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六章 リリト
三
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さて、何だかんだと騒いでいたが、見学者ならばダンジョンの主人を通さずに帰す訳にもいかない。ノーイは主人から、自己判断で客人を追い返さないようにと言われていた。とはいえこれは、商人であるショクを度々追い返した結果、ショクから主人にクレームが入り、その結果として生まれた規則なのだが。
「でも今日は出かけてるんだよなぁ」
「別に何千年の単位でなければ全然待つともさ」
「長命種の気の長さ……」
ノーイが溜め息を漏らしてぼやく。リリトはそれこそ、初代魔王の時代から生きていると言われている淫魔である。その言葉もとても冗談には聞こえない。取り敢えず最上階にある応接室もどきに招き入れ、何だかんだメイスを構えたままのシェムハザをどこか別の部屋に誘導しようとした、その時。
「ノーイ様ぁ、ノーイさ……陛下ぁ!?」
「何々、これ以上変なトラブル起きるの嫌なんだけど」
「何だい、そんなに急いではしたない。お前も淫魔の端くれならばもっとだらしなくあるべきだよ」
応接室もどきに飛び込んできたのはこのダンジョンで働くサキュバスの一人。その後ろから、冒険者らしき男が息を切らせて走ってきている。よもや襲撃か、しかし最上階にまで来られる冒険者なんて、とノーイが戦慄していると、その冒険者はぶひぶひと荒い息をつきながら叫び始める。
「君のためなら死ねる!! 君のためなら死ねる!!」
「何なの!? 何が起きてんの!?」
「誘惑が強くかかり過ぎて、さっきからずっと追いかけてくるんですよぉ!!」
ノーイのツッコミもとい質問に、半泣きのサキュバスが答える。曰く、いつも通り冒険者で遊ぼうと初級闇魔法の『惑え心』をかけた所、相手の精神的な抵抗力が著しく低かったらしく、想定外に効き過ぎたらしい。
確かに、この冒険者は言っちゃ悪いがオークのような出で立ちで、恐らくは前衛、それも敵の物理攻撃を体で受け止める戦闘方法を得意とするようだ。この手の冒険者は大体が精神をどうこうする魔法に弱い。とはいえ、ここまで効くのは弱過ぎるが。
なお、モンスターである所のオークはむしろ精神的な耐性が高い方である。冒険者たちはオークを知能が低い体力馬鹿だと思っているが、彼等の本質は孤高の重戦士である。まぁ、集団行動が取れないくらい個々のプライドが高いともいえるが。
「君のためなら死ねる!! 君のためなら死ねる!! だから踏んでください!!」
「さらっと要求し始めた……」
「アタシ、お姉様と違ってそういう趣味はないんですよぉ!!」
「踏んでください!! 踏んでください!!」
「ついに要求しか言わなくなった……」
土下座しつつサキュバスの足を凝視しているオークめいた冒険者。それに怯えてノーイの背に隠れるサキュバス。どうにかしてくださいよぉ、と泣きつかれた所で、ノーイにしてやれることといったらこの冒険者を摘まみ出すくらいだが。
「踏んでくれないならまた来ます!!」
「ここで殺されるとかは考えない感じなんだな……」
「ここはエロトラップダンジョン、何があっても死にはしないと聞いてますので!!」
「ていうかオレらの存在に疑問も抱かないってのがまず怖いんだよな……」
確かに、現在の主人の方針もあって殺すのはほぼ最終手段とされているが。ノーイは心底困り果ててしまって、ぶひぶひと鳴いている冒険者を見下ろしていた。
「でも今日は出かけてるんだよなぁ」
「別に何千年の単位でなければ全然待つともさ」
「長命種の気の長さ……」
ノーイが溜め息を漏らしてぼやく。リリトはそれこそ、初代魔王の時代から生きていると言われている淫魔である。その言葉もとても冗談には聞こえない。取り敢えず最上階にある応接室もどきに招き入れ、何だかんだメイスを構えたままのシェムハザをどこか別の部屋に誘導しようとした、その時。
「ノーイ様ぁ、ノーイさ……陛下ぁ!?」
「何々、これ以上変なトラブル起きるの嫌なんだけど」
「何だい、そんなに急いではしたない。お前も淫魔の端くれならばもっとだらしなくあるべきだよ」
応接室もどきに飛び込んできたのはこのダンジョンで働くサキュバスの一人。その後ろから、冒険者らしき男が息を切らせて走ってきている。よもや襲撃か、しかし最上階にまで来られる冒険者なんて、とノーイが戦慄していると、その冒険者はぶひぶひと荒い息をつきながら叫び始める。
「君のためなら死ねる!! 君のためなら死ねる!!」
「何なの!? 何が起きてんの!?」
「誘惑が強くかかり過ぎて、さっきからずっと追いかけてくるんですよぉ!!」
ノーイのツッコミもとい質問に、半泣きのサキュバスが答える。曰く、いつも通り冒険者で遊ぼうと初級闇魔法の『惑え心』をかけた所、相手の精神的な抵抗力が著しく低かったらしく、想定外に効き過ぎたらしい。
確かに、この冒険者は言っちゃ悪いがオークのような出で立ちで、恐らくは前衛、それも敵の物理攻撃を体で受け止める戦闘方法を得意とするようだ。この手の冒険者は大体が精神をどうこうする魔法に弱い。とはいえ、ここまで効くのは弱過ぎるが。
なお、モンスターである所のオークはむしろ精神的な耐性が高い方である。冒険者たちはオークを知能が低い体力馬鹿だと思っているが、彼等の本質は孤高の重戦士である。まぁ、集団行動が取れないくらい個々のプライドが高いともいえるが。
「君のためなら死ねる!! 君のためなら死ねる!! だから踏んでください!!」
「さらっと要求し始めた……」
「アタシ、お姉様と違ってそういう趣味はないんですよぉ!!」
「踏んでください!! 踏んでください!!」
「ついに要求しか言わなくなった……」
土下座しつつサキュバスの足を凝視しているオークめいた冒険者。それに怯えてノーイの背に隠れるサキュバス。どうにかしてくださいよぉ、と泣きつかれた所で、ノーイにしてやれることといったらこの冒険者を摘まみ出すくらいだが。
「踏んでくれないならまた来ます!!」
「ここで殺されるとかは考えない感じなんだな……」
「ここはエロトラップダンジョン、何があっても死にはしないと聞いてますので!!」
「ていうかオレらの存在に疑問も抱かないってのがまず怖いんだよな……」
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