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六章 リリト
四
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さて、このオークもどきもとい冒険者をどうすべきか。このまま放り出しても多分、というか絶対戻ってくる。この手の変態は諦めが悪いのだ。そう、ノーイのすぐ横に陣取っているシェムハザのように。いや、お前いつオレの横にきたの、とノーイは内心でツッコミを入れた。
「どうして踏んでくれないんですか!!」
「アタシにはそういう趣味はないからですぅ!!」
「先程から聞いていれば、何と情けない!!」
と、そこでリリトが両手を掲げて嘆いた。びしっ、と指し示した先は泣いているサキュバスだ。ぴぇっ、と飛び上がったサキュバスは、恐る恐るリリトの方を伺っている。
「奴隷志願者から踏んでくれと言われただけで泣くとは、淫魔の名が廃る!! 見ていろ、調教とはこうやる!!」
「やるな!!」
思わずリリトのみぞおちを強く蹴り上げるなどしたノーイであった。流石にある種同族、モンスター同士ということで油断していたリリトは、その蹴りをまともに食らってげふぅと呻く。
「いい蹴りだ……まさか君が見本を示してくれるとは、サキュバスたちの教育係として不足はないようだね……」
「もう一回強く蹴るぞ」
「止めたまえ、今のも何らかの職業技能か魔法を重ねていただろう、ちょっと痛かった」
「とても痛がってくれそして反省してくれ」
リリトの予想通り、格闘家の職業技能を重ねていた。物理攻撃倍加という効果を持つ技能なのだが、元々の攻撃力が高いノーイが使ったそれを、ちょっと痛かった程度で済ませるリリトは、やはり淫魔の王と呼ばれるだけある。
「仕方ないなぁ……それならちょっと待っていたまえ、見えない所でしてくるから」
「何を!?」
刹那、冒険者の襟元を掴んで自身の影の中へ消えたリリト。ノーイは目元に手をやって深々と溜め息をつき、シェムハザは僅かばかり瞠目する。そうして、しばらく経ってから。
「僕はリリス様の奴隷です!!」
「いやはや、最近人間を相手にしていなかったからやや時間がかかってしまったよ。精進せねば」
不意に床を染める黒。人型になったそこからぬるりと、リリトが、否、女性型に変化したリリト改めリリスと冒険者が現れる。冒険者は、人格とか魂とかその辺りに支障が出ていそうな目でリリスを凝視して叫ぶなどしていた。
女性型に化けているとはいえ、服装は先刻までの男物である。しかして、その不均衡がいかにも妖しげな魅力として彼女を彩っていた。が、ノーイは彼女の中身を知っているので魅了などされないし、シェムハザは言わずもがなである。
「……師匠」
「そんな事実はないんだけど何?」
そこで、シェムハザがノーイの袖を引いた。さらっと師匠呼びされたので即座に訂正しておく。しかし、いつもならそこで一悶着あるはずなのに、シェムハザはやけに素直に言葉を続けた。
「ちょっとあの豚を借ります」
「オレの所有物でも何でもないから気にしなくていいかなとは思ったけど何するつもり?」
「調教とはこうします」
「しないで!?」
むんずと冒険者改め豚の襟首を掴んだシェムハザがノーイの自室に入り、扉を閉める。何やら断末魔に近い、屠殺される豚のような悲鳴が聞こえてきて、ノーイは遠い目をするしかなかった。
「私は神に仕える者です!!」
「しばらくぶりの説法でしたので、思っていたより時間がかかってしまいました」
「もう止めてあげて!! 何かこう人間として大事な何かがぶっ壊れちゃってるじゃん!! 何でそんなひどいことするの!?」
今度は無垢な、というより神以外何も見えていなさそうな目をした冒険者がシェムハザと共に現れる。ノーイは流石に可哀想になって、冒険者をシェムハザとリリスから引き離すように抱き上げて逃げ出した。
「どうして踏んでくれないんですか!!」
「アタシにはそういう趣味はないからですぅ!!」
「先程から聞いていれば、何と情けない!!」
と、そこでリリトが両手を掲げて嘆いた。びしっ、と指し示した先は泣いているサキュバスだ。ぴぇっ、と飛び上がったサキュバスは、恐る恐るリリトの方を伺っている。
「奴隷志願者から踏んでくれと言われただけで泣くとは、淫魔の名が廃る!! 見ていろ、調教とはこうやる!!」
「やるな!!」
思わずリリトのみぞおちを強く蹴り上げるなどしたノーイであった。流石にある種同族、モンスター同士ということで油断していたリリトは、その蹴りをまともに食らってげふぅと呻く。
「いい蹴りだ……まさか君が見本を示してくれるとは、サキュバスたちの教育係として不足はないようだね……」
「もう一回強く蹴るぞ」
「止めたまえ、今のも何らかの職業技能か魔法を重ねていただろう、ちょっと痛かった」
「とても痛がってくれそして反省してくれ」
リリトの予想通り、格闘家の職業技能を重ねていた。物理攻撃倍加という効果を持つ技能なのだが、元々の攻撃力が高いノーイが使ったそれを、ちょっと痛かった程度で済ませるリリトは、やはり淫魔の王と呼ばれるだけある。
「仕方ないなぁ……それならちょっと待っていたまえ、見えない所でしてくるから」
「何を!?」
刹那、冒険者の襟元を掴んで自身の影の中へ消えたリリト。ノーイは目元に手をやって深々と溜め息をつき、シェムハザは僅かばかり瞠目する。そうして、しばらく経ってから。
「僕はリリス様の奴隷です!!」
「いやはや、最近人間を相手にしていなかったからやや時間がかかってしまったよ。精進せねば」
不意に床を染める黒。人型になったそこからぬるりと、リリトが、否、女性型に変化したリリト改めリリスと冒険者が現れる。冒険者は、人格とか魂とかその辺りに支障が出ていそうな目でリリスを凝視して叫ぶなどしていた。
女性型に化けているとはいえ、服装は先刻までの男物である。しかして、その不均衡がいかにも妖しげな魅力として彼女を彩っていた。が、ノーイは彼女の中身を知っているので魅了などされないし、シェムハザは言わずもがなである。
「……師匠」
「そんな事実はないんだけど何?」
そこで、シェムハザがノーイの袖を引いた。さらっと師匠呼びされたので即座に訂正しておく。しかし、いつもならそこで一悶着あるはずなのに、シェムハザはやけに素直に言葉を続けた。
「ちょっとあの豚を借ります」
「オレの所有物でも何でもないから気にしなくていいかなとは思ったけど何するつもり?」
「調教とはこうします」
「しないで!?」
むんずと冒険者改め豚の襟首を掴んだシェムハザがノーイの自室に入り、扉を閉める。何やら断末魔に近い、屠殺される豚のような悲鳴が聞こえてきて、ノーイは遠い目をするしかなかった。
「私は神に仕える者です!!」
「しばらくぶりの説法でしたので、思っていたより時間がかかってしまいました」
「もう止めてあげて!! 何かこう人間として大事な何かがぶっ壊れちゃってるじゃん!! 何でそんなひどいことするの!?」
今度は無垢な、というより神以外何も見えていなさそうな目をした冒険者がシェムハザと共に現れる。ノーイは流石に可哀想になって、冒険者をシェムハザとリリスから引き離すように抱き上げて逃げ出した。
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