには好意的だ。
「いらっしゃいませ。いつもの窓際の席が空いてますよ。」
レンさんの言葉に俺は答える。
「いえ、今日は待ち合わせなんです。あっ?奥の席に居ますね。あの席にお願いします。」
俺は奥に座っているサクヤ先生を見つけ、その前の席に着いた。もちろんケイも横に座る。
「サクヤ先生、お久しぶりです。二年ぶりくらいじゃないですか?それまでは結構頻繁に会ってましたのにね。」
「白崎くん。元気そうで安心したよ。そうだね、久しぶり・・・で、そちらはもしかして・・・?」
「そうです。俺の元主治医で、ホグハンターの師匠兼相方の朱雀慧先生です。
ケイ、こちらは俺のS校時代の恩師、雪村朔夜先生。」
「はじめまして。朱雀慧です。サクヤ先生の事はマコからよく聞いてますよ。」
「あっ、いえ、あの、こ、こちらこそ・・・ケイ先生の噂はかねがね・・・」
「ふうん?噂ねぇ・・・」
ケイが眼鏡越しに俺を一瞥する。な、なんだよ?別に変な事言ってないし・・・
ちょうどレンさんがオーダーを取りに来てくれたので、みんなランチを頼む。俺はロコモコプレート、ケイはカオマンガイ、サクヤ先生は日替わりパスタのタコのアラビアータ。すべてプラスドリンク付きだ。
レンさんが奥の厨房にオーダーを通しに行くのを見送った後、俺はサクヤ先生に視線を合わせた。
「サクヤ先生、いきなりで申し訳ないですが、単刀直入に聞きます。寒川弥人さんの行方を知っていますか?」
「・・・知らないよ。行方不明になる前にメッセージアプリで連絡はあったけど。『心配しないでください』って。そんな事言われても普通逆に心配するよね?
呼人くんのお葬式にも行かせてもらったけど、弥人くんは来なかったし・・・
僕の事を警察が監視してるのも分かってるよ?実際、弥人くんが誰かを頼るとしたら僕以外いないだろうからね。」
サクヤ先生は疲れた顔をして俺を見つめ返している。
「まぁ・・・頼られたとしても僕には何も出来ないけどね。」
「・・・・・」
俺が何て言おうか考えている間にケイが口を出す。
「S校時代のマコを救えなかったように?」
っ!!おいコラ、いきなり何言い出すんだよっ?!!
「・・・そう、ですね。本当に僕は無力だ・・・白崎くん、あの時は本当にごめんね。」
「何言ってるんですかっ?!俺はあの時、サクヤ先生が庇ってくれて本当に嬉しかったんです。充分救われましたよ。」
「いや、救われてはいないだろ?せいぜい慰められたくらいじゃないのか?」
「もうっ!!ケイは黙っててよ!俺の昔話をしに来たわけじゃない。
今は弥人さんの話だよっ!!」
「白崎くん、朱雀先生の言う通りだよ。弥人くんに関しても、僕は慰める事しか出来なかった。人付き合いが苦手なら無理しなくてもいいとしか言えなかった。
薬の調合が好きなのは知っていたけど、研究職希望ならいい事だと思ってむしろ勧めていたしね。
まさか危険ドラッグの合成までしているなんて、思いもしなかったよ。」
「・・・それでも弥人さんは充分救われていたはずですよ。それこそ昔の俺のようにね。」
そこまで話したタイミングでレンさんがランチを持って来てくれたので、みんなそれぞれのご飯を食べる。ちょっと空気が重かったが、マデリカのランチはいつも通り美味しくて、俺は普通に堪能した。
結局その後の話でも、弥人の行き先の手がかりになるような話は聞けなかった。
ケイも最初以外はサクヤ先生を非難する事もなく口も挟まなかったので、俺は前によく会っていた頃と同じようにサクヤ先生との会話を楽しんだ。
サクヤ先生の方は、どうしてもケイが気になるようで、心底楽しめてなかったっぽくて申し訳ない。まぁ、弥人の事が心配ってのもあるんだろうけど。
小一時間のランチを終え、サクヤ先生は「もし弥人くんから連絡が来たらメッセージを送る」と約束をして帰って行った。
俺とケイも、朱雀メンタルクリニックへと戻る。
「もうっ、ケイ!何であんな言い方するんだよっ?!サクヤ先生が悪いわけじゃないのは分かってるだろ?」
「いや、悪いね。どうにかは出来たはずだ。自分の手に負えないのなら、他に助けを求めればいい。お前の時ならマスコミに話を流すとかいくらでも方法はあったはずだ。それをしなかったのは自分の保身と・・・後は何だろうな?」
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