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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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 藤木になんでも訊くことができる【質問権】ではあるが、それを行使できるタイミングがいやらしい。これがもし、全ての情報が出揃った後ならば、もっと有意義な使い方ができるだろうに。まだ後半の再現映像を残しているから、なんとも使い勝手の悪いものになっている。ただ、情報をしっかりと見極めれば、有効活用できるはずなのだ。今はただただ、有効活用ができていると信じて展開させるしかない。

「それでは、木戸さん。お時間になりました」

 アカリの質問の内容によっては、次の質問の内容が大きく変わってくる。みんなもそれを分かっているのか、特に議論も起きず、ほぼ沈黙のままアカリの【質問権】が失効する時間を迎えた。長谷川辺りは様々な角度から模型を眺めていたようだったが、口を開いたりはせず、意見も言わずじまいだった。

「じゃあ、行ってくる――」

 ほんの藤木のところまで数歩程度なのに、二度と帰ってくることのできない戦いに出るかのような面持ちを見せるアカリ。柚木が無言で力強く頷いたせいで、なおさらそれっぽくなってしまった。ただ、藤木に質問して戻ってくるだけなのに。

 アカリが藤木のところへと向かい、九十九がやったのと同じような手順を経て、藤木に質問をして戻ってくる。なんだか表情が曇っているように見えるのは気のせいだろうか。

「――答えは【ノー】だそうです」

 明らかに落胆した様子のアカリ。どこからか、溜め息らしきものが聞こえた。だが、この事実は決してマイナスではない。プラスに捉えるべきだ。

「周辺の施設及び、その施設内にあったもので使用された痕跡のあるものはなかった――ってことか。これで、リフトやらを使って【虚無の石櫃】にのぼった可能性はゼロになった。現実的じゃないが、仮に施設内に20メートル超えの梯子があったとしても、それは使われていないわけだ。言っとくが振り出しに戻ったわけじゃねぇ。可能性をひとつ潰せただけでも前進だ」

 どうして自分がまとめ役をしたり、落胆する他の連中にフォローを入れたりしなければならないのか。自然と損な役回りになってしまっていることに辟易へきえきとする九十九。むしろ、いざとなったら自分がここまで面倒見の良いやつだとは思わなかった。普段はまるで人と関わらないから、気づけるわけがないのだが。

「あー、馬鹿馬鹿しい。本当に愚かな連中だ。誰もその女が嘘をついている可能性を考えようとしないのだから」

 九十九達の間に割り込んでくるかのごとく数藤がぽつりと呟く。
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