ETDの雑用係

とりい とうか

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四章 ショク

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 そもそも、エルフは他のモンスターとの混血種――山の番人ことドワーフや海の番人ことマーメイドなど――と異なり、長命故に排他的である。
 大抵は、己が生まれ育った森の中で一族が担ってきた職を引き継ぎ、恒常不変を保つために生きる。それこそが正しい在り方であり、変化を求めることは邪であるとされている。

「だから、ではないケド……」

 それは、ショクにとってとてもつまらない在り方に見えた。ショクは稀に来る旅人や商人、冒険者たちの話を聞いて人間たちに興味を持った。変化を厭う古老たちが、人間の愚かさや普遍の尊さを知らしめるためにと設けた機会は、ショクにとって新たな知識を得る機会に過ぎなかった。

「だって人間って、面白いヨネ?」

 その中でも特にショクの興味を惹いたのは、生殖活動に関するあれやこれや。エルフは長命かつ不変を尊ぶが故に、生殖でさえ厳密に管理された儀式として取り扱っている。それが人間はどうだ、堅苦しくてつまらないはずの交尾を遊戯のように楽しみ、そのためだけに様々なものを生み出している。
 無論、古老たちの監視下でこんな話が出る筈もない。だがしかし、ショクは酒精が人間の口を軽くさせることを学んでいた。最初は偶然、次からは必然。ショクは着々と、古老たち曰くの下劣で卑猥で救われようのない知識を手に入れていった。

「で、まぁ、最後は追い出されたんだけどサ……」

 今やショクの名はエルフたちの間では禁忌として扱われ、本人が顔を出したなら問答無用で射殺せと全ての森に通達されている。それもそのはず、ショクは手に入れた知識を惜しみなく注ぎ込んで創り上げたアーティファクトによって、自身が生まれ育った森をダンジョンへと変質させてしまったのだから。
 それでも、ショクの言い分としてはこうだ。本当にエルフが気高く美しく清らかな生き物であったなら、適切に適当に、それこそ正しく交尾を楽しめただけだと。ショクは未だに悪いことをしたとは思っていないし、快楽に溺れた同族たちの方が悪かったと心から信じていた。

「それにしてもこの芋はおいしいネ」
「ですね」
「帰ってきたら主人を差し置いて食卓を囲んでいるとは寛ぎ過ぎでは? ここはお前らの実家でも宿舎でもないが?」

 今日はダンジョンの主人が先に帰還したようで。いつも通り漆黒の外套で全身を覆い隠した主は、蒸かした芋に溶かしたチーズをかけて食べながら葡萄酒を酌み交わしているショクとシェムハザを見て呆れを隠さない声を上げた。

「居心地最高で最早第二の故郷だと思ってル」
「たまに泊まらせていただいてたので宿舎とは言い得て妙ですね」
「こんな場所が? 脳に触手でも涌いているのか?」
「ご依頼の品はあちらに置いてるヨ」
「主の分もありますよ。葡萄酒よりも蒸留酒がいいですか?」
「……対価の素材は保管庫から適当に。今日は葡萄酒でいい」

 手酷い悪口にもてんで堪えた所のない二人を眺めていた主は、諦めたようにそう返して己の盃を取り出した。
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