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DAY4
13
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「台所も模様替えをしたの?」
佳子に聞かれて、響野はもの思いから覚めた。見れば、伯母の黒い影はいつのまにか祭壇の前にある。新しい花を生けた花瓶を戻しているようだった。
「気のせいだった? 物の置き場所が変わってるように思ったけれど」
「ああ、冷蔵庫や食糧庫の中身を仕分け直した。よくわかったね」
「慶子の分類のやり方と違ってたもの。もしかして、あなたの目に合わせてるの?」
そう、と響野はうなずく。
「俺ひとりでも食事やなんかを準備できないと困るから、だけど……」
最後の部分で歯切れが悪くなったのは、食事は結局、今のところすべて水元に任せきりになっているためだ。せめてインスタントラーメンくらいは自力で作れるようにならなければ、と考えていると、「ひとりで暮らすつもり?」とたずねる伯母の声に再び思考をさえぎられる。
「そうなると思うけど、何で?」
「お友達と一緒に住めばいいじゃないの。さっきの――水元さん?」
佳子はそんなことを言った。祭壇の前から聞こえてくる声は、響野の心中とは裏腹に、ごく軽い。
「……そういうわけにはいかないんじゃないかな……」
「どうして? 今も泊まり込んでくれてるんでしょう?」
「水元のほうが嫌だと思う」
どうして?ともう一度、伯母は聞いた。
「何か問題でもあるの?」
佳子に聞かれて、響野はもの思いから覚めた。見れば、伯母の黒い影はいつのまにか祭壇の前にある。新しい花を生けた花瓶を戻しているようだった。
「気のせいだった? 物の置き場所が変わってるように思ったけれど」
「ああ、冷蔵庫や食糧庫の中身を仕分け直した。よくわかったね」
「慶子の分類のやり方と違ってたもの。もしかして、あなたの目に合わせてるの?」
そう、と響野はうなずく。
「俺ひとりでも食事やなんかを準備できないと困るから、だけど……」
最後の部分で歯切れが悪くなったのは、食事は結局、今のところすべて水元に任せきりになっているためだ。せめてインスタントラーメンくらいは自力で作れるようにならなければ、と考えていると、「ひとりで暮らすつもり?」とたずねる伯母の声に再び思考をさえぎられる。
「そうなると思うけど、何で?」
「お友達と一緒に住めばいいじゃないの。さっきの――水元さん?」
佳子はそんなことを言った。祭壇の前から聞こえてくる声は、響野の心中とは裏腹に、ごく軽い。
「……そういうわけにはいかないんじゃないかな……」
「どうして? 今も泊まり込んでくれてるんでしょう?」
「水元のほうが嫌だと思う」
どうして?ともう一度、伯母は聞いた。
「何か問題でもあるの?」
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