【完結】朱雀と白虎は黒を狩る

ルコ

文字の大きさ
上 下
15 / 28
第四章 混乱

3

しおりを挟む

 あの後、俺はサクヤ先生に連絡を取り、四日後の土曜にランチをする約束をした。サクヤ先生は化学部の顧問をしているが、文化系クラブなので土日はないらしい。

場所はカフェマデリカ。朱雀メンタルクリニックからも近い場所にある、お洒落なカフェだ。店長のお兄さん、レンさんもカッコいいし、お茶もケーキもご飯も美味しい。俺のお気に入りのお店なんだ。
あっ、ちなみにこの前のデリバリーもここのお店のものだ。

そしてその当日、ケイは本当に付いて来た。そりゃ、コバルトもどきを食った弥人が来たら危ないかもだけどさ。

うん、その危険性も分かってる。けど・・・何だろう?あんまりケイとサクヤ先生を会わせたくないんだよなぁ・・・

だって絶対相性悪いし!!

何でも理詰めで語るケイと、ちょっと天然で気弱なサクヤ先生・・多分ケイはイライラするし、サクヤ先生は下手したら怯える・・・

ま、まぁ仕方がない。俺がフォローしなきゃなっ!正直、ケイが心配して付いて来てくれるのは嬉しいし。

 マデリカの扉を開けるとレンさんが笑顔で迎えてくれる。う~ん、眼福眼福!クールビューティ系のイケメンなレンさんは今日も麗しい。

ケイもレンさんには好意的だ。

「いらっしゃいませ。いつもの窓際の席が空いてますよ。」

レンさんの言葉に俺は答える。

「いえ、今日は待ち合わせなんです。あっ?奥の席に居ますね。あの席にお願いします。」

俺は奥に座っているサクヤ先生を見つけ、その前の席に着いた。もちろんケイも横に座る。

「サクヤ先生、お久しぶりです。二年ぶりくらいじゃないですか?それまでは結構頻繁に会ってましたのにね。」

「白崎くん。元気そうで安心したよ。そうだね、久しぶり・・・で、そちらはもしかして・・・?」

「そうです。俺の元主治医で、ホグハンターの師匠兼相方の朱雀慧先生です。
ケイ、こちらは俺のS校時代の恩師、雪村朔夜先生。」

「はじめまして。朱雀慧です。サクヤ先生の事はマコからよく聞いてますよ。」

「あっ、いえ、あの、こ、こちらこそ・・・ケイ先生の噂はかねがね・・・」

「ふうん?噂ねぇ・・・」

ケイが眼鏡越しに俺を一瞥する。な、なんだよ?別に変な事言ってないし・・・

ちょうどレンさんがオーダーを取りに来てくれたので、みんなランチを頼む。俺はロコモコプレート、ケイはカオマンガイ、サクヤ先生は日替わりパスタのタコのアラビアータ。すべてプラスドリンク付きだ。

レンさんが奥の厨房にオーダーを通しに行くのを見送った後、俺はサクヤ先生に視線を合わせた。

「サクヤ先生、いきなりで申し訳ないですが、単刀直入に聞きます。寒川弥人さんの行方を知っていますか?」

「・・・知らないよ。行方不明になる前にメッセージアプリで連絡はあったけど。『心配しないでください』って。そんな事言われても普通逆に心配するよね?
呼人くんのお葬式にも行かせてもらったけど、弥人くんは来なかったし・・・
僕の事を警察が監視してるのも分かってるよ?実際、弥人くんが誰かを頼るとしたら僕以外いないだろうからね。」

サクヤ先生は疲れた顔をして俺を見つめ返している。

「まぁ・・・頼られたとしても僕には何も出来ないけどね。」

「・・・・・」

俺が何て言おうか考えている間にケイが口を出す。

「S校時代のマコを救えなかったように?」

っ!!おいコラ、いきなり何言い出すんだよっ?!!

「・・・そう、ですね。本当に僕は無力だ・・・白崎くん、あの時は本当にごめんね。」

「何言ってるんですかっ?!俺はあの時、サクヤ先生が庇ってくれて本当に嬉しかったんです。充分救われましたよ。」

「いや、救われてはいないだろ?せいぜい慰められたくらいじゃないのか?」

「もうっ!!ケイは黙っててよ!俺の昔話をしに来たわけじゃない。
今は弥人さんの話だよっ!!」

「白崎くん、朱雀先生の言う通りだよ。弥人くんに関しても、僕は慰める事しか出来なかった。人付き合いが苦手なら無理しなくてもいいとしか言えなかった。
薬の調合が好きなのは知っていたけど、研究職希望ならいい事だと思ってむしろ勧めていたしね。
まさか危険ドラッグの合成までしているなんて、思いもしなかったよ。」

「・・・それでも弥人さんは充分救われていたはずですよ。それこそ昔の俺のようにね。」

 そこまで話したタイミングでレンさんがランチを持って来てくれたので、みんなそれぞれのご飯を食べる。ちょっと空気が重かったが、マデリカのランチはいつも通り美味しくて、俺は普通に堪能した。

結局その後の話でも、弥人の行き先の手がかりになるような話は聞けなかった。
ケイも最初以外はサクヤ先生を非難する事もなく口も挟まなかったので、俺は前によく会っていた頃と同じようにサクヤ先生との会話を楽しんだ。

サクヤ先生の方は、どうしてもケイが気になるようで、心底楽しめてなかったっぽくて申し訳ない。まぁ、弥人の事が心配ってのもあるんだろうけど。

小一時間のランチを終え、サクヤ先生は「もし弥人くんから連絡が来たらメッセージを送る」と約束をして帰って行った。

 俺とケイも、朱雀メンタルクリニックへと戻る。

「もうっ、ケイ!何であんな言い方するんだよっ?!サクヤ先生が悪いわけじゃないのは分かってるだろ?」

「いや、悪いね。どうにかは出来たはずだ。自分の手に負えないのなら、他に助けを求めればいい。お前の時ならマスコミに話を流すとかいくらでも方法はあったはずだ。それをしなかったのは自分の保身と・・・後は何だろうな?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

研修医と指導医「SМ的恋愛小説」

浅野浩二
恋愛
研修医と指導医「SМ的恋愛小説」

さんざめく左手 ― よろず屋・月翔 散冴 ―

流々(るる)
ミステリー
【この男の冷たい左手が胸騒ぎを呼び寄せる。アウトローなヒーロー、登場】 どんな依頼でもお受けします。それがあなたにとっての正義なら 企業が表向きには処理できない事案を引き受けるという「よろず屋」月翔 散冴(つきかけ さんざ)。ある依頼をきっかけに大きな渦へと巻き込まれていく。彼にとっての正義とは。 サスペンスあり、ハードボイルドあり、ミステリーありの痛快エンターテイメント! ※さんざめく:さざめく=胸騒ぎがする(精選版 日本国語大辞典より)、の音変化。 ※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。

捜査一課のアイルトン・セナ

辺理可付加
ミステリー
──アイルトン・セナ── F1史上最速との呼び声も高いレーサーながら、危険な走法で 「いつか事故るぞ」 と言われ続け、最期はまさにレース中の事故で非業の死を遂げた天才。 そのアイルトン・セナに喩えられるほどのスピード解決。 僅かな違和感から、「こいつだ」と決め打ちかのように行う捜査手法。 それらが「いつか事故るぞ」と思われている様から 『捜査一課のアイルトン・セナ』 の異名を取った女、千中高千穂、階級は警部補。 お供の冴えない小男松実士郎を引き連れて、今日も彼女はあらゆる犯人たちのトリックを看破する。 バディもの倒叙ミステリー、開幕。 ※『カクヨム』『小説家になろう』でも連載しています。

夜の動物園の異変 ~見えない来園者~

メイナ
ミステリー
夜の動物園で起こる不可解な事件。 飼育員・えまは「動物の声を聞く力」を持っていた。 ある夜、動物たちが一斉に怯え、こう囁いた—— 「そこに、"何か"がいる……。」 科学者・水原透子と共に、"見えざる来園者"の正体を探る。 これは幽霊なのか、それとも——?

✖✖✖Sケープゴート ☆奨励賞

itti(イッチ)
ミステリー
病気を患っていた母が亡くなり、初めて出会った母の弟から手紙を見せられた祐二。 亡くなる前に弟に向けて書かれた手紙には、意味不明な言葉が。祐二の知らない母の秘密とは。 過去の出来事がひとつづつ解き明かされ、祐二は母の生まれた場所に引き寄せられる。 母の過去と、お地蔵さまにまつわる謎を祐二は解き明かせるのでしょうか。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...