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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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「わっ!私っ、嘘なんてつきません!」

 間髪入れずにアカリが反論するが、数藤はそれを鼻で笑い飛ばす。まるで、アカリがそのような反応を見せることを見越していたかのようだ。

「あぁ、ごくごく一般的に考えれば【質問権】で得た情報は素直にシェアすべきだ。ただし、本人が一般的ではない場合――犯人だった時は全く話が違ってくる。いいか? 犯人は正解者が過半数以上になった時点で降板――いや、言い方を変えよう。殺されるんだ。言うまでもないが、犯人にとって最善なのは、正解者が過半数以上にならないこと。そうすれば、自分は降板になることもないし、ここから解放される。つまり、犯人にとって、素直に得た情報を流すのは得策ではない」

「いや、っていうか犯人じゃありませんから! 私」

 数藤の言葉を遮るような形で反論を続けるアカリ。見た目は割りかし地味でありながら、その根本的な部分は妙に気が強い。このような状況で、柚木のようにおどおどとばかりされても困るが、あまり気が強すぎるのも問題の火種となり得る。少しずつ、お互いの人間性というものが見えてはきているが、それぞれの性格を把握して、しっかりと統制をしていかねばならないだろう。

「さてさて、どうなのかなぁ――。ならば見せて欲しいものだ。犯人ではないという証拠を」

 アカリのことをあざけるかのごとく、気味の悪い笑みを浮かべる数藤。さらにヒートアップしたかのごとく足を前に踏み出そうとしたアカリの、さらに一歩前に踏み出した九十九は、反論したげなアカリを手で制した。

「やめとけ。こいつに付き合っているだけ時間の無駄だ。それが狙いで、あいつはお前を挑発するようなことばかり口にしてんだよ。いい加減気づけ」

 数藤の目的は、どうやら正解を導き出すことではないらしい。アカリを諭すために言ったつもりだったのだが、むしろ今のでふと気づく。

 ――数藤の目的が、こちらの妨害だとしたら。なんのためにそんなことをする必要があるのか。単純に周囲と関わりたくないのであれば、自分から距離を取ってしまえばいいだけのこと。実際に距離を取った数藤ではあるが、しかしわざわざアカリを挑発し、時間稼ぎをするような必要はないはず。そんな必要があるのは……九十九達が正しい答えを導き出すと困る人物。やはり、数藤は限りなく怪しいのではないだろうか。それをあえて九十九はぶつけてみた。

「おい、お前がさっきから口を挟むのは――やっぱりお前が犯人だからか?」
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