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六章 リリト
五
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さて、二人の処刑人あるいは拷問吏から逃げ出したノーイと豚もとい冒険者は、取り敢えずダンジョン内の安全地帯に潜り込んでいた。
「そもそも何で陛下がいらっしゃるんですかぁ?」
「いやお前も来てたのかよ」
「だって陛下と大神官がいる空間に一人残されるなんてどんな罰ですかって話ですよぉ」
訂正、ノーイと冒険者とサキュバスは、であった。唇をちょっと尖らせて愚痴るサキュバスの顔はまぁまぁ美しいが、やはりリリスには劣っているためか、冒険者も変なことは言わない。
「そもそもお前が諸悪の根源な気がしてきた……」
「違いますよぉ!! 悪いのは陛下ですよぉ!! アタシは困ったから相談しに行っただけですもん!!」
「リリトが大体悪いのは知ってる」
「ね? そうでしょ? アタシは悪くないですよぉ、ノーイ様の敵じゃありませんよぉ」
ひぃん、と再び泣き出すサキュバス。どうやらこの個体は俗に言う泣き虫な個体らしい。ノーイの威圧を受けてぽろぽろと涙を流しながら、しかしてさり気なくノーイの敵意をリリトへなすりつける辺り、まぁまぁモンスターらしさがあるのだが。
「で、えーと……」
「俺は神の奴隷です!!」
「あーもーこんがらがっちゃってる」
「アタシでも引きますよこれ、何されたんですかぁ?」
名前を呼ぼうとしたがわからず、どうしたものかと思っていたら壊れた回答が返ってきた。ノーイは頭を抱えて悩み始める。本当にどうすりゃいいんだコイツ、なんて考えていたら、冒険者の方から声を上げた。
「僕はリリス様の、いや、神様の……えーと、私は誰? 俺は何なんだ?」
「流石に可哀想だから何とかはしてやらないと……」
「でも、どうするんですかぁ?」
あまりにも可哀想が過ぎる。自己を破壊され自我を崩壊させられた冒険者は、ぽかんとした表情で自分探しをしている。多分現状かつ自力では見つけ出せないだろう。淫魔の王の調教と、大神官の説法を受けた……いや大神官の説法ってそういうのだっけ? とノーイは改めて考えるなどしたが、泥沼でしかなったので止めた。
「んー……と、まずは『惑え心』」
ノーイの緑眼がぎらりと輝く。初級闇魔法は視線や声、仕草などに乗せることができるが、ノーイは専ら目を通して行使することが多い。そんなノーイの目を見た冒険者が、がくんと動きを止めた。
「『揺れ動け、迷い惑え、汝が心は玻璃の宮』」
続いて行使したのは上級闇魔法と初級心魔法を組み合わせたもの。主に相手に自白を迫るためのものだ。冒険者がぐるんと白目になり、口から意味のない音が漏れ始める。
「アンタの名前は?」
「おれ……わたし? ぼくのなまえは……」
「コイツの名前、何て呼ばれてた?」
「えーと……ピギー? だったかもぉ……」
「アンタの名前はピギーか?」
「ぴぎー……? だれ……?」
サキュバスが聞いた名前は違うらしい。ノーイはううんと首をひねり、最上階の水晶板があればなぁと嘆息した。そうするしかなかった。
「そもそも何で陛下がいらっしゃるんですかぁ?」
「いやお前も来てたのかよ」
「だって陛下と大神官がいる空間に一人残されるなんてどんな罰ですかって話ですよぉ」
訂正、ノーイと冒険者とサキュバスは、であった。唇をちょっと尖らせて愚痴るサキュバスの顔はまぁまぁ美しいが、やはりリリスには劣っているためか、冒険者も変なことは言わない。
「そもそもお前が諸悪の根源な気がしてきた……」
「違いますよぉ!! 悪いのは陛下ですよぉ!! アタシは困ったから相談しに行っただけですもん!!」
「リリトが大体悪いのは知ってる」
「ね? そうでしょ? アタシは悪くないですよぉ、ノーイ様の敵じゃありませんよぉ」
ひぃん、と再び泣き出すサキュバス。どうやらこの個体は俗に言う泣き虫な個体らしい。ノーイの威圧を受けてぽろぽろと涙を流しながら、しかしてさり気なくノーイの敵意をリリトへなすりつける辺り、まぁまぁモンスターらしさがあるのだが。
「で、えーと……」
「俺は神の奴隷です!!」
「あーもーこんがらがっちゃってる」
「アタシでも引きますよこれ、何されたんですかぁ?」
名前を呼ぼうとしたがわからず、どうしたものかと思っていたら壊れた回答が返ってきた。ノーイは頭を抱えて悩み始める。本当にどうすりゃいいんだコイツ、なんて考えていたら、冒険者の方から声を上げた。
「僕はリリス様の、いや、神様の……えーと、私は誰? 俺は何なんだ?」
「流石に可哀想だから何とかはしてやらないと……」
「でも、どうするんですかぁ?」
あまりにも可哀想が過ぎる。自己を破壊され自我を崩壊させられた冒険者は、ぽかんとした表情で自分探しをしている。多分現状かつ自力では見つけ出せないだろう。淫魔の王の調教と、大神官の説法を受けた……いや大神官の説法ってそういうのだっけ? とノーイは改めて考えるなどしたが、泥沼でしかなったので止めた。
「んー……と、まずは『惑え心』」
ノーイの緑眼がぎらりと輝く。初級闇魔法は視線や声、仕草などに乗せることができるが、ノーイは専ら目を通して行使することが多い。そんなノーイの目を見た冒険者が、がくんと動きを止めた。
「『揺れ動け、迷い惑え、汝が心は玻璃の宮』」
続いて行使したのは上級闇魔法と初級心魔法を組み合わせたもの。主に相手に自白を迫るためのものだ。冒険者がぐるんと白目になり、口から意味のない音が漏れ始める。
「アンタの名前は?」
「おれ……わたし? ぼくのなまえは……」
「コイツの名前、何て呼ばれてた?」
「えーと……ピギー? だったかもぉ……」
「アンタの名前はピギーか?」
「ぴぎー……? だれ……?」
サキュバスが聞いた名前は違うらしい。ノーイはううんと首をひねり、最上階の水晶板があればなぁと嘆息した。そうするしかなかった。
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